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どうも、屍です。  作者: オガシュン
4/13

怖いと逃げたくなるのって当たり前だよね

 

 不細工なおっさん達に囲まれた。


 これだけを聞くとかなり危険な香りがするが、決してそっちではない。


 というよりも、むしろそれより悪い状況だ。


 おっさん達は全員石を持っている。そしてそれを僕に向けて振りあげている。


 どう考えてもまずい状況だ。


 はっきり言ってしまえば、こんなことを考えている場合ではない。

 命の危険が目の前に迫っている。

 これは走馬灯のようなものだろうか。時間が長く感じる。


 石が振り下ろされる。僕に当たるまで、あと5センチくらいだ。


 このままでは確実に死ぬ。


 いや、駄目だ。


「うおおおおぉおぉぉああああ!」


 グチャ


 残り1センチ。絶叫をあげながら身を捻り、文字通り死ぬ気でかわす。

 後頭部のすぐ後ろでゴンッと鈍い音が鳴った。

 間一髪だ。一瞬遅ければ、どうなっていたか。

 僕はそのまま転がり続け、ある程度おっさんと距離をとる。

 安全な距離をとったところで、勢いよく起き上がり、周りを確認する。すると、おっさん達があっけらかんとした表情でこちらを見ていた。


「…あっ!」


 何かを思い出したような口調で声を漏らす。



 そうだ、逃げなきゃ。



 気をつけの姿勢から綺麗に回れ右して走り出す。

 10メートルくらい走ったところで寝そべるようにこける。

 立ち上がってまた走り出す。

 それを3回ほど繰り返してようやく安定して走り出した。


 その間、おっさん達は目を点にしながら微動だにしなかった。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「なんだったんだ、あのおっさんは。」


 おっさんから大分距離を置いたところで立ち止まり、壁に背をかけながらズルズルと地べたに座り込む。


 取り敢えず、現状を確認しよう。


 まず周りは洞窟だ。岩に囲まれた長いトンネルになっている。ただし、ものすごく分かれ道が多いため、迷路方が合っているかもしれない。

 明かりもないのにちゃんと見えると思ったが、どうやら壁全体が薄く光っているようだ。


 さっき、身体が全く動かなかった。真っ暗だと思っていたのは目をつぶっていたから。

 あの声の正体はわからない。


 何故こんなところにいるのもわからない。


 はっきり言ってわからないことだらけだ。


 ただ、さっきのおっさん。あいつら、今思うと見たことがあるような気がする。


「確か……ゴブリン。」


 そう、あいつらゴブリンにそっくりだった。

 そういう民族なのだろうか。でも、だとしたら何故僕を殺そうとした?

 それに言葉持っていなかった。肌の色も緑。人間ではないだろう。


「まあ、わからないこと考えてもしょうがない。まずは身の安全を喜ぶべきだろう。」


 取り敢えず、怪我が無くて良かった。


 頭よーし。

 体よーし。

 左腕よーし。

 右腕なーし。

 左脚よーし。

 右脚よーし。


 よし、五体満足。

 生きてて良かった。


 …ん?


 今気づいた。





 右腕がねえ。





 今日最大の謎だった。


「ぅお!へ?あっはぁあああ!」


 パニック。それがぴったりだ。

 腕が無い。にも関わらず痛く無い。血も出ていない。


 よく見ると肌の色も悪い。

 残った左手で胸に手を当てる。


 動いていない。



 僕は初めから死んでいたようだ。


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