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師匠は自称一般市民  作者: 猫宮蒼
三 大体師匠の章

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小細工と、弟子の意識がなかった時の話



 まぁ何がビックリしたかって、色々な小細工して戻って来た時の事だよな。

 いつかはもしかしたら……なんて考えてた事実が今まさに!! ってな感じで目の前で繰り広げられてたくらいだし。

 とはいえ、正直そこまで慌てる必要なんてなかったんだけどな。




 下手な事言ったらもしかしたら自分も討伐対象になるんじゃなかろーかと気を揉んでた先で、どうにか無事に話を済ませてこれ以上の追究を受ける前にとさっさと戻ってきたら、まさか魔王アイオンが出てきてるとか思わないだろ普通。

 オイオイオイ、馬鹿だ馬鹿だと普段から言ってたけどあの馬鹿弟子ホント一体なにやらかしてどうしてそうなった!?

 ここに戻って来る直前にレオンの使い魔通してそっちの様子聞いた時は、メトセラと二人がかりでどうにかヴァレリアを気絶させたらしい、って聞いてやればできるじゃねぇかと思った矢先にこれだよ。

 その後の展開は流石にレオンから聞く暇もなかったし、てか多分ほぼ全員状況把握してなかったっぽいし。


 まぁ、ポチの腕が落とされてるのは見た。

 落としたのが馬鹿弟子の格好してるけどアイオンらしいってのも一応把握した。

 現れた俺の姿を見て、馬鹿弟子――いや、アイオンは唇の端を歪めて……うっわ殴りてぇ! マジ殴りてぇと思うくらいに憎たらしい表情で嗤うものだから、そりゃ馬鹿弟子との区別がつくわな。

 まぁとにかくだ。アイオンはポチを俺がとんずらする前に使った術と同じのを発動させて動きを封じたわけだが。


「兄弟子殿……?」

 普段と違う様子の馬鹿弟子に、メトセラが困惑しつつも声をかける。しかし奴はメトセラに視線を一瞬だけ向けて、すぐに俺の方へと戻す。

「メトセラ、そいつは確かに馬鹿弟子の姿をしているが、中身は別物だ」

 まるで親に置き去りにされた子供みたいな表情をするメトセラに、そう告げる。

「え――?」


「思ったよりは早く復活したようじゃねぇか。なぁ? アイオン」

「早い、だと? ふざけるな、貴様が余計な事をしてくれたおかげで、力を蓄えるのにどれだけの月日がかかったと思っている」

「アイオンて、ちょ、ゲイル!?」

「ふむ、記憶違いがなければ魔王アイオンは確か、封印した際その力のほとんどを流出したはずだったと思うが……?」


 当時のアイオンを知るレオンがポチと馬鹿弟子の姿をしているそれを交互に見やる。恐らくどちらも厄介極まりないため瞬時に退路を確保しようとでも思ったのだろう。逃げ足だけは無駄に速いからな。

 そして状況が飲み込めているのかいないのか、クライヴは確認するかのように問いかけてくる。


「あぁ、本来なら復活する事があってももっと先の話だと思ってたんだがな。原因があるとするなら、レオンの使い魔から聞いた――ヴァレリアとの交戦だろう。くそ、馬鹿弟子め、時間稼げとはいったが、身体張って術喰らえつった覚えはないぞ」

 俺としては馬鹿弟子の無駄な反射神経でもってあいつの魔術をかわす事を期待していたんだが……恐らくは馬鹿弟子も薄々気付いていたのだろう。


 魔王の残骸たる宝珠。本来膨大な魔力を蓄えるそれは、強大な魔力を吸収するという事実に。

 まぁ、初級程度のかる~い魔術は力の足しにもならないと判断したのか、普通に効果あるんだけどな。あと中級クラスの術もそういや吸収しないな。むしろこんな程度の術じゃねぇ、もっと強い術を放てと言わんばかりに反射しやがる。


 宝珠が吸収した魔力が、恐らくアイオンが動ける程度にまでは到達したのだろう。馬鹿弟子が意識を失った際、好機とばかりにアイオンが復活したのがその推測を物語っている。


「生憎と、久方ぶりの邂逅を堪能するつもりはない。返してもらおうか? 元は私の力だ」


 あー……めんどくせぇ。

 そりゃ狙いが俺っつーのはわかってたけど、この状況でそれはホンットめんどくせぇ。

 流石に馬鹿弟子ごと葬るわけにもいかないしなー……

 いや、そりゃまぁ、今なら苦しまずにらく~にしてやれるけど。しかしそれをやると、敵に回る事が確定する人物もいるからな……


 くっそ馬鹿弟子。簡単に魔王自由にさせてんじゃねぇよ。後々覚えてろマジで。

 そんな決意を胸に秘め、改めて状況を確認してみる。


 色々と小細工をして戻ってきたら魔王が復活。狙いは勿論この俺ッ!!

 と、親指を自分に向けてウインクなんぞしつつ言い出したらさぞ周囲を苛つかせられそうな、そんなのが今の状況だ。

 何とかできないわけではない、んだが……なぁ?


 封印する際、何の拍子かアイオンの魔力は俺へと流れ込んできた。

 原理は今でも正直よくわかっていない。しかし、だ。恐らくアイオンには見当がついているのだろう。問いかけた所で答えが返ってくる事はまずないだろうが。


 大体答えた時点で俺がそれに関して対応できるようなら、あいつは自分の力を奪い返す――いや取り戻すか――手段を失うわけだし。まず何があっても口を割らないのは確実だ。

 そして自分の力を奪い返すために、当然俺を狙うのは明白。戦闘は、どうあっても免れない。

 いくら姿が馬鹿弟子とはいえ、中身が魔王。舐めてかかると最悪の事態があっさり訪れるのは、想像するまでもない。


 さらに分が悪い事に、あいつには初級魔術しか効かない。となると必然的に直接腕力とか脚力に頼った攻撃になるわけだが。

 下手に近付くのも正直なー……

 さてどうするのが一番被害が少なくて済むかと考える間も、奴は与えるつもりはないらしく。

 詠唱無しでいきなり魔術ぶっ放してきやがった。

 くっそ、馬鹿弟子には今の所絶対出来ない芸当だぞそれ。舌打ちしつつもこちらも詠唱無しで同じ術を発動させて、相殺する。

 全くの同威力だったのだろう。馬鹿弟子の表情が、これまたぶん殴りたくなるくらいムカつく感じに歪む。正直怒りにでも任せて術を乱射して魔力切れにでもなってくれれば、こちらとしても楽なんだけどな。


 しかし奴もその程度の事は理解しているのだろう。

 ようやく表に出てきたというのに、魔力切れであっさり退場――などという事態に陥れば、次また出てくるのは果たしていつになる事やら。次がそう簡単に来る事は、俺がいる限りまずないと言ってもいい。だからこそ、確実に――と思っているようではあるが、それでも多少の焦りを感じ取れる。


 仕方ない。ここはやはりシンプルに殴り合いといくか――と思った矢先、俺の前に立ち塞がる銀色と、黒。

「おい、メトセラ……?」

 大鎌を手に、馬鹿弟子に向き合うように立つもう一人の弟子に思わず困惑する。

 いくら中身が別とはいえ、外見は馬鹿弟子そのものだ。例え何があっても馬鹿弟子に刃を向ける事なんて有得なさそうな奴が真っ先に刃向けるって展開は、流石の俺も予想してなかったぜ。


「魔王だか何だか知らないが、速やかに兄弟子殿を戻せ」

「ハッ、貴様のような小娘に言われたからとて、はいそうですかと戻すと思うか?」

 それはもう、心底から馬鹿にしたような笑み。完全に蔑んでいるといってもいい。

 あぁうん、殴るか。そう思って拳を握り締めた時だった。


 メトセラが、鎌を手に馬鹿弟子に向かって斬りかかる。威嚇か牽制か、はたまた本気だったのか。それは本人以外にわかるわけもなく。少なくとも俺の目にはかなり本気に見えた。

 躱した拍子に数本、髪がはらりと舞ったアイオンが鬱陶しそうにメトセラへと視線を向ける。


「正気か? 殺せば、貴様の言う兄弟子殿とやらも同じく死ぬぞ?」

「お前に乗っ取られて一生戻らない可能性を考慮すれば、そうした方がいいかもしれんな。仮に戻ったとして、その時既に手遅れな状況だったなら兄弟子殿の心が無事でいられるかどうかも疑わしい」

「望みがまだあるかもしれない状況から既に殺す手段を用いるか」

「中途半端な希望は持たない主義だ」


「おいメトセラ」

 どこまでも殺伐とした空気を発する両者に、周囲も思わずどん引いてるぞ。


「大丈夫ですお師匠。兄弟子殿一人では逝かせはしません。兄弟子殿が死んだら私も後を追います」

 迷いのない眼差しをこちらに向けてそう言い切るこいつを見て、何かもう色々と駄目だと思ったのは仕方のない事だと思う。おい馬鹿弟子、ホントこいつどうにかしろや。


「馬鹿じゃないのか、この馬鹿」


 我ながら捻りも何もあったもんじゃない言葉が口から出たのも、仕方ないと言えよう。てか、もう馬鹿以外の言葉が出てこねぇよ……


 何を言っても通じるかどうか疑問が残るので、メトセラの頭をがっしと掴んでそのまま勢いよく横に振り払う。予想していなかったせいもあってか、すぽーんとすっ飛んでったが、まぁその先にカインとクライヴもいたから問題ないだろう。


「悪いが魔王のご指名は俺だ。ついでにあんまり時間かけてらんないからな」

 人待たせてるし。と、これは小声で付け足す。

 移送方陣で飛んだ先で、どれくらいあの異端審問官が粘って待ち伏せてくれるかもわからない状況下でこいつ相手にいつまでも時間をかけてはいられない。

 まぁ、奴の隠れ家を探し回って見つけてくれれば多少待たせたとしても、文句は出てこないだろう。きっと。



 ――こうして、ポチそっちのけでちょっとしたバトルがおっぱじまったわけだが。

 まぁ、馬鹿弟子の身体だしなぁ。ぶっちゃけ非力なんで力技に持ち込むのは難しい事じゃなかった。

 馬鹿弟子の非力さを計算に入れてなかった事が、アイオンの敗因だろう。

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