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師匠は自称一般市民  作者: 猫宮蒼
二 続・弟子の章

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仕方なしの自己犠牲と人質



 魔女がポチに下した命令は、僕とメトセラ以外の相手をする事。

 ついさっきまではその命令が守られていると思っていたのだが。


 正直今、奴が発動させた魔術を見る限り手は出さないけど魔術が命中したらその場合は知らねって感じがひしひしとする……!


 天井に繋がれた腕を強引に剥がそうとして天井に小さな穴が開いたのを、僕はどこか他人事のように眺めていた。



 ナイフの形をとった光の切っ先は、どれもこれも僕らに向けて狙いを定めている。

 すぐさまこちらに降り注がないのは、ポチが攻撃のタイミングを計っているのか、もしくは僕たちが動く事によって作動するタイプの術なのか……

 どちらにしろ、あまり下手には動けない。それだけは確かだった。


 ポチはおもむろに先程まで繋がっていた天井――だった既に瓦礫と化したものを未だ障壁が張られたままのメトセラたちの方へと振り払うように飛ばす。自らの腕から振り払っただけなのか、それとも狙ってやった事なのかはわからない。

 本来顔があるべきはずのそこには、目も鼻も口もない。ただただ白いだけのそれから、表情などというものが窺える事もなく。

 それ故に何を考えているのか、という部分を察するのも難しい話だった。

 同じように何考えてるのかわかんない師匠とかカインとかクライヴなんかは、どうせロクな事考えてないんだろうな、で済むんだけども。


 障壁に弾かれてパラパラと音を立てて崩れ去る元天井を見たからかはわからない。

 だが今現在、メトセラたちに自分の攻撃が通用しないという事は理解したのだろう。

 普通の人間なら有り得ない勢いで首を曲げ、恐らくはこちらを視界に入れ――るよりも早く、物騒な光の切っ先はこちらに向かいって一斉に飛んできた。


 これが普通の人間なら。

 視界にこちらの姿を認識してから攻撃したかもしれない。実際僕だって今このタイミングでくるなんて思ってもいなかった。レオンが咄嗟に放った術がいくつかの光の軌道を逸らしはしたものの、全てを弾く事は不可能だったようだ。どう頑張っても命中するのは免れない。

 思うのとほとんど同時に。僕の足は前に出ていた。


「王子ッ!?」


 驚きと戸惑いの混じったカノンの声が背後で聞こえた。けれどこれが魔術なら、そしてこのままだと僕以外の人たちにも被害が及ぶであろう以上、こうするしか方法はないように思う。

 流石に顔面から喰らう度胸はないので、気休め程度に腕で顔を覆う。


 ガツガツと石で殴られてるような痛みが走る。見た目は刃物の切っ先みたいなくせして……とぼんやりと思ったが、見た目通りのダメージが来たら今頃腕はズタズタなのでむしろこれでいいのだろうか……?


 何か間違った方向に自分を納得させようとしながらも、とにかく耐える。

 しかしここまでダメージが来るって事は実はこれ、初級魔術なんじゃないだろうな……冗談じゃない。

 術の余波で来るダメージなんだと思いたい。


「兄弟子殿ッ!! 避けて下さいッ!!」


 ズキズキと痛む腕のせいで、術が止んだのがいつだったのかわからないまま、メトセラの声だけが鋭く飛ぶ。頭と顔を庇うようにしていた腕を解いて、直後に見た光景は。


「――え?」


 ただ一面の白だった。


 何が起こったのかを理解した時には既に遅かったらしい。

 現在、足が床から離れている。


 えーと……これ、何気に僕の死亡フラグ……?



 ちょっと前の事を思い返してみよう。

 ポチが放った魔術がこのままだと僕たちに命中しそうだったので、何故か高威力の魔術が効かない僕が盾になろうと思って前に出た。

 今現在周囲から聞こえてくる声から判断すると、とりあえず他の人たちは無事らしい。何よりだ。


 流石に顔面に命中しまくるのは視覚的恐怖があったので、腕で庇うようにしていたのが問題だったのだろう。術が止んだ後、すぐさま行動に移る事ができなかった。五体満足とはいえ腕にはしっかりとしたダメージを喰らい、その痛みのせいで術が止んだ事にすぐ気付けなかった、というのもあるのだけれど。

 腕をどけて見えたのは、全体的に白い何かだった。


 メトセラの声が聞こえていたが、どう頑張ってもその時点で手遅れだった。

 ポチは多分、僕の首辺りを狙ったのだろう。

 しかし奴の手は、普通の人間よりも大きかったせいか首どころか僕の頭を掴んでいた。

 そしてそのまま持ち上げられ――足が宙ぶらりんしている、と。


 謎は解けたが視界を塞がれた状態のせいで、不安定極まりない。

 頭をすぐさまぐしゃぁされないだけマシなのかもしれないんだけど、しっかりと掴まれているため逃げるに逃げられない。

 いや、頭ごとじゃなくて首だけ掴まれてたとしても逃げられないのは確実なんだけども。


 恐らく魔女の命令が未だに有効ならば殺される事はない。

 しかし殺すつもりがなくてもポチが力加減一つ間違えてしまえば万が一、という事もあるわけで。


 ……そもそもどうしてポチは僕を今、わざわざ捕獲したのだろうか?


 やはり魔術そのものは一応僕がほぼ無効化した、と考えていいのだろうか。

 それを認識して、次の術を発動させる時に再び無効化されないように僕を捕獲……あぁうん、無いわけじゃないな。こうして僕を掴んでいるだけで、人質効果も発揮されるだろうし。

 人質として扱ってくれるかどうか疑わしい物騒兄弟がいるにはいるけど。

 クライヴとかアレだよね、僕に対して攻撃当たったとしても、

「おや? まぁ仕方ないよね」

 とかでさらりと片付けそうな気がするしカインなんか、

「人質になる方が悪い」

 とかでバッサリいきそうな気がするし。


 仮にあの二人がそれは無いとか言ったとしても、それを素直に信じられる程僕に心の余裕はない。

 あぁむしろレオンなんかがうっかり術を僕に向けて放つかもしれない。

 いや、術が無効化されるようなら魔力の無駄遣いは流石にしないか。下手したら反射しちゃうかもしれないし。


 ……こうして考えてみると、何気に僕はこの三人の事全く信用とか信頼とかしてないんじゃないかなって思えてくるよね。いや、頼りにはなるんだけど。なるんだけども。



「あああああ、兄弟子殿、御無事ですか!?」

 オロオロとしたメトセラの声。下手をしたらすぐさま障壁の中から飛び出して突撃しかねない勢いを感じ、大丈夫~と声をあげる。

 ポチの手に包まれた状態なので物凄くくぐもった声になったけど。


「王子、王子! 今すぐ助けますから少しの間耐えて下さいね!?」

「いやあのカノン、流石に無理ですよもうちょっと冷静に見て下さい状況を」


 メトセラよりも先に飛び出しかけたのだろう。カノンの声が終わる間もなくレオンのツッコミが入った。

 ……見えないけど音だけでそれなりにわかるものなんだね。

 助けてほしいのは事実だけど、今の状態でカノンが突っ込んだら逆に返り討ちにあってしまう。

 他力本願極まりないけど、ポチが僕を人質として扱う事を考えず、先程の元天井のようにぶん投げてくれれば何とかなるんだけどな……

 流石にウィンディの張った障壁にぶち当たったら無事じゃ済まなさそうだけど。

 ていうか、障壁も無効化ってできるんだろうか?


 などと暢気に考えていたのがいけなかったのか。

 ポチの手に僅かに力が入る。締め付けられる程の痛みとかはなかったけれど、より一層ポチの手に密着する形になったため、息苦しさが増した。


 周囲でカインやウィンディ、クライヴの声が聞こえたが、何を言っているかまではわからなかった。



 ……ヤバい。このままだと確実に窒息死しそう。

 それが、意識が旅立つ前に思った感想だった。

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