毒を持ってるコウモリは3種だけ
グギイィィィィイイ!!
上空にいるコウモリが真っ直ぐこちらは突進してくる。
目を見開き、強張った顔面。引きつった口元からは鋭い犬歯が剥き出しになり、唾液が飛んでいる。
直線距離、約10メートル。
自分の棲家が荒らされたからであろうか、それとも単に攻撃的なだけか。
どちらでもいい、いまこちらに向かってきているのは変わらない。
見たところこいつ1匹だけのようだ。追撃を警戒する必要はない。
直線距離、約5メートル。
まあそれでも、特に心配はしなくていいだろう。僕には毒がある。こいつの攻撃手段は噛み付くくらいしかないだろう。
僕に危害を加えようとした時点で、こいつはもう、死んでいる。
直線距離、約1メートル。
さあ、噛みつけ。
鋭い犬歯がゴブリンの腕の方に突き立てられ、ゴリゴリと肉を削り取る。
肩口が少し抉られたが、動かせないほどではない。
肩口を抉ったコウモリはバタバタと後方へ飛んでいき、また上昇し始めた。
やはり硬いサソリの攻殻よりも柔らかいゴブリンの腕を狙ったか。なら、サソリの攻殻で防げる可能性が無くはないな。
コウモリは少し上空を彷徨ったあと、こちらを凝視し、再度こちらへ突進してくる。
凝視した際、目と目があった。まさか顔面を狙うつもりなのか。
さすがに顔面はまずい、食らったら危険な気がする。
右腕を持ち上げ、奴へ向かって真っ直ぐ突き出す。サソリの毒も注入すれば全身に毒がより早く回るかもしれない。
グルンッ
「はあ!?」
奴は空中で旋回し、突きを軽々と避けた。そのままの態勢でこっちに突っ込んでくる。
「ぐおぉぉお!」
必死に体をそらし、突進を回避する。
巨大な羽が顔ギリギリを過ぎる。奴が起こす風圧で体がよろめき、海老反りになってしまう。
すぐに立て直さないと!
そう思った直後、後ろへ通り過ぎた奴が目に入る。
驚いた、止まっている。
奴の動きが空中で静止している。
いや、それは間違いか。動きを止めた奴は降下してる。毒が効いてきたのか。
このチャンスを逃す手は無い!
僕は海老反りの姿勢のまま、右腕を奴に向けて突き出す。
ギィッ!!
今度こそ当たった。
ボトリと地面に落ちる。
「ハァ、やっと終わった…。」
ばたりとその場に倒れ込む。
四肢を広げ、大の字で寝転がった。
「こうしてみるとでかいな。」
片翼だけでも2メートルはゆうにある。骨格もしっかりしていて、丈夫そうだ。
「…いいパーツになるかもな。」
劇的な大改造が始まりそうだった。