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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第五章 貿易と防衛

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7.多分似た者同士

 研究所の中は、正に廃墟といった風体だった。

 ぼうぼうに生えた草。

 ひび割れ壁に、所々砕け老朽化が進み、ボロボロになっている。

 何に使うのか分からない魔道具の残骸なども多く転がっていた。

 更に、目に付いたのが“骨”だ。

 あっちこっちに、何かの骨が転がっていた。


 ………何に使ったのか、聞きたくない。

 

 「ぷー?」


 そんな俺の横で、ぷるるは骨に触手を伸ばして突っついている。

 あ、ぷるる!

 だめでしょ!そんなの触っちゃ!

 ぺっしなさい!ぺっ!

 俺はぷるるを抱きかかえて歩く。

 突っついていた骨は拾って投げ捨てた。


 「ぷぅ~…」


 ぷるるは骨を取り上げられてご不満の様だ。

 腕の中でちょっとむくれている。

 でも、そんな怒った姿も可愛い。

 らぶりー。


 『しかし、随分きちんとした建物だな………』


 二百年前とはいえ、相当な建築技術だとうかがえる。

 作りそのものは古いけど、現代日本の建築技術とそう変わらんぞ、この建物。

 まあ、エリベルのあの遺跡や八十八層の大広間だって相当な技術が使われてたしな。

 多分、魔術の一言で済むんだろう。

 便利だな、魔術。


 「おーい、何してるのよ。こっちよ、こっち」


 おっと、つい建物に見とれてしまっていた。

 見れば、エリベルは随分先に行ってしまっていた。


 『おっと、いけない。ぷるる、急ごうか』

 「ぷる!」


 俺とぷるるは急いでエリベルに付いていった。


 そして、しばらく歩くと、吹き抜けの大広間に出た。

 映画とかで、舞踏会が開かれそうな広間だな。


 『うわぁー、広いな……』

 「ぷるぅー……」


 俺もぷるるもつい見とれてしまった。

 天井部分には大きな穴が開き、二つの太陽がスポットライトの様に中心を照らしている。

 スポットライトを浴びる様に、エリベルは中心に立つ。

 ボロボロで、至る所に机や機材が散乱してるが、それも含めて一枚の絵の様な光景だ。

 ホント、見た目だけなら完璧なのになぁ……。


 「さてと、ここでいいかしらね」


 そう言ってエリベルは、近くにあったテーブルに腰かける。

 手で俺達にも適当に腰かけるように促した。


 「さーて、なにから話しましょうかね………とりあえず、長ったらしいのは嫌いだし、結論から話すとしましょうか」

 

 『ていうか、エリベル。記憶送信じゃダメなのか?』


 アレは、送り主の記憶をそのまま他者に送る便利な魔術だ。

 それで、エリベルの記憶をそのまま送ってくれればいいんじゃないだろうか?


 「ダメ。これはきちんと、私の口から説明したいの……」


 それに、と彼女は言う。


 「………記憶送信だと、万が一、聞かれる可能性があるわ。それに、ここは廃墟だけど、音そのものを外に漏らさない結界も貼ってあるしね」


 随分な念の入れようだ。

 見た感じ此処には誰もいない。

 魔力感知で、探ってみたが俺たち以外にはいない筈だ。

 一体誰に聞かれるっていうんだ?

 いや、そもそも記憶送信なのに、聞かれるってどういう事だ?


 『なあ、エリベル。聞かれるって、誰にだよ?』


 エリベルは答えない。

 ただ、周囲に何らかの術式を掛けているのは分かる。

 その作業を俺とぷるるはじっと眺めていた。

 


 ――――そして、しばらくしてその作業が終わり、エリベルがこちらの方を見た。


 「これで良いかしらね。待たせてごめんなさいね」


 『いや、別にいいけど』

 「ぷうー」


 その間ぷるると遊んでたし。

 なんなら、後二時間くらい、放っておいてくれても良かったくらいだ。

 むしろ一生戯れていたい。

 癒されていたい。

 でも、とりあえずエリベルが話す気満々なので仕方なく、エリベルの方を向く。

 ぷるるも俺の膝に乗っかり、聞く態勢だ。

 そして、エリベルは口を開く。


 「………とりあえず結論から言いましょうか。アンタに手伝ってほしい“二百年前の後始末”―――――それはね、あるバカを止める事よ」


 『あるバカ?』

 「ぷるぅー?」


 アルパカ?

 いや、違うか。ふふ。


 「ええ、そいつはね二百年前、私とベルクを騙して、六つの武器に“ダンジョン破壊”を付与し、私の研究成果の全てを奪い、あまつさえ、現代までのうのうと生きてる。そのくそったれのバカ野郎を止める事。それが、私の後始末よ」


 一息にエリベルは捲し立てる。


 『おいおい、ちょっと待てよエリベル』


 「何よ?」


 『それって二百年前の出来事なんだろ?じゃあ、そいつとっくに死んでるだろ』


 人間の寿命なんてせいぜい百年だ。

 この世界の人間の平均寿命は更に短い筈だ。

 二百年なんて年月を人が生きていられるわけがない。


 「何言ってんのよ?生きてるわよ」


 『え?』

 「ぷ?」

 

 その言葉に俺とぷるるは目が点になる。

 アホを見るような目で、エリベルは俺を見る。

 やめろ、その蔑んだ目つき。


 「アンタねぇ、目の前に、その“実例”がいるでしょうが」


 エリベルは自分の胸に手を当てる。


 『あ……』


 そう言われてようやく気が付いた。


 『不死化………』


 アンデッド。

 人が死に、ゾンビと化した存在。

 意志を持たない生きる屍だが、高位のアンデッドは高い魔力と意志を、すなわち心を持つ。

 更に、普通の人間と違い、寿命に縛られることが無い。


 「そう、“そいつ”も私同様、不死化した“元人間”。もっとも、そいつは二百年前の時点で、とっくに不死化してたけどね。なにより、私に“不死化”の術式を教えたのはそいつだし」


 どこか懐かしむようにエリベルは言う。

 だが、次の瞬間その瞳が歪む。


 「でもね、ソイツは、ある時私を裏切って、私が独自に研究を進めてた、“ダンジョン破壊”や“超大規模転移術式”、“次元転送回廊”とか、いろいろ好き勝手に使いやがったのよ。ホンットにクソむかつく話だわ」


 ヤバい単語がいくつも聞こえた気がする。

 余程頭に来てるのか、エリベルの声は震えていた。

 ぴりぴりと、憑代の人形の身でありながら、その身からほとばしる魔力が、周囲を陽炎のように歪めている。

 こんなにコイツが怒るなんて、かつて俺がこいつの研究資料をうっかりくしゃみブレスでぶっ壊した時以来だ。

 ――――あの時は本当に怖かった。

 よく腕の皮だけで済んだものだ。

 こいつを怒らせるなんて、ソイツも随分と命知らずな奴だな。

 逆に興味がわくわ。


 『何て名前なんだ、そいつ?』


 「――――――リアス」


 その名前を口にすると同時に、エリベルは深い溜息をつく。


 「元レーベンヘルツ家筆頭顧問魔術師リアス・アウローラ」


 そして、フルネームを言い終えると同時に、再び何とも言えない表情になった。様々な感情が混ざり合っているような表情だ。


 「私に魔術のイロハを叩き込んだ――――いわば師匠ってところね」


 エリベルに魔術を教え込んだ。

 多分、ソイツも色々規格外な存在なんだろうな。

 弟子であるエリベルを見るに……。


 『でも、仮にも師匠なんだろ?それでも、その……復讐するわけか?』


 「当然でしょ?百回殺して、千回半殺しにして、万回拷問して、ドロドロの瓶詰にしてやるわ」


 お、おぉう……。

 さらっと恐ろしい事を仰る。

 あん時剥がされた俺の皮もそんな感じになってたな。


 「ぷ、ぷぅー……」


 あ、ぷるるが恐怖で小さくなって震えてる。

 可哀そう。でも可愛い。

 らぶりー。


 『でもさ、二百年前の事なんだろ?過ぎたことをとやかく言うつもりは無いけど、そんな昔の―――』


 「何言ってんのよ?アンタもその被害者でしょ?」


 『え?』


 「あの龍殺しが使った聖剣レヴァーティンの“ダンジョン破壊”、そしておそらくは軍の移動に使われた神杖カドゥケウスの“超大規模転移術式”。そのどちらも、あのバカが二百年前に、勝手に私の研究資料を持ち出した所為で起こった事なのよ?」


 『あ…………』


 そう言われればそうか。

 俺の丹精込めて作ったダンジョン兼マイホーム。

 それが一瞬で壊された。

 うん。そう考えれば、腹が立ってきた。


 『確かに、そいつはまずいな』


 主に俺の安全の為に。


 「だから、止めないとまずいのよ。あのレベルの術式は、そうそう簡単に解読することも量産する事も出来ないし、適合する武器や素材が無いと意味は無いけれど、もうすでに二百年も経ってるしね……。まあ、今更っちゃあ、今更なんだけど、それでもケジメはつけないといけないしね」


 どちらかと言えば、気持ち的な問題ね、とエリベルは言う。


 『成程ね。つーかさ、お前、なんでそんな物騒な術式やら理論やら考えたんだよ?』


 そもそも、お前がそんな超理論考えなければ、こんなことになっていなかったのでは?

 俺は遠まわしにそう言う。


 「いや、その………ね」


 歯切れが悪そうにエリベルは言う。


 「その……術式とか、武器とか考えるのが楽しくて、つい、ね。ノリノリで色々術式やら魔道具やら作ってね。当時は、その後の事なんて、さっぱり考えてなかったわ」


 『おいっ!?』


 流石に、それはどうなんだ?

 いや、まあある意味研究者っぽいっていえばそこまでか。


 「いやー、若気の至りってやつね」


 たははと申し訳なさそうにエリベルは笑う。

 いや、笑うとこじゃないだろ。

 まったく。

 作ったも物には責任を持たないとダメだろ。

 製作者として。


 「…………ぷぅー」


 ん?

 なにやら、ぷるるが呆れたような声で突っついてくる。

 はは、可愛いな。


 『つーかさ、ソイツ……リアスだったっけ?どうやって探すんだよ?アテがあるのか?』


 「ああ、それについては問題ないわ」


 『え?』


 「多分そのうち向こうから、何らかのアクションを起こすでしょうからね」


 『え、どういう事だ?』


 「あの女、昔から何考えてるのか分からないけど、一つだけはっきりしてる事があるの。あの女、“ダンジョン”にだけは酷く執着してるのよ」


 『ダンジョンに?』

 

 「ええ、それも八大ダンジョンの様な強大で複雑なダンジョンには、特に執着していたわ。だから、新たなダンジョンが出来たとなれば、多分向こうから何か仕掛けて来る筈よ。私はそれを待ってるだけでいいわ」


 それを聞いて俺はひしひしと嫌な予感がした。


 『あの~、それって、つまり………』


 恐る恐る問いかける俺に、エリベルはにっこりと笑う。


「もちろん、手伝ってもらうわよ。報酬分、きっちりと働いてね」


 ですよねー。

 畜生。

 ああ、クソ。嫌な予感がするなぁ。

 こういう時の予感って、大抵当たるんだ。

 きっと、そのリアスってやつが、俺のダンジョンに来たとき、何かまた碌でもないことが起こりそうな気がする。

 俺はぼりぼりと頭を掻いた。


 「さて、アース、私の事は話したわ。そろそろ、アンタの事も話してくれないかしら」


 エリベルは、再びこちらを見る。

 

 『へ、話すって………何をだ?』


 なんかあったっけ?

 今の会話の流れで、俺が話す事って特になかった様な気がするけど……?

 ていうか、今の説明で終わり?

 なんか色々大事な部分が抜け落ちてる気がするけど……?


 それに俺が話す事なんてあったっけ?

 んー?と頭を捻るが特に何も浮かんでこない。

 もしかしてあれかな……?


 『まさか、エリベル……。お前、俺がまた保管庫の魔石を使った事に気付いて……』


 「違うわよ!」


 ドン!とエリベルは机をたたく。

 

 「ぷぴゅっ!」


 おい、大きな音を立てるんじゃない。

 ぷるるがびっくりして、震えてるじゃないか。振動で。

 可哀そうだろ。可愛いけど。

 らぶりー。


 「そうじゃなくて……いえ、それもあとできっちり追及するけど、今私が言いたいのはそう言う意味じゃないの!」

 

 『はぁ?じゃあ、なにさ?』


「……とぼけないでよ。もうここまで来て、隠し事なんてしなくてもいいでしょう?」


 すっと、エリベルは俺を指差す。


 「アース―――――――あなた、“元人間”でしょ?」


 確信を持った口ぶりでエリベルは言う。


 あ、そう言えば言ってなかったけ。


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