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遠くまで

作者: 音羽有紀

短いです

  遠くまで


 今日は寒いのね。さあ、出発しましょう

 あたし帰らないわ。

 もうあの家には。

 あたしは、今バスに乗って遠くの町へ行くの。

 どこに行くかって、知らない

 けど、ここにいるよりはいいの。

 ほら、バスが来た。横浜駅行きよ。

 これに乗ってみましょう。

 あたしと同じ年齢の人は皆、学校に行っている

 時間ね。

 お年玉は、使ってないの、あたしは。

 お金を貯めるのが好きでお年玉は沢山貯まったわ。

 だから何処へでもいけるの。


 横浜から小田原まで行って

 そこから新幹線に乗って明石の方まで行きましょう。

 おばあちゃんはね、明石に住んでいたの

 小さい時遊びに行った時、明石城にも行ったの

 だからもう一度行くのよ

 新幹線に乗ったわ。

 わくわくしたわ。海か見えた時は興奮したわ。

 誰にも言わずに来ちゃったけれど

 玲子さんは、心配なんかしない。

 あ、玲子さんて継母、意地悪であたしの

 前では、笑わないの

 明石のお城についたわ。白鳥が寄ってきた。

 売店で買ったパンをちぎってあげたの

 パクパク食べたわ。

 家族でおばあちゃんの家に行った時

 こんな広い所でお弁当食べたっけ

 おばあちゃんは死んじゃって

 遊びにはいけないけど

 お堀の側で眠りましょ

 寒いねけれどあの家よりはいいの。

 皆ね、優しかったよ。駅の人はね

 道を教えてくれてとっても優しかったよ。

 今までの誰より優しかったよ。

 優しい人もいるんだね。

 良かった。ここに来て

 今ここで眠ったら

 おばあちゃんに会える気がするよ。

 あれ、雪だ。

 雪が降って来た

 ラッキーだな

 雪大好き。

 目をつぶっても雪が見える

 不思議だな


 誰かが呼ぶ声がする。

 眠っているのに

 邪魔しないで欲しいな

 サイレンの音もがする

 どうしたんだろう。


 あれっ、ここは何処?

 白い壁

 継母がいた。泣いている

「彩ちゃん」

 継母は泣き声で言った

 泣かないでよと思った

 継母だって思っているんだから

 本当の母親みたいに泣かないでよ

 わたしの中ではあなたは継母なんだから。

 あーあ、また捕まっちゃった

 何処に逃げたらいいんだろう

 何処に逃げたらいいの。

 この世界から

 こんな時だけ母親みたいにしないで。

 またあしたから日常に

 なっちゃうんだよね

 明石にいたのに

 あれは夢だったの

 そうか

 夢だったのね。

 残念だな

 楽しかったのにな


  夢のように楽しかったのに。                                 


  END





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