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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第五章 貿易と防衛

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6.地龍出る(※ただし本体は地の底)



 燦々と照りつける太陽。

 肌に触れる風。

 砂の発するかすかな匂い。


 ……………外だ。


 薄暗く、じめっとした地の底じゃない。

 二つの太陽が照らす、大地の上に俺はいる。


 『ああ、帰りたいなぁ……』


 いま俺が居る場所は、ファウード砂漠の西側だ。

 以前に、ドスが商隊を助けたって言ってた場所に近いな。

 向こうにサボテンがある。

 おお、流石異世界のサボテン、動いてる。

 珍しい景色だ………。


 『暑い……』


 ―――あの後、俺はエリベルの説得という名の脅迫を受け、しぶしぶ外に出ることを了承した。

 え?なんて言われたかって?


 頭の皮剥がされるのと、外に出るのどっちがいいって言われたよ。


 はは、実質一択だろ?

 もし断ったら、コイツ本気でやるからね。

 俺、過去にマジで腕の皮剥がされたんだから。

 そして、転移門を通り、外に出た。


 じりじりと肌を焼く太陽光。

 熱いし、辛い。

 何より日の光が痛い。

 俺は眩しい太陽が嫌いだ。

 汚れた心が浄化されるような気がして。

 そう思いながら、俺は歩く。

 俺の隣を歩くエリベルは、呆れ顔だ。


 「あのねぇ……。別に、この体はダミーなんだから、万が一何かあっても、問題ないでしょうが」


 そう言ってエリベルは、自分の体を触る。

 いつものスケルトンにローブの姿じゃない。


 そこに居たのは、生前のエリベルの姿。


 長い銀髪。吸い込まれそうな紅い瞳。雪の様な白い肌。

 服の上からでもわかる、はっきりとした凹凸のついた躰。

 特に胸部は驚異的な存在をこれでもかというくらいに主張している。

 具体的には歩くたびに揺れる。

 ブラしてないし。ちょっと浮き出てる。

 何がとは言わない。

 外見だけなら、間違いなくパーフェクトな美女だ。

 黒いローブ姿も相まって、ファンタジー映画に出てくる、妖艶な魔女を思わせる。


 まあ、中身は残念極まりないうっかり賢者(笑)だが。


 「なんか、馬鹿にされた気がするわ……」


 『気のせいだ』

 「ぷる」


 隣にいたぷるるが相槌を打つ。

 ぷるるも一緒。


 そう、今回の外出。

 何と、ぷるる同伴なのだ。

 外に出るメンバーは、俺、エリベル、そしてぷるるの三人。


 これはエリベルが申し出た事だ。

 多分俺を連れ出す為の切り札として用意していたのだ。

 ぷるるにお願いされれば、俺が断れないと知ってやがったのだ。

 渋る俺に、まるで仕込んでいたかのように、『私もいきたーい』と体を摺り寄せてきたのだ。

 こんなん断れるはずないだろうが!

 頭の皮剥がされるのも嫌だし。


 ちなみに、ベルクには、ダンジョンの深層で俺達の“本体”を監視してもらってる。

 万が一にも何も無い様に。


 それと、ぷるるだけは、ゴーレムではなく“分身”だ。

 正確には体の一部分。

 最近、ぷるるがおぼえた能力みたいで、“分裂”と言うらしい。

 読んで字のごとく、体を千切って、そのまま自分自身を増やすことが出来る能力だ。


 分身体は本体とリンクしており、互いの五感や記憶を共有できるそうだ。

 それを使い、体の約一割ほどを千切って、こうして一緒についてきてもらったのだ。

 もっとも、分身体は魔力が切れれば、消滅してしまうらしく、定期的に魔石を与えなければいけない。

 それでも、そこら辺にいる魔物よりかは遥かに強いわけだが。


 ぜぇぜぇと息を切らしながら歩くおれにエリベルは呆れた表情だ。

 

 「ていうか、ゴーレムですら外に出るのに抵抗あるわけ?どんだけ出不精なのよ?」


 『そう言ったってさぁ……。なんか、生まれてこの方、ずーっと地下に籠っていた所為か、外に出るって行為自体に抵抗を感じちゃって……』


 「……アンタもう、根っからの引き籠り龍になっちゃってるわね。」


 うん、否定できない。

 だって、生まれてこの方、外にいるよりも地下に籠ってた時間の方が長いんだから。

 引きこも龍。


 「ていうかさ、とりあえず、一言だけ言っていいかしら?」


 『なに?』


 じっと、エリベルは“俺の姿”を見る。


 「………………なんで、外に出るときの姿まで、人外の姿なのよ?」


 『良いじゃんか、別に』


 そう言われて俺は“今の自分の姿”をもう一度見る。

 黒い鱗の生えた腕。

 指先から延びる鋭い爪。

 腰から生えた長い尻尾。

 龍を思わせる爬虫類の頭部。


 ―――――蜥蜴人リザードマン


 それが今の俺の姿だ。

 と言っても、俺の場合、その蜥蜴人を更に野生に近づけた感じの姿だ。


 この世界には、人間のほかにエルフ、ドワーフと言った亜人が存在する。

 その中に、蜥蜴人と呼ばれる種族もいる。

 数こそ多くないが、普通に人間達の町にもおり、冒険者稼業を営む者だっている。

 珍しい姿かもしれないが、人間達と共存しているれっきとした亜人だ。

 

 それにこの姿、四足歩行も出来るし、あんまり元の姿と、違和感が無いんだよ。

 普段の俺を、人間サイズまで縮めればこんな姿になるんだろうな。


 まあ、人間からは完全にかけ離れているけど。

 外に出る分にはこれでも問題ない筈だ。


 『いや、仕方ないじゃん。憑代ゴーレムに触れたらこんな形になちゃったんだから』


 まあ、正確には人の姿になりたくなくて、あえてこうしたって部分が強いけど。

 だって、人の姿にしたら、間違いなく俺は前世の自分の姿になるだろう。

 …………それは嫌だった。

 それに今の俺は、地龍の姿に慣れ過ぎている。

 いまさら人の姿になるつもりなんてさらさらない。


 エリベル(人型ver)は溜息をつく。


 「はぁ……まあ、アンタがそれでいいなら、別にいいわよ。――――――――元の姿も見て見たかったのに」

 

 『え?なんだって?』


 最後に何か言ってたような気がするが、聞き取れなかった。

 

 「何でもないわよ。さ、行きましょう。先はまだ長いわ」

 

 そういって、エリベルは先を行く。

 あ、ちょっと待って。

 この姿で歩くのまだ慣れてないんだから。


 『ちょっと、待ってくれよ!』

 「ぷぅ」




 それから、しばらく砂漠を歩いた。

 はっきり言おう。

 疲れた。

 歩くの疲れた。

 まあ、本体は今もダンジョンの深層にあるんだけどさ。

 今の体が、ダミーだとわかっていても疲れるモノは疲れる。

 主に精神的な疲れだ。


 今はオアシスで休憩中。

 胡坐をかき、錬金で砂を加工したコップで水をくみ、口に含む。

 うん。うまい。

 この体での水分補給にはあまり意味はないが、精神衛生的な意味で、つい飲んでしまう。


 『なあ、エリベル。そろそろ説明してくれないか?』


 エリベルもコップに汲んだ水を飲みながら、俺の方を見る。

 うーん、無駄に美女だから、水飲む姿だけでも絵になるな。

 なんか、腹立つ。


 「―――何かしら?」


 『わざわざ、俺を外に出した理由だよ』

 

 わざわざ俺の外出用の移動手段まで、作って、ぷるるや脅しを使ってまで、俺を外に連れ出した理由。

 それが気になった。


「ぷー?」


 ぷるるが俺の脚に乗っかってくる。

 らぶりー!!

 あ、ヤバい。

 ぷるるが可愛すぎて、もう、どうでもよくなってきたかも………。


 「――――ああ、その事ね」


 エリベルはコップを投げすてる。

 地面に落ちたコップはさらさらと砂に戻る。

 

 「もう少しで目的地に着くわ。そこで話しましょう」


 『目的地?今から行く場所が関係してるのか?』


 「ええ。アンタに――――どうしても、見せておかなきゃけない“場所”よ」


 いつもと違う真剣みを帯びた口調で、エリベルは言う。


 『……ちなみに、それって後どのくらい?』


 「そうね、あと二時間くらいかしら?」


 遠っ!?

 ただでさえ慣れない砂場歩きで、疲れてるのに。

 ぷるる……俺もう疲れたよ。

 なんだか、とっても眠いんだ……。


 「ぷるー……ぷぅぷぅ!」


 ぷるるが触手を伸ばして、俺の体を支えてくれる。

 なんて健気ないい子なんだ。

 らぶりーらぶりー。

 癒される。

 最高だ。

 うん、俺もう少しだけ頑張ってみるよ。


 「いや、普通に頑張りなさいよ……」


 冷静なエリベルの突込みはスルーした。




 その後―――――。


 魔石を食べて、魔力を回復しながら、俺達は移動を続けた。

 道中は静かなものだった。

 ファウード砂漠は通行人が極端に少ないせいか、他の人間達に出会う事も無い。


 何度か、魔物の襲撃はあったが、大して強くは無かった。

 ここに生息する魔物は、殆どが初級か中級程度だしな。

 その位なら、今のこの姿でも、十分対応可能だ。

 まあ、倒したのはエリベルとぷるるだけど。

 俺は見てるだけ。

 戦わないよ。痛いし。


 「着いたわ。ここよ」

 

 そう言ってエリベルは、何もない砂漠のど真ん中で、立ち止まった。

 

 『…………何もないけど?』

 「ぷぅー?」


 「まあ、そうよね。“そう見える”様に細工してあるんだから」


 そう言ってエリベルは何もない虚空に手をかざす。

 そして、何事かを呟いた。


 すると、まるで飴細工の様に目の前の景色が“歪んだ”。


 『!?』

 「ぷ!」


 エリベルの目の前の空間だけが、ぐにゃりぐにゃりと歪んでいる。


 「さあ、入るわよ」


 エリベルは躊躇なく、その歪みに入ってゆく。

 

 『あ、ちょっと待ってくれ!』

 「ぷー!」


 俺とぷるるも遅れて、その歪みの中に入る。

 俺達が入った瞬間、再び歪みは収まった。

 

 『ふぅー、一体どういう仕組みになって………え?』

 「ぷー…?」


 俺の言葉は最後まで続かなかった。

 ぷるるでさえも、目の前の光景に息を吞んでいる。

 

 ――――何だ、この光景は?


 そこには、砂漠にはあまりに場違いな光景がそこに広がっていた。


 所々砕けた、石畳の地面。

 ボロボロになった白い建物。

 さらに俺達の後ろには白い壁が広がっている。


 砂漠には似つかわしくない、高い建築技術を思わせる廃墟がそこにあった。

 

 『お、おい、エリベル。ここは一体何なんだ?』


 そんな景色の中を、エリベルは躊躇うことなく歩いてゆく。

 まるで、勝手知ったる我が家の様に。


 「ここがどこかって?」


 くるりと、エリベルは俺の方を振り向く。


 「第零魔導研究所――――二百年前に私が作った施設」


 そして、とエリベルは続ける。


 「ここで、あの武器が――――“ダンジョン破壊”兵器が生まれたわ」


 その言葉に俺は衝撃を受けた。

 あの時の記憶が甦ってくる。

 ダンジョンを破壊され、死にかけたあの時の記憶が。


 エリベルは改めて俺の方を見る。

 その顔は何かを決心したかのような表情だ。


 「………そろそろ、話すべきだと思ったのよ」


 『何をだ?』


 「…………覚えてるかしら?私が、貴方にお願いした“三つ目の報酬”について。ダンジョンが完成したら話すって約束だったでしょ」


 エリベルの報酬。

 それはエリベルが俺のダンジョンのアドバイザーを引き受ける上で提示した三つの条件だ。


 確か――――俺自身の研究と、ダンジョン内に研究所を作る事。


 そして、“二百年前の後始末”………だったか?


 

 「詳しい話は、中でするわ。ついてきて」


 そう言ってエリベルは再び歩き出す。


 俺とぷるるは黙って、その後ろに付いていった。




 擬人化すると思った?残念、蜥蜴人でした!

 アースさんが人の姿になるわけないです。

 ぷるるが居れば外の世界も怖くない!


 ちなみに、憑代ゴーレムを使えば、番外編verの黒髪アンさんも再現可能ですが、本編でするつもりもありません。

 あしからず。



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