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師匠は自称一般市民  作者: 猫宮蒼
三 大体師匠の章

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ちょっとした感傷と引っ越し



 暇を持て余していた連中は、割かし快く馬鹿弟子の修行に協力してくれた。

 メトセラやカノンあたりは言われずとも率先してやからしていただろうけれど、あいつらは馬鹿弟子に対して甘すぎるのでいざという時非情になりきれないのが難点だ。

 しかしカインやクライヴあたりはそういう甘さはないので、それはもう容赦なくやらかしてくれた。一応馬鹿弟子も人間なので死なない程度に、という本当にあるのかないのか微妙な配慮はしていたようだが、いかんせんあいつらの「そろそろヤバいかな?」という判断が下される頃には最悪馬鹿弟子が死ぬ一歩手前とかになっている可能性があるため、メトセラとカノンはそういう意味ではあいつらと一緒にさせておくと丁度いいストッパーとも言えた。


 レオンやウィンディあたりは正直あまりそういう事に向いていないと思っているらしく、基本は少し離れて見ているだけだ。

 まぁレオンはなぁ……あいつ色々と賢いはずなんだけど、自分の頭の中で考えを組み立ててもそれを口に出そうとすると途端にぽんこつと化すからなぁ。

 あれだ、頭のいいやつが必ずしも教える事が得意じゃないとかいう典型的なやつだ。


 ウィンディも割と感覚的な部分で動いている事が多いせいか、そういう意味ではレオンと通じ合う部分はあると言える。

 じゃなきゃ肉片になってたカノンを拾い集めてくっつけてとりあえず人の形にして治す、なんて真似できるわけがない。ある程度四肢とか形が残っていたならまだしも、文字通り肉片だぞ? 魔王の力を持ってしまった俺ならやってやれなくもないとは思うが、まぁ難しいだろうなとも思っている。


 正直な話、レオンやウィンディが割とインドアなタイプで自分の趣味に時間を費やしてるだけで充分毎日楽しいと思っているタイプだというのは、人間種族にとって大変幸せな事ではないだろうか。

 こいつらが仮に人間に恨みを持っていて、人間根絶やしにするまで突き進むタイプだったら今頃魔王の再来だとか言われてたんじゃないかなと思わなくもないのだ。俺からすると。

 レオンなんかはどこかの研究所にこもって『ドール』の量産ができるようになれば、どんどん手駒を増やして侵攻とかするだろうし、ウィンディは見た目が平凡すぎて人間の暮らす街に入り込んでも誰も魔女と気付かない。そこで大胆な犯行――仮にお偉いさんを暗殺だとか――に及んだとしても、彼女が怪しいと言われる事はまずないだろう。


 ……個人的には馬鹿弟子にあれこれ教えるのがこの二人だったら、馬鹿弟子ももっとこう、えげつない進化を遂げてるんじゃなかろうかと思わなくもないのだが。

 残念な事にこの二人は物を教えるというのが苦手なので、馬鹿弟子が暗殺特化な方向に進化するという未来は消えた。


 いやまぁ、別に暗殺者に育て上げたいわけじゃないんだけどな!? けど正直馬鹿弟子もアレだから人と少し離れた所でそっと隠れ住む方向性になりつつあると思うから、潜むという点で特化するのは必須なんじゃないかなと思ったりしただけだ。

 仮にアイツが滅んだ故郷を再建したいとか言い出したのならば、もうちょっとこう、育てる方向性も変えないといけないだろうなと思ってはいるものの、本人は自分にも故郷なんてものがあったんですねと完全に他人事だ。まず両親の事も記憶にないし、そうなればそりゃ故郷とやらに思い入れがなくても仕方のないところではあるが……



 故郷なぁ……まぁ、俺も正直そんなに思い入れなんてものがないから馬鹿弟子に思い入れがなくてもそういうものかで済む話だけれども。

 そもそも俺の故郷ってどっちに分類されるんだろうか。

 俺が生まれて育った挙句、勇者として魔王退治の手駒として追い出されたあれを故郷と言うのであればあの国だってとっくの昔に滅んでいるし、生まれる前――前世というべきか――の故郷に戻れるかというと何か無理な気がしている。転生キタコレ! とか思って無難に雑貨屋で荒稼ぎしようと思ってた俺の人生も大概しょっぱい代物になったけれど、そこはさておき。


 正直な話俺は育成ゲームとかそういうのあまりやらなかったから、馬鹿弟子を育てるにしてもどうすればいいのかさっぱりだった。

 割と放置でどうにかなったとはいえ、流石にあいつの中で眠りについているかつての魔王アイオンに関しては放置のままじゃヤバかろう。現に一度は馬鹿弟子の身体を乗っ取って出てきてしまっている。

 二度目がないとは限らないし、二度ある事は三度あるとも言う。

 三度目の正直って言葉もあるにはあるが、あれは気休め程度の代物だ。あてにしない方がいい。

 むしろその三度目の正直がアイオン側に適応したら状況としては最悪の結果になる。


 正直一度目はあいつが俺たちの事なんてただの虫けらが何か頑張ってるーくらいのノリで油断しまくってくれたからどうにかなっただけで、次はもうそんな油断はしないだろう。何せあいつの力まるっと俺に移ってるわけだし。馬鹿弟子の身体を乗っ取って仮に力をつけて対抗する展開になったとして、そうなったらこっちが不利だ。


 そう、つまり俺の平穏な人生は馬鹿弟子の今後の成長にかかってくる……!

 しかし俺は馬鹿弟子をうまい具合に成長させられるかというと激しく微妙だと断言できる……!

 こういう時はそういうのが得意な相手にまるなげするに限る……と思ったけれど、そもそも今いる面子も得意か? それ、と言いたくなるような面々だ。


 もう俺としては俺達という駄目な見本を前にして、馬鹿弟子が俺たちを反面教師として劇的に成長してくれる事を祈るしかない。育成得意っていう人材を見つけてくるにしたって、俺達の事情を知らないまま俺たちの希望通りの仕事をしてくれる奴がいるだろうか、果たして。

 事情を知ったら知ったで普通なら、今のうちに馬鹿弟子を殺して身体ごと魔王の意識も完全粉砕って方法にもってくのが今の所危険がないわけだし、まぁ普通の奴はそうするけれども。

 ……メトセラとカノンを敵に回すからそれも無事で済むかってーと完全に無事とは言えないか。


 当分の間はあいつら任せにするしかないだろう、と考える事を放棄した俺は、まぁどうにかなるさと現実にあっさりと匙を投げた。諦めない心って大事だけど、人生時として諦めが肝心だからな。ははっ。

 というか、俺の場合諦めずにもがいた結果が今だからな。素直に死んでた方が良かったんじゃないか、と時々、本当に極まれにではあるが時々そんな風にも思ってしまうのだ。


 今現在もこうしてぐだぐだ考えてしまうのはきっと……あれだな。場所が悪い。

 何せここは魔王城。かつての俺の死に場所になっていたかもしれない所だ。

 そして馬鹿弟子の中にいるあいつの棲家でもある。

 うっわ懐かしい~、みたいなノリでひょっこり出てくる事はないだろうけど、何かの拍子に、という可能性は上がっている気がする。


 ……仕方なくとはいえここに滞在するべきではなかったのかもしれない。

 早急に、次なる住居を用意するべきだろう。そもそもここは長居するには向いていない。


 異端審問官の活動がさっさと落ち着いてくれるとこっちも大助かりなんだが……



 ――俺が、そんな風にぐだぐだと悩んでいる間に、気付けば一月が経過していた。

 そんでもって俺にとっては朗報でしかないが、異端審問官が人の滅多に訪れないような場所を探索する活動も急な話だったし活動資金に限りがあったらしく、その頃にはある程度落ち着いてくれたらしい。


 ならばやるべき事は一つである。



「おい馬鹿弟子! すぐさま荷物纏めろよ! 引っ越すぞ!!」



 まぁ、どこに住むかはまだ何一つとして決まっちゃいないんだがな!

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