City to grow
町ができ、街ができ、都市が出来る。
それには、少なからず犠牲を伴うものだ
それが大きい、小さいに限らずね。
さて、皆さんが住んでいる所がどうしようもないど田舎なのでしたら都市に対する憧れも多少はあるのでは無いでしょうか?
東京に行きたい、洒落た洋服屋で着飾ってみたい、カフェに行きたい、田舎に住んでれば誰もが一度は思うことでしょう。
その願い、叶えて差し上げましょう。え?東京に行くお金をくれるのかって?違いますよ。
貴女の住んでいるそこを都市にすればいいのです。
どうするのか?簡単です。お金も道具も必要ありません。
ただ、一つだけ。生きとし生けるもの、その五体を差し上げて下さればよいのです。
あぁ、でも犬猫は駄目ですよ。あれらは吸収効率が悪い上に公園のポールやバリケードにしかならないんだから。
そうですねぇ、やはり一番は油の乗った思春期の「おとこのこ」なんか最高ですねぇ。
5人もいれば、東京スカイ■リーなんて目じゃないんですよ。
さて、そうこう言っている間に時間がきてしまったようです。残念でなりません...
出来る事なら、画面の前にいる貴女を食してしまいたいのだけれど...食い意地が悪いとバーミリオンから叱られてしまいますから。
そうそう、最近また一つ巨大な都市を創ったんです。東京に次ぐ都市です。ゆくゆくは東京すらも越えるでしょう。
今回は、Restrictionがかからなかったものですから規模が創造を越えてしまいました。
貴女も、暇があったらいらっしゃって下さいね。
大丈夫、直ぐに慣れますから。皆いい人ばかりなんです。
大きな大きな、ビルの一つにしてさしあげますから...
増殖する都市って知ってる?
茜は唐突にそう言った。
ここは、放課後の俺の学校の屋上。クラスで不思議ちゃんオーラを発する美少女「茜」に屋上に呼び出されほいほい付いていきそこで言われた第一声がこれだ。
「んん?なにそれ?あれ、てか茜さん俺てっきり告白でもされるんじゃないかと思ってきたんだけどどうして俺を呼んだんすか?」
しどろもどろになりながらも、疑問になっていることを聞く。
残念ながら俺は重症のコミュ症なのでした!それこそ茜氏に話しかけられるまではこの一週間母親以外の女とは話していない。
一週間に女子と話したというのは、部活で急いでいる女子の掃除が俺に任せられた時に話した二言。
「泰樹君!悪いんだけど掃除頼まれてくれない?」
「え、俺もこの後部活...」
「私さ、陸上部でもうすぐ大会あんだよね。君何部だっけ?」
「...掃除するよ」
これだけ。因みに俺はイラスト部。イラストだってそれ仕事にして飯食ってる人だっていんだぞ糞畜生が!
ってな感じでどうしようもないコミュ症の俺は、茜に呼び出された事だけでかなり有頂天になっていたのだが茜の方はと言えば、
ただただ、呆れた目でこちらを見ている。
「はぁ、君知らんの?増殖する都市のこと、この街のコトなんだけどさ」
「えぇ、知らんのって言われても俺には何がなんやらサッパリです...」
内心、茜は前からかなり変わった子だと思っていたのだがまさかここまで重症だとは...と少し引きながらも茜の方はといえば...
マジだ。大真面目だ。正面からめっちゃくちゃ真面目な顔でこちらを見ている。
とりあえず、気になることをここで一つ聞くことにした
「その...増殖する都市ってなんなの?言葉だけ聞くと大分訳が分からないんだけど...」
「言葉通りの意味よ。この街は外に向かって広がり続けてるの。それこそまるで生きているかのように...じわじわとね。」
うーん、だめだ。何を言っているのか理解出来ない。
都市が、広がる?うん分からん。あぁ都市を建設してるって事かな?それ放課後呼び出してまで言う事かな?
困惑した表情をしているであろう自分に茜は続けて言う
「分からないって顔してるね。じゃ教えてあげる。」
「数年前から、突如として発展してきたこの街なんだけど奇妙だとは思わない?」
「奇妙と言うと?」
「ビル群は次々出来上がっていくのに、建設中の建物を見たことが無いでしょ?」
「!!!確かに!」
そう、確かにそうだ。この町は4年程前から急速に発展しだした。俺は半年前に越してきたからネットで知る程度だったが当時は東京に次ぐ巨大都市が建設されているとニュースでも紹介され大きな話題を呼んだ。
ニュースで写し出された画面にあったのは巨大な防音シートで一面覆われた現場だった。報道陣を寄せ付けないよう数百単位の警備隊が周りを囲み厳重な警備が敷かれた現場はまるで大事故が起こった現場を彷彿とさせた。
ここで一つ不思議な事は、これだけの規模の都市を作っているにも関わらず工事の音がほとんど外部に聞こえなかった事だ。実際に俺も半年ここに住んでいるが建設する上で出るはずの必要不可欠な音は一度も聞いたことがないのだ。
そして、建設を見たことも一度もない。
「となると、どうやってこのビル群は出来たんだと思う?」
茜が、俺の驚いた顔を見てニヤつきながら言ってきた。
「さぁ、地面から生えてきたとか?」
「プッ、んなわけないじゃーん」
茜は笑いながら言った。なんかムカついてきたんで無愛想に言い返した。
「だったら、どんな風に出来てきたっていうんだ?」
「吐き出されてるんだよ。」
大真面目な顔で茜は言った。
思わず吹き出す。
「おいおい、冗談はお前の性格だけにしてくれよ!町が吐き出される?誰に?ここはファンタジー世界じゃないぞ!」
茜は、軽蔑の眼差しで俺を見ていた。
「はぁ、やっぱり君も他一般と同じ人間か。クラスでいつも一人の君だったら他の奴等とは違って理解してくれると思ったんだけどな...」
「ちょっと待て。なんでクラスでいつも一人のことと、理解出来る出来ないに関連性が出てきてるんだ。そこは関係ないだろぉ!」
「今さらいいよ。君は所詮理解出来ない人間だ。さようなら。この事は忘れてくれ。」
「...わかったよ。悪かった。お前の崇高なるお話を是非とも聞かせてくれ。」
茜は、まだ少し怒っているようだったがまだ話を続けてくれた。
「まず、この街は生きているんだよ。私達と同じように。」
「生きている?」
「そ、私達と同じように食事もするし意思をもって会話もする。そして明確な何かのために広がり続けている。」
「じゃあ、この街が出来たのもこいつが意思をもって街を生み出したって事なのか?」
「そういうことになるね。」
にわかには、信じがたい話だが確かに筋は通っている。
いや...となると嫌な予感がする。
「もしかしてなんだが...このビル群がさっき吐き出されてきたって言ってたがそれってもしかして...」
「そう、ビルだけじゃないけどね、家もアパートもそう。この街が食事をするって言ったけどそれはこの町に住む人を喰らってこの建物を作り出しているってこと。だいたい、人一人につき建物一棟って感じでね。」
!!そんな、恐ろしい街だってのかよ、ここは...!
「じゃ、じゃあそこにある電柱も...」
「あー、あれは6歳位の女の子だね。まだ若いのに可哀想ね」
「そうか...じゃあ向こうのあの大きなビルは?」
「あれは、20歳位の男の人ね。基本的に思春期に近ければ近い程更に男の方がより大きな精力を持ってるから巨大な建造物を創る事が出来るの。ほら、私達が今踏んでるこの学校も...」
思わず、足元を見るが何の変哲もない普通の床である。
「まさか...ここも人間で...!!」
「pふ、っっぷッ」 茜がまた腹を抱えて笑っている。
「いやーうそうそw、ここは数十年前からある由緒正しき学園だから、そういうのないから大丈夫だよー?あれー怒った?ごめんごめんw」
ムカつくので、無視して話を進める。
「てかお前普通に、建物の前の人間の姿とか分かってるっぽいけ
どこの人間達が建物に変えられる瞬間でも見たのか?」
「えー、そんな事ないよ~私さー聞こえちゃうし見えちゃうからー」
「見える?聞こえる?」
「ほら~、私ね、この建物が人だったときの姿を見ることが出来るんだよ、結構目凝らさないと見えないけど」
「目凝らして見るものなのか...」
「んでもって、聞こえるってのはまぁ簡単に言うと人から変えられた構造物の中に入ると聞こえてくるんだ。その人の助けを求める声が」
「そうか...それは、辛いな...」
「そんな事ないよ、もう馴れちゃったから」
そう言う彼女だが、顔はグッと何かを堪えているみたいだ。こちらの視線に気付き笑顔を返す彼女だがどこか気丈に振る舞っているように感じられた。
「なぁ、言いたくなかったらいいんだが...ここは4年前から急速に街が発展してきたそうだがその前からあった町とかはどうなったんだ?」
さっきまでの茜の笑顔が強張った。しまったと思ったが茜は首を横に降った顔に出ていたらしい。
「いいよ、教えてあげる。誘ったの私だもんね」
そう言って彼女は語ってくれた
「...そうね、この街が生まれる前のここを知ってる人なら分かると思うのだけどここって今ほどでないにしても結構活気のある町だったんだよ。」
茜はそう言うと懐かしそうに街を見渡した。その姿が少し寂しそうに見える。
「私ね、ずっと前からここに住んでるんだ。それこそ君の生まれるずっと前からね。」
「...ヴぇ?何だって?」
最後の方が声が小さくなり聞こえなかった。俺の生まれる前から住んでる?って言ったのか?聞き間違いだろうか
「いや、何でもないよ。気にしないで、えーとそれでね...」
「4年前までは、小さいながらも商店街もあったりしてね、何でも屋っていう雑貨屋さんがあったりして地域の皆でお祭りしたりね本当に活気があって楽しい所だったんだ、皆優しくて良い人ばかりだったんだよ、でもカタストロフィが起こって全部飲み込まれちゃった」
「カタストロフィ?」
「そう、人も町も動物も何もかも、突然現れた黒い霧に全て飲み込まれた」
「...だったら、お前はどうやって生き残ったんだ?」
「うーん、本来だったら飲み込まれてここの町の一部になるはずだったと思うんだ。でも私は吸収されなかった、私を飲み込んだ霧は私を吸収する前に何故か消滅してしまった。不思議だよね」
...今までの話を聞いたとて、とても理解できるようなお話じゃない。それこそ完全にファンタジーの世界のお話だったから。
でも...こいつの真剣そうな顔だったり哀愁漂ってる背中なんて見せられるとどうもこれがフィクションで済ませられる話ではない気もするんだから不思議である。
「うーん、何にしても、お前は生きてたんだから良かったじゃないか?」
なんて、言おうと思ったが流石にそれは消えていった人達のことを考えると言う気にはなれなかった。
代わりに、「そうだな、まぁ、お前も色々辛かったんだな...」
と、まぁありきたりな励ましの常套句を言うことにした。
「君に言われると、本来励ましの意味になる言葉でも煽りにしか聞こえなくなるんだね」
まぁ、そんな訳で茜節全開の有難い嫌味を受け止めて俺等は帰ることにした。
帰り道、一番疑問に思っていた事を茜に聞いた。
何で、わざわざ俺にこんな大事な事を教えてくれたんだって、
まさか、いつも俺が一人でいるからって理由は本気ではないだろ?って聞いたんだが、聞いたんだが彼女は答えてはくれなかった。
黙秘します。って口に指で×マークを作ってそのまま手を振って別れた。
意外にも、茜の家と俺の家はかなり近い所にあった。距離にして200メートルくらいだろうか?これなら毎朝一緒に登校しようと思えば登校出来るなー、なんて、まぁ当然そんな事をしたらクラス中の話題になることは間違いないだろう。
腐っても、彼女は美少女の領域には十二分に達していた。俺なんかと登校するのを人に見られるのは彼女自身が一番嫌がるだろう。いやいや、ってかまず俺が奴と一緒にいたくねーっての
そんな、マインドトークを繰り広げながら風呂に入り飯を食って床に着く。
今日のことは、誰かに言うべきなのだろうか?そんな考えが頭を過る。ってかまず誰がそんな事信じるんだよっていもう一人の俺が言う。
言わなきゃ、誰かが死ぬかもよ。最初の俺がややシリアスな話題を取り上げる。殺しときゃいいんだよ。元から死ぬ運命のやつだったんだ。それに茜とか言うあの女が信用ならねぇと具体的な意見を述べる後者の俺。あぁー、だめだだめだ、こんな事思ってるとまた寝れなくなっちまう。
いつも、こう頭の中でマインドトークするのが日課になってしまっているのだがそう言う時は決まって寝れなくなってしまうのだ。
前者の俺が反論中だがやかましいので、脳内をシャットダウンする。いいさ、明日のことは明日の俺が考える、今日の俺は営業終了です。おやすみー