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episode 0 chapter 1  【領域:名称未設定・分類番号15900030】

書けたらあげます。この話はそういうスタイル。

――捨てる神あれば拾う神あり


 ――とある世界のとある国の諺


 ♦♦♦♦♦♦♦♦



 ――よい日和と風の日に。【領域:名称未設定・分類番号15900030】にて。


 自分の背丈よりも高い草をかき分けて足場の悪い湿地帯を前へ前へ。空には煌々と我らが太陽が輝いているはずなのにこうもうす暗いのはこの【領域:名称未設定】が何かを隠そうと望んでいるからに違いないとしがない【職業:探索者】の俺は思うわけである。


 奥に進むにつれて【領域:名称未設定】の【悪意】が高まっていくのがよくわかる。体に触れる草は鋭さを増し、もはや金属でできた刃のそれと変わらないし、足にまとわりつく泥の重さは確実に泥の重さなどではなく粘性の強いナニカへと変貌しており、おまけにさっきからハエやらアブやらブヨといった虫の類が周りにうじゃうじゃたかってくるのがうっとうしくてたまらない。


 【装備:対湿地・泥地装備三式改】


 【装備:暗所用ライト付きゴーグル】


 【イセリアン式魔術:下位皮膚硬化】


 【イセリアン式魔術:下位空気清浄化】


 【イセリアン式魔術:下位身体能力向上】


 【イセリアン式魔術:下位浮遊操作】


 【アイオリン精霊加護術:虫を遠ざける見えざる炎の衣】


 こういった二重三重の対策装備とわずかに先祖から受け継いだ【技術:イセリアン式魔術】などの才能がなければ、すでに俺は100回は死んでいるに違いない。


 そして何よりこれでおそらく気づかれていないというのだから恐れ入る。逆にいえば期待が高まる。


 こうも隠されたこの【領域:名称未設定】にはよほど奪われたくないもの、つまり我ら諸人類種の生存にとって良いものが隠されているはずだから。


 そうしてどれほど進んだだろうか。丸半日かけて領域中央であろう小高い丘に足を踏み入れた途端に変化に気づく。


 硬いのだ。足から返ってくる感覚が明らかに変わった。岩、いや違うと思いながら目立たないように丘に上がり、くづかれないように慎重に足元の地面を覆っている地面を今まで杖代わりに使ってきた【装備:総ディンガウム鋼製スコップ】でゆっくりと掘り返す。硬い部分にスコップの先端が触れるやいないや――ガギンという音がした。


 思わず辺りを見回す。気づかれていない、らしい。警戒しながらもしゃがみこみスコップの先端を見た。黒っぽく見えるが土ではない何かがついている。


 それを手に取って周囲の空気に含まれるいくつかの元素を媒介に【アネイオン科学魔法:物質判定】を発動する。


 ――判定結果、【物質:塩】。


 その結果に俺は口元をニヤリとあげた。内心では拍手喝采大喝采の大騒ぎを隠しつつ、今まで以上に慎重に調査を続ける。


 その後、さらに一か月ほどの調査によりこの【領域:名称未設定】の中央部の丘すべてがおそらく露頭した岩塩のかたまりであり、下手をすればこの【領域:名称未設定】の地面の下すべてが岩塩のかたまりである可能性すらあり大変有望であるという、喜ばしい調査結果とともに俺の今回の仕事はひとまず終了した。


 これで我ら諸人類種はまた少しだけ長く生存することが可能になったのだから。


 ♦♦♦♦♦♦♦♦


 ここはとある風変わりな神の世界。この神は己の創った世界に空と風と太陽のみを作り、海も大地も何も作らなかった。ただ空だけがあり風が吹き抜けるだけの世界を創った神はいつしかとてもおかしなことを始めた。


 他の神が創り、そして見捨てた世界を拾い始めたのだ。拾った世界は空と風と太陽だけがあった世界に変化をもたらした。見捨てられ、そして拾われた世界は空に浮かぶ大陸となり、何もなかった空に次々と浮かび始めた。


 神に捨てられた世界の中にいた者たちは、救い主たる神に感謝し、尋ねた。


『神よ、私たちはどうすればよいのですか』と。


 拾った神はそれに、


『私は拾うのが好きだから拾っているだけで、別にお前たちを助けようとして拾ったわけではないから、好きにすればいい』と答えた。


 だが、その世界には空と太陽と風しかなかった。土も木も食べ物も、そして水でさえ生き物が生きるのに必要なほとんど全てがなかったのである。


 拾われた世界の者たちは再び尋ねた。


『神よ、我らはどうやって生きればよいのですか?』


 風変わりな神は答えた。


『空に浮かんでいる島々は、お前たちの世界の残骸だ。だから好きにすればいい。私は拾うのに忙しい』


 そういって拾った世界に残されていた天使や神使たちに彼らを手伝ってやるようにいって、再び拾うことに熱中し始めた。


 途方にくれながら、拾われた者たちはいわれた通りに大陸の中に足を踏み入れ、彼らは、


 

 ――蹂躙された。



 捨てられ、空に浮かぶ島に姿を変えた世界は捨てられた恨みから【変貌】し、己のすべてを奪われてなるものかと【悪意】をもって抵抗した。


 捨てられ拾われた世界の者たちは【変貌】した世界の【悪意】と闘いながら奪い始めた。火を起こすための木を、食べるための木の実や獣の肉を、石を、土を、そして水を得るために。


 全ては生きるため。ただ生きるため。


 そうして風変わりな神は今日も捨てられた世界を拾い続け、拾われた者たちは生きるためあがき続ける。


 我らが祖先たる古き賢者はいった。


 ――我らの神はいつだって拾い集めることに夢中で、我らを顧みることはないのだ、と。


 ――10039番目に拾われた世界である【世界:メルカディオラ世界】人の経典より抜粋。

よかったら感想よろしくお願いします。


ストックはあんまりないけど、ライブ感のみで書いてますのでよろしくです。

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