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師匠は自称一般市民  作者: 猫宮蒼
一 弟子の章

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戦闘準備とご飯支度



 隠し通路の先に消えたレオン。

 嫌な予感がなんとなくするものの、カインやクライヴに問いかけてみたところで答が返ってくるわけもなく。お互い何となく居心地の悪さを感じて、思わずぎゅっと握っていた手に力をこめた。

 メトセラと僕は、内心の不安を隠しきれないまま、ただレオンが戻ってくるのを待っていた。



 あれからあっさりとレオンは戻って来た。その手に一枚の紙と、やたらごっつい大きな鎌を持って。

 むしろレオンの身長よりも大きな鎌は、壁やら床にぶつかってがっつんごっつんと嫌な音を立てている。


「おまたせしましたー」


 いや、満面の笑みを浮かべて言われても困ります。せめてその大鎌どうにかならないんですか。それさえなければ今の言葉に問題はないんですが。

 けど、まぁ、そんな事を言ってもどうにもならないんだろう。せめてもの意思表示として溜息を吐いてみる。効果があるとは思えないが。


「とりあえずさっさとこれを受け取って下さい」


 ずずいと紙と、大鎌を突きつけられる。どうしようかと一瞬悩んだが、受け取らないといけないのだろう。そのうち強引に押し付けられそうだし。恐る恐る紙に手を伸ばすと、ある意味不吉としか思えない大鎌はメトセラがさっさと受け取っていた。

 躊躇いがちに伸ばした手に、レオンが押し付けるように紙を握らせてくる。


「あの……これ、は?」

「この城の見取り図です。今すぐに覚えて頭に叩き込んで下さい」


 言われてみれば、確かにそれは見取り図だった。それもご丁寧に隠し通路の場所まで細かく記されている。


「それがもしヴァレリアの手に渡ると面倒ですからね。覚えたら、それは破棄します」


 レオンの言う通り、確かにこれが使い魔経由でヴァレリアに知られれば、こちらが不利なんてものじゃない。隠し通路は仕掛けを作動させないと使えない仕組みになっているようだけど、それも詳細が記されている以上知られれば僕たちは逃げ場も隠れる場所も失ってしまうだろう。


 自分の命がかかっているのでそれこそ必死に覚える。メトセラも覗き込むようにして見取り図を見て――大体の把握は済んだようだ。

 城の構造自体が複雑なものでもなかったのが幸いして、僕も覚える事はできた。唐突な事態にパニクってド忘れしなければ大丈夫だろう。


「それと……この鎌は?」


 見取り図をレオンに渡し、メトセラが手にしている鎌へと目を向ける。できれば見なかった事にしたいがそういうわけにもいかなかった。触れないわけにもいかず問いかける。


「見たところお弟子さんたち武器の一つも持っていないようでしたからー。とりあえず使えそうなのを持ってきたんですよー」

「……もうちょっと普通に……その、ナイフとか、剣とかそういうのなかったんですか?」

「あるにはありますけど……人間が使って大丈夫かどうかはちょっと……何があっても自己責任っていうなら好きなだけ使ってくれても構いませんけど?」


 何それこっわ! うわ、さっき城の中物色して武器探そうとかしてたけど、見つけてなくて良かったのかもしれない。


「……つまりこれは、ただの人間が使っても問題のない武器、という事だな?」


 レオンの言葉に思わず震えあがっていると、やはり僕と同じような事でも考えたのかメトセラが念を押すように確認している。その問いにレオンは、


「えぇ、まぁ……そうですねぇ」


 何故か微妙に間をあけて、ほんのり言葉を濁すように返してきた。やめて、そういう反応不安になるから。


「大丈夫、だと思いますよ。それ持ってると魔術は一切使えなくなるみたいなんですけど」

「思いっきり呪われてるやつですよね、それ!」

「えー? いいじゃないですかー、どうせお弟子さん魔術なんてマトモに扱えないんだし」

「う……っ」


 あまりにもあまりなド正論に、胸のあたりをおさえて蹲りそうになった。事実すぎて返す言葉も出てこない。


「まぁお弟子さんはともかくとして、そっちのお弟子さんはそれなりに武器の扱いに長けてそうですし。大丈夫ですよねー?」

「……あぁ、恐らく問題はない」


 メトセラの言葉に、レオンが満足そうに頷く。


「それじゃあお弟子さんたちには早速行動に移ってもらいますねー」



 怒りの矛先が向いてないのに、笑顔が怖いです。

 これから一体どんな厄介かつ面倒な事をやらされるのかと思うと、何だか眩暈がしてきたよ……



 ――正直な所既にヴァレリアの使役している魔物とか使い魔がそこかしこにいるので、事実上既にこの城乗っ取られてない? と言いたくなる城内を、ある時は隠し通路を使い、ある時はメトセラが大鎌を振るい強行突破し僕はひぃひぃ情けない悲鳴を上げつつ突き進み。

 ようやく辿り着いた目的地に、何かもうこの時点で全てをやり遂げた気になったのは仕方のない事だと思う。


 一応ね? 僕だってメトセラばかりに戦わせるわけには……と思って聞いたんだよ。護身用の武器はないのかって。


「え? だってお弟子さん、武器なんてマトモに扱えないじゃないですか。てか、扱えるんですか?」


 曇りなき眼でもって事実であり真実をズバッと言われ、内心ちょっとどころじゃなく傷ついたわけだが。カインとかに馬鹿にされつつ言われた方がまだマシだった。


 いやもうホント、僕って師匠の元で何学んでるんだろ……家事全般? 別に師匠の元じゃなくても学べるというか、生活していく上で必然的に身に付いただけだよね、これ……



「兄弟子殿、そちらの様子はどうですか?」

「……うん、大丈夫そう」


 城内を徘徊しているモンスターの大半がそこまで脅威的なものではなかった事もあってか、そしてメトセラが思った以上に強かった事もあってか、僕たちはほぼ無傷で目的地へと辿り着いていた。

 まぁ、これ僕一人だったら途中で死んでただろうけど。

 むしろメトセラ一人だけだったらもっと早く辿り着いてたに違いない。兄弟子なのに完全に足手纏いとか何それ泣きたい。

 僕ってどうしてここにいるんだろう、と人生の存在意義とかそこらへんにまで考えが飛躍しかけたが、現実逃避をしている場合でもない。


 途中の廊下で何度か交戦はあったが、目的地は拍子抜けするくらいに静かで、何もいなかった。

 場所が場所だけに荒らされていたっておかしくないと思ってたから余計に肩透かしを食らった気分だ。

 罠という可能性も一瞬考えたけど、敵は魔女ヴァレリアの命令の下動いているのだろう。忠実に。そうであるならここに用はない……と言う事なんだろうな。


 念の為警戒はしておく。

 メトセラが注意深く周囲の気配を探るようにして先導して、僕はその後ろをついていくだけだ。できるだけ邪魔にならないようにして。


「どうやら完全にここは用無しと判断されているようですね。好都合です、兄弟子殿」

「うん、そうだね……」

「? どうしましたか、兄弟子殿」

「いや、何でもないよ」


 己の存在意義について考えてました、なんて言われてもメトセラが困るだけだ。メトセラが悪いわけじゃない。単に僕が弱いだけの話なんだから。


「それでは私は敵が万が一入り込まないよう、見張りをしてますね。何かあったら呼んで下さい。駆けつけますから」

「うん、大丈夫だとは思うんだけどね」

「私も手伝うべきなのでしょうが……」

「うぅん、大丈夫。こっちはこっちでやるからさ、メトセラは、もし魔物がこっち来た時の場合に備えておいて」


 どこか申し訳無さそうな顔をしつつも踵を返して部屋の入口へ向かうメトセラの背を見送って。

 溜息混じりに僕はメトセラとは逆の方向へと進んだ。


 ぐいっと袖を捲って、その場所を見回す。

 どうしてもある程度時間がかかるのは仕方ないが、だからといって無駄に時間を使っていいわけがない。まずは何処に何があるのかを把握しないと。


 ――僕に与えられた任務、というと大層大袈裟になってしまうけれど、何のことはない。

 メトセラと僕がやって来たのは、食堂として使われている部屋と隣接している厨房だった。


 ……僕に与えられた任務、というのは本当に大袈裟な話なんだけど。

 僕がやらなければならない事は、ご飯を作る事だ。

 こんな所に来てまで僕は本当に一体何やってるんだろうねぇ!?

 確かにここに来てからお茶しか飲んでないし、そろそろお腹が空いてきたっていうのは確かなんだけど。


 それ以前に、別行動として入り込んだ使い魔やらモンスター討伐に勤しんでるカインやクライヴの分も作る事になってるんだけど、食べる暇とか……ある?

 いや、暇がないだろうからって作らなかったら作らなかったで後が怖いから作るけど。

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