孤独
サソリの腕を取り付けてからしばらく歩いた。
どこまでも続く道、見える範囲にはなにも無い。
「ったく、なにも無いな。出口なんてあるのか?」
そんな気がして来る。進めば進むほど不安が大きくなる。
サソリの腕はとても長く、最初のうちは持ち上げて歩いていたがこの腕でも乳酸は溜まるらしく、やがて地面を引きずりながら歩き始めた。
ガチャガチャと音を鳴らしながらスタスタと地を踏むリズムにもそろそろ飽きが回ってきた。
「この腕本当に重いよな。邪魔だ。」
確かにこの腕はかなり強い。これさえあれば大抵の敵は倒せるだろう。
だが、そのだけのデメリットも存在する。
最大のデメリットは移動ができない。戦闘中に動けないなどただの的に過ぎない。
どうにかならないか、そればかりを考えていた。
「敵〜。敵はいないのか〜?」
そんな嘆きは空間に木霊するだけだった。
が、
ーーーっ、ーーーっ
遠く、本当に遠くに神経を張り巡らせていなければ気付かないようなか細い声が聞こえた。
その音に向かって全力で走り出す。
腕の疲れなど忘れて、一心不乱に駆け出した。
2キロも走ったころ、
キィッ!
ようやく声のする方へ辿り着いた。
「何処だ!何処にいる!?」
声は木霊し、その木霊に答えるように新たな木霊が聞こえる。
ィ、、、、キ、、、、キィ!!
だんだんと大きくなるノイズの様な叫び。
が、いくら見渡しても姿が見えない。
キィ!、、、、キイ!、、、、グギイィィィィイ!!!
最高潮と思えるまで大きくなった声は何処から聞こえて来るか、より鮮明にわかる様になった。
「上かっ!!」
目の前には今にも襲い掛かろうとしている、悪魔の様な羽を持った巨大なコウモリがいた。