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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第五章 貿易と防衛

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EX7.動き出す者達

 ハザン帝国の皇帝と宰相、そして懐かしい彼らの会話になります。


 ファウード大陸のほぼ中央に位置する、大陸最大の人口を誇る大国。

 ハザン帝国。

 大陸有数の軍事力を誇り、最も特徴的なのが、世界的にも珍しい“ダンジョン”を国益にしているという点だ。

 国のほぼ中央に存在する八大迷宮の一つ“ファーブニル”。

 この世で最も稼げる迷宮とも呼ばれる、この迷宮をハザン帝国は所有している。

 このダンジョンから産出される鉱石や魔石、金銀財宝はこの国の重要な経済資源となっているのだ。


 その為、この国は数多くの冒険者を抱えている。

 王都には冒険者が溢れ、城下町をにぎわす。

 そんな冒険者を相手にするため、商売も潤い、町も活気づく。

 まさに持ちつ持たれつな関係だ。


 そんな王都の中央にそびえたつ巨城。

 その最上階にある玉座の間。

 そこに一人の男が腰かけていた。

 若い男だ。

 歳もまだ二十代後半ほどだろう。

 にもかかわらず、見る者全てを飲み込み圧倒するほどの雰囲気を纏っている。


 ハザン帝国第十四代皇帝カグリアス・ディル・ハザン。


 ハザン帝国の最高権力者であり、同時に帝国の“最高戦力”とも呼ばれる男だ。

 人は彼を『剣帝』と呼び崇め立てる。

 そう、彼は皇帝であると共に、一角の剣士でもあるのだ。

 そんな男が、羊皮紙を片手に愉快そうに笑っていた。

 

 「ふはははは!おい、見よ!このダンジョンの報告を!素晴らしいな!」


 彼は愉快そうに笑いながら、一枚の報告書を見る。

 そこにはここ最近、出現した新しいダンジョンについて記されていた。

 更にそのダンジョンの特性についても、事細かに書かれている。


 「転移門を有したダンジョンだと!それも、我ら人が、移動に使えるであろう転移門を、だ!しかも、すでに各国は競うようにこの転移門を利用しているという事じゃないか!これは素晴らしい!是非とも欲しい!いや、挑みたい!」


 子供のように目を輝かせて、皇帝カグリアスは報告書を読む。

 この皇帝は、『ダンジョン狂い』でも有名だった。

 自らダンジョンに潜り、魔物を狩り、財宝を手に入れる。

 政治よりも、ダンジョンに潜ってる方が好きな変わった為政者だと。

 だが、代々この国の王はダンジョン狂いでも有名だった。


 「おい!ケルビンよ!出撃しよう!今すぐ、このダンジョンに挑むのだ!」


 無邪気極まりない口調で、彼は隣に控えている男に目をやる。

 この国の宰相であり、彼の右腕でもある男だ。

 金髪の肌の黒い年配の男だが、年齢を感じさせない凄みがある。

 ………なのだが、その顔に刻まれているしわの数が、彼の苦労を物語っているように見える。


 「………陛下、この後は諸侯との会食及び今年度の税についての会議です。その後は、書類の整備、各貴族との会合、その次は―――」


 彼の手に握られているのは、皇帝の予定表スケジュール

 羊皮紙にはびっしりと予定が書き込まれていた。

 それを聞いた瞬間、カグリアスは思いっきり顔をしかめる。

 

 「あーもう!うるさい!うるさい!そんな面倒臭いの、余がやる必要ないであろう!余は皇帝なるぞ!偉いんだぞ!雑事などしらん!余はダンジョンに行きたいのだ!」


 子供か、とケルビンは思わず突っ込みたくなる。


 「見よ、この報告に書かれた詳細を!きっと、素晴らしく難解なダンジョンだろうぞ!余の直観が告げている!きっとこのダンジョンは、奥に潜るにつれて難易度は跳ね上がっているだろう!ふはははは、実に挑みがいがありそうだ!」


 「………いいから、さっさと仕事しろコラ」


 ぷいっとそっぽを向く皇帝に対し、ケルビン宰相はドスを聞かせた声で命令する。

 ゴゴゴゴゴゴという効果音と共に、なぜか後ろに般若のようなものまで見える。

 その余りの迫力に思わずカグリアスも慄いた。


 「な、なんぞ、その態度は……!よ、余は皇帝だぞ!この国で偉いんだぞ!分かっているのか!」


 「知ってますよ。だから、さっさと仕事しろつってんだよ」


 「なっ!?貴様、皇帝に向かって……!ふ、不敬であるぞ!」


 なんかもう、主従が逆転しているような光景だ。

 だが、これもこの城の日常的な光景だ。

 現に他の騎士や文官たちは、このやり取りに全く言葉を挟もうともしない。

 中には何人か、額に手をやり、「あぁ、またか」みたいな顔をしている。


 「なら、とっとと首にするなり、処刑するなり、好きににして下さい。あー、これでこの馬鹿から解放される。さっぱりするわー」


 コキコキと首を鳴らしながらケルビン宰相は言う。

 その開き直りに、今度は皇帝の方が慌てふためる。


 「なっ!?ま…まって!お主に出て行かれると、一体誰が余の仕事を代わりにやってくれるというのだ!だ、駄目だぞ!クビなんて、絶対に駄目だからな!」

 

 そもそも仕事は自分でするモノです。

 人に押し付けちゃいけません。


 「じゃあ、とっとと会合に向かいますよ。安心してください。スケジュール通りきちんと仕事をこなせば、半年後くらいには、ある程度時間に余裕が出来るはずです。その時にでも、ダンジョンに向かわれてはいかがですか?」


 「なっ……は、半年だと!?」

 

 がーんと後ろに文字が見えるほどに、皇帝バカが落ち込む。

 「はぁ……」とケルビン宰相は溜息をつく。

 本当にこの皇帝のダンジョン狂いには困ったものだ。

 しかも、この皇帝。これでいて、無駄にカリスマがあり、民衆から支持を得ているから性質が悪い。


 『皇帝自ら率先してダンジョンに潜り、国益を潤す』


 そのプロパガンダは、市民には非常に受けは良いが、振り回されるコッチの身にもなってほしいものだ。


 もし皇帝がこの場に居ながら、遠くの景色や行動を皇帝が体験できるような魔道具やゴーレムでもないモノだろうか?

 それならば、この馬鹿(皇帝)の抑えも良くなると言うものだ。

 もしあったら、いくらでも金を出すのに、とケルビン宰相は切に思う。

 まあ、無いものをねだっても仕方が無い。


 「………そう言えば、ケルビン」


 「何でしょうか?」


 この期に及んで、まだ駄々をこねるつもりかとケルビンは思った。

 だが、その予想は外れた。


 「ファーブニルに入り込んだ“異物”はどうなったのだ?」


 ああ、その件かとケルビンは手元にあった資料に目を移す。

 確か、部下から報告が上がっていた筈だ。


 「――――“道外し”ですか?それでしたら、十日ほど前に、無事追い払えたと報告がりましたよ」


 「な、本当か!?」


 その報告に、カグリアスはがばっと顔を上げる。


 「ええ。一年近くかかりましたがね。報告によればSランクの三人の冒険者が追い払ったとの事です。これで、ようやく攻略の方も正常に戻りますね」


 その報告に皇帝は心の底から嬉しそうな顔をした。


 「………それはもしや、あの“龍殺し”のパーティーか?」


 一年ほど前にこの国へやってきた元Sランクの冒険者。

 第一級の賞金首、“龍殺し”と“穿界”。

 そして、彼らの師匠でもある“銀鬼”。


 「おそらくは」


 報告を見る限りは間違いないだろうと、ケルビンは思う。


 「ふーむ、やはりそうか……。はぁ、全く、賞金首になってなんぞおらねば、国を挙げて彼らを祝福するというのに……」


 「仕方がありません。いくら裏であの“魔女”が手を引いているとはいえ、公にはそういう事になっていますから。我らに出来るのは、騎士団や警邏隊を差し向けぬよう裏で手を回すくらいです」


 魔女という言葉が出た瞬間、カグリアスは忌々しそうに顔を歪めた。

かの英雄を賞金首に処したというあのレイノルズの魔女を、彼は心底嫌っていた。

 

 「あの魔女め……。次の大陸会議では、必ずやあの女の尻尾を掴んでやる。任せたぞ、ケルビン」


 「いや、そこは自分でやるって言って下さいよ。さぁ、会合に向かいますよ」


 とりあえずは、この馬鹿を正装に着替えさせないといけない。

 彼はメイドを呼ぶための呼び鈴を鳴らした。




 とある街道にて―――――


 「………師匠、もうやめない?“ファーブニル”から“道外し”は追い払えたんだからこれ以上追撃はしなくてもいいと思うんだけどねぇ……もう一年になるんだし」


 「馬鹿者が。一度仕留めると決めた獲物を、むざむざ逃がす冒険者がどこにいるんじゃ。今居場所を割り出す。少し待っておれ」


 「……はぁ、もう追わなくても、いいと思うんだけどねぇ」


 「毎回、お前は余計な事を言い過ぎだ……」


 「はぁ~、だって文句の一つも言いたくなるだろう?僕の場合、君と違って新しい武器やストックも、新たに調達しなきゃいけなかったんだしさぁ。本当に大変だったんだよ、この一年?」


 「だが、もう十分なストックも新しい武器も手に入っただろう?」


 「まあね。ホント“ファーブニル”様々だよ。それより、君の方こそ良いのかい?エルド荒野のダンジョン。すごい事になってたんだろう?」


 「ああ、最初見た時は目を疑ったがな……。まぁ、それは後でもいい。何より、行くたびに“アイツ”に勝負を挑まれて、死に掛けるのは割に合わん……」


 「まあ、確かにねぇ」


 「―――――ふむ、出たぞ」


 「お、師匠。場所が分かったのかい?」


 「ああ、場所は、ここより西方――――――ユグル大森林じゃな」


 「ユグル大森林かい。たしか、ここ最近新しいダンジョンが出来たんだっけ?」


 「ああ、それも転移門を備えていると聞く。かの“賢者の迷宮”の転移門に匹敵する精度だと聞くな」


 「へぇ、それは面白そうだねぇ」


 「では、往くとするか。二人とも支度せい」


 「はいよ~」

 「はい」





 ヴァレッド「お ま た せ」


 アース『帰れ』



 次回から再びアースさん達のお話


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