最弱の勇者として召喚された俺はまさしく生きた汚物でした
~魔王軍四天王の一角。イビルッツァの居城~
「ハーッハッハッハ! 今回の勇者も大した事はなかったな!」
魔法の水晶にて侵入してきた勇者たちが全滅した様子を眺め、イビルッツァはとても満足そうに笑った。
「もはや人間達には召喚に使う上質な魔石が残っておらぬ様子……もはや我々魔族の勝利は揺るぎますまい」
彼の側近であるサンダークがニヤリと笑う。
人類は窮地に追い込まれていた。
彼らは貴重な魔石を使い、異世界から勇者を召喚して魔族に対抗していたが、
最初の強力なスキルを持った4人の勇者は仲たがいの末同士討ちの末に果てた。
油断して自滅するもの、欲望に負けて篭絡されるものなどが続いた事で召喚に必要な魔石の質がどんどんと下がり
今では一般兵より少し強いくらいの勇者を無理やり戦地に送り出す始末であった。
「ふっふっふ。あとは1人でも多くの勇者を倒し、魔王様による世界征服のあとの我々の地位向上に努めるのみよ……よし、私が直々に死体を回収しにいってやるとするか」
イビルッツァはそういうと部屋をあとにした。そして渡り廊下を歩いていると……
「む、なんだこの匂いは!」
突然の異臭にイビルッツァは思わず鼻をふさいだ。だがその悪臭は鼻を塞いでもなお彼の脳神経に遠慮なく土足で殴りこんでくる。
そう、彼はこの時点で警戒するべきだったのだ……その異常とも言えるあまりの臭さに!
「は! イビルッツァ様! あれをご覧ください!」
サンダークが指さした先にはまるで絵画……いや、戯画のごとくグルグル巻きにもられた……汚物があったのである。
「不潔な……清掃が行き届いておらんな」
「ええぃ! 衛兵は何をやっておる!」
途端に不機嫌そうになるイビルッツァ。
「お任せくださいイビルッツァ様。この私がすぐに片づけてみせましょう」
そう言ってサンダークは汚物のところにスタスタと歩いていき、ヒョイっと持ち上げてパクっと口に入れた。
「うわぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!?」
「お、おまえ! お前なんでうんこ食ってんだぁぁぁ!!!!!」
「わ、わかりませぬ! 体が勝手に!!」
慌てふためく二人、だがその時サンダークに電流走る……!
「い……イビルッツァ様……」
サンダークの表情は青ざめ、恐怖にガクガクと震えている。
「イビルッツァ様……お腹が……痛いです……」
「当たり前だろがーーーーーーーーーーーー!!!!」
こうしてサンダークは死んだ。彼は死にながらうんこを出した。
「さ、サンダーク……我が側近がこのような戦いで……ええぃ! それもこの忌々しいうんこが!」
イビルッツァは思わずうんこを睨みつけた。
「うんこが……」
イビルッツァの手がうんこに伸びる。
「う、うんこが!? うおぉ、わ、われはなにを! やめろ! 鎮まれ我の右手よ! あ、あぁ、右手、右手が勝手にぃ!」
必死の抵抗もむなしく彼の右手がうんこに伸びる。
「や、やめてくれぇ! いやだ! こんな死に方いやだぁぁぁぁあ!!!!」
そして彼はうんこを口にする。
「や、やめ! おぼ、おげ、おげぇぇぇぇえええ!!」
そして彼は死んだ。彼は死にながらうんこを出した。
……誰もいなくなった渡り廊下で、うんこは1人呟く……
「また1人……くだらぬ腹を下しちまったな……」
そして広げるはドラゴンから得た爬虫類のような翼。闇夜に飛び去るうんこ。
一般的に魔石の質が下がれば下がるほど転生の際に得られるスキルや、転生した肉体の質などが下がる。
そして、劣悪な魔石を使った無理矢理な召喚は……ある1人のあまりにも可哀想な姿の若者を召喚してしまった。
そう……かれはうんこだったのである!
彼の名は飯島直人。だがその名はこの世界では何の意味ももたない。呼んでくれる人がいなかったからである。
うんことして召喚された彼は最初指一本動かす事が出来なかった。
何の意志の表明も出来なかった彼を、王たちはただの排泄物としてみなし、文字通りゴミ以下の存在として片づけた。いや、処理した。
流れついた先で出会ったのは魚型のモンスター。魚は彼を食べた。食べざるを得なかった。それが彼が転生の際に得たスキル。「食い物にされる敗北者」(ルーザー・ルーザー)だったのだ。
それは、出会った魔物が彼を食べずにはいられなくなると言う、それ単体では何の価値もないスキル。だが彼のうんことしての特性と出会い、それは開花した。
食われても食われてもうんことして再排泄されるうんこ。食べると言う事は同化すると言う事……繰り返される生命の輪廻の中で、彼は少しずつモンスターの能力を会得していきそして彼は名も知れぬ勇者となった。
誰からも感謝される事なく1人魔王軍と戦い続けるうんこ。
人々から忌み嫌われた彼に唯一やさしくしてくれたあの女の子は無事だろうか。
だが、もう会う事は出来ない。もう2度とうんこと話しているところを他の者たちに見られる訳にはいかない。
うんこと人は相いれない存在。そう言い聞かせ彼は心の中の願いに蓋をする。
彼の活躍は歴史には記されていない。これはたった一人で戦い続けた。名もなきヒーローの物語……
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