暗闇の中にいると大体怖いよね
・・・ん、なんだ。僕はどうなったんだ。
暗闇の中で目を覚ました。いや、正確には意識だけだ。もしかしたら夢かもしれないしね。
周りは何も見えない。目を閉じているのか、それとも本当に真っ暗なのかは定かではない。
『動作開始まで、あと1時間』
驚いた。だが声は聞こえているみたいだ。
話しかけたい。でも声が全く出ない。
やはりこれは夢なのか。
そう思い始めた時、
ヒョイッ
誰かが僕を持ち上げたみたいだ。感覚はある。夢ではないらしい。
だがこの状況はどうだ。何も見えなければ、身体を動かすこともできない。
ただ、声が聞こえるだけ。
これが俗に言う植物人間というやつだろうか。
だとしたら、ここは病院か。病院で、看護師さんに運ばれているのだろうか。
ドタッ
僕の身体が突然落下する。衝撃がビリビリ背中に伝わってきた。
おかしい、病院であるのならばこんな雑な扱いは絶対にしないはずだ。
途端に不信感が全身を襲った。明らかに身の危険を感じる。不安が僕の心を支配した。
グイッ
また身体が持ち上げられた。自分で体を動かすことはできない。これから僕をどうしようというのか、僕には見当もつかない。
『動作開始まで、あと40分』
『動作開始まで、あと20分』
あれから20分たったらしい。その20分間、僕はずっと運ばれていた。
先ほど落とされてから、ずっと妙な会話が聞こえている。
「グギャア、グギャギャ。」
「グギャギャギャギャギャ!」
どう考えてもおかしい。明らかに人間の声ではない。
ドサッ
また落とされた。
「グギャアガア!」
「グギャアァアアア!」
僕を落とした瞬間、途端に騒がしくなる。どうも喜んでいる風に聴こえる。
「グギャア!」
「グギ!」
「グウ!」
「ガア!」
「ガア!」
「ガア!」
「ギギャ!」
「「「「「「グガガガガガガガ!」」」」」」
変な声のヌシはたくさんいるようだ。
その時だ
ガン!
バン!
ドン!
ザザッ!
ドガ!
僕の身体に激痛が走る。
おそらく、蹴ったり、踏んだり、殴ったり、引きずったり、叩きつけたりしているのだろう。
『動作開始まで、あと10秒』
また声が聞こえた。
ようやく気付いたのだが、どうやら声ではないらしい。直接頭に響いてくる。
「グガアアアアアアアアアアアアアアアア!」
声が聞こえたのもつかの間、僕に絶叫が響く。
この瞬間、恐怖に全身が震えた。
命の危険が迫っていると頭で警報がなっている。
『動作開始まで、あと3秒』
ドン!
ドン!
ドン!
ドン!
ドン!
ドン!
ドンドンドンドンドンドンドンドンドン!
ドドドドドドドドドドドドドドド!
何かを叩く音が聞こえてくる。
何らかの楽器の音なのか、それとも自分の心臓の音なのかはわからない。
だが、どうにかして動かなければ、大変なことになるということは本能的に感じた。
動け。
動け!
動け動け動け動け!
『動作開始』
必死の心の叫びの中、重い瞼が開く。
薄暗い光を浴びた眼球に、まず最初に飛び込んできたもの。
それは、緑色の肌をした醜い顔の小さいおじさん達が大きめの石を僕に向けて振りあげている光景だった。