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四話

窓の外へ目を向ければ丁度、例のダーティークラスが体育を行っているのが見えた。


どうやら水飲み場で溜めた水に顔を入れさせて苦しんでいるのを楽しむ遊びをしているらしい。がたいの良いアメフト部のエースが今日のいじめられ役だ。そして、小さな少年かと見間違う様なこじんまりとしたメガネの生徒がいじめ役。その取り巻きには不良のような男子と、優しそうなただの男子。一見不良のような男以外は全くいじめなんて、考えたことすらなかった言うだろうしし、むしろ見て見ぬふりをしてしまいそうな容姿であった。

三人は、顔を苦痛に歪めて、とても嫌そうにいじめを行っていた。

きっと彼らの誰もが、当り前のようにプログラムでいじめを受けていて、そのつらさが自分自身でも理解できるからだろう。


だからみんないじめたくないし、なによりも、いじめられたくはない。


けれどマザーに逆らうことになってしまうから、いじめなければならない。その葛藤は経験があるからこそわかる。

その時点で人をいじめることに対して快感を覚えるような人間であれば、そこでマザーからはじき出される。脳内マイクロチップが反応してしまって、すぐにお迎えが来る。そのあとの事は僕等にはまだ知らされていない。知る必要のないことであるからだ。なによりコモンが知っていた連れていかれた人間とは、一度も会えない。あれ以来見たことがない。ただコモンがなろうとしている、裁判官は必然と知ることとなるのであろうけど。


気が付けば三人は消えていて、エースくんだけが残っていた。彼は一度水面ぎりぎりまで顔を近づけ、空を仰いだ。その瞳には何も映し出されいていず、ただ無だけが残っていて、コモンは彼は今何を考えているのだろうとだけ、思うのだった。

自分がいじめられていることをコモンは思い出す。

どうしていじめられるのだろうか。そんなことは明確でマザーが命じたことに他ならない。


他の誰よりも、僕は蹴られる音が空間に響いているような気がしていた。実は、僕をいじめているこいつは僕を嫌いだったのだろうかと感じるほどに、強い力で容赦なく蹴るのだ。ただ、マザーに命じられたのは、抵抗をしないことだった。頭を腕で守り、じっと亀になったように時間が過ぎ去るのだけを待ち、彼らが去ってくれるのだけが希望だった。

ふと、蹴られている間に思ったのだ。彼らはどう思って、居るのかを表情を見て探ってやろうと。そんな好奇心を持ってしまったのだ。しっかりと瞑っていた眼を恐る恐る開いてみる。けれど僕はすぐに目を閉じてしまった。彼らはきっといじめられている僕よりも、辛そうな顔をしていた。きっとどこもいたくないだろうに、苦痛に顔を歪ませて、涙は出る直前かのように、目を赤くさせて、僕を蹴っていた。

彼らも辛いのか、僕がいじめる番になった時と同じように、体は何処もいたくないのに、心を削ってぼくをいじめているのだと。

そう悟ることができた。

みんな一緒でいじめは嫌いでも、何処かに連れていかれたくはないから僕らは人をいじめるしかないのだ。人の痛みを知るために。この、プログラムのおかげで、学園はもちろん社会に出たっていじめなんて起きないし、人の気持ちを考えないような人はいなくなったらしい。

こんなつらいこと、誰だって好きじゃないし、関わり合いたくないのだ。







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