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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第四章 二度目のダンジョン

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16.疑似迷宮核と防衛機能

 

 中層ダンジョン、最下層ダンジョンの製作は順調に進んでいる。


 このままいけば、あと一か月もあれば完成するだろう。

 ダンジョンの完成も目前だ。


 「さてと、そろそろ防衛用の魔物を配置しないといけないわね」


 エリベルは不意にそんな事を言った。


 『防衛用の魔物?』


 俺は首をひねる。

 魔物なら既に、アンの子蟻達や、俺の造ったゴーレム、ユグル大森林の魔物達がいるじゃないかと。

 すると、エリベルは心底驚いた表情になった。


 「え、なに、アンタ?もしかして、トラップと、アンちゃんの子蟻達と森の魔物達だけで、ダンジョンの防衛が事足りるとでも思ってたの?」


 違うのか?

 俺はそう思っていた。

 それを察したのか、エリベルは深い溜息をついた。


 「アンタねぇ……いくらアンちゃんの子蟻達が数が多くても、三百層近くあるこのダンジョンの防衛全部を賄えるわけないでしょうが……。まあ、時間を掛ければ出来ない事は無いかもしれないけど、魔物の一種類しかいないダンジョンなんて、ただの狩場にしか、ならないわよ。そんなダンジョン下の下よ。直ぐに攻略されちゃうわ」


 『た、確かに……』


 森の魔物達も数は多いが、彼らはアンの子蟻達に比べれば圧倒的に数が少ない。

 そして、それはエリベルのアンデッドたちも同じだ。

 一階層、一フロアならば、バランスの良い防衛ラインを組むことが出来るかもしれないが、全階層となると流石に不可能だ。

 まあ、それだけアンの繁殖力が凄まじいともいえるけど。

 特殊環境に設置してる泥ゴーレムや熔岩ゴーレム達もいるが、それだっていくつかの階層だけ。

 確かに、ダンジョンの防衛を考えるのならば、全然戦力が足りない。


 …………これじゃあ、直ぐに冒険者たちに攻略されてしまう。


 俺はエリベルの方を見る。


 「じゃあ、どうやってダンジョンは冒険者を撃退するのかって言いたげな表情ね?ほら、さっさと、私の知識を検索しなさい。ダンジョンについての項目その三“ダンジョンに発生する魔物について”」


 言われて俺はエリペディアに検索を掛ける。

 えーっと、ダンジョンについて………あった、これか。

 ああ、成程。

 そういう事か。

 

 ―――ダンジョンに生息する魔物は、外部からダンジョン内に住み着いたものと、ダンジョン自身が生み出した魔物の二種類が存在する。

 ダンジョン自身が魔物を生み出す場合、そのダンジョンには、“迷宮核”と呼ばれる高純度の魔石が存在する。

 その魔石が、自らの防衛手段として魔物を生み出す。


 そう言えばそうだった。

 エリベルの遺跡を食べた時にそんな知識があったな。

 うん。

 すっかり忘れてた。


 「………アンタが私の残した遺産を有効活用していないのが、今の間でよーく分かったわ。はぁ……こんなのに、私の残した遺産が食い潰されただなんて……」


 エリベルは頭を抱えている。


 「ともかく、これで分かったでしょ?“迷宮核”と呼ばれる魔石は、自分を守るために防衛用の魔物を生み出すことが出来るの。まあ、以前のアンタのダンジョンの場合は、“迷宮核”が無くても、イレギュラー的に魔物が発生したみたいだけどね」


 『え?』


 「ぷるるんよ。あの子、アンタのダンジョンの異常な魔素濃度から自然発生したスライムよ。まあ、アンタは気が付いてなかったでしょうけど」


 『そうだったのか……?』


 そう言われて俺は、当時の事を思い出す。


 言われてみれば確かに、違和感はあった。


 土蟲などは、俺に連絡なく、すぐさま殺していたアンや子蟻達が、ぷるるを発見してもすぐに殺さず、俺に連絡をしてきたというあの状況。

 あれは、ぷるるが、ただのスライムじゃなく、俺のダンジョンで自然発生した故に殺していいかどう判断していいか迷い、俺に連絡したのだろう。

 そういう事だったのか……。

 全然気が付かなかったわ。


 だってその後は、ぷるるみたいにスライムとか発生しなかったし。

 いや……もしかして、俺が気が付いてないだけで他にも魔物が発生したりしてたのか?

 はは、まさかな……ないない。

 

 「あの子もあの子で、イレギュラー中のイレギュラーよ。“迷宮核”の無いダンジョンで発生し、その上、眷属になって数日のうちに“王級指定種”まで進化した異常個体。アンタやアンタの眷属は大概ぶっ飛んでるけど、その中でも、アンタの次に“異常”と言えるのが、ぷるるんでしょうね」


 ホントにここは飽きないわ、とエリベルは加えて言う。


 「まあ、ぷるるんの話は置いておきましょう。つまり、私が言いたいのは、このダンジョンに防衛用の魔物を生み出す“魔核”を用意しましょうって事。おーけー?」


 『ああ』

 

 こくりと俺は頷く。


 「それじゃあ、私の研究フロアに戻るわよ」

 

 俺はエリベルと共に、中層ダンジョンから、研究フロアへと移動するため、転移門を潜った。




 そして、研究フロアに到着した。


 「はい、それじゃあこれに魔力込めて」


 そう言って、エリベルは透明なガラス玉のようなモノを取り出した。

 かなりデカい。

 一メートルくらいはあるんじゃなかろうか。


 『エリベル、これは?』


 「さっき話した、“迷宮核”よ。と言ってもこれは、私が研究して作り上げた“疑似迷宮核”と言える代物よ。これにアンタの魔力を注ぎ込むことで、ダンジョン防衛用の魔物を生み出すわ」


 デカいガラス玉を擦りながら、エリベルは言う。

 とんでもない代物だな。

 これに魔力を込めるだけで、魔物が生まれるなんて反則もいいところだ。


 ていうか、いつの間にこんなの造ったんだ?


 「まあ、正確には、魔物を作り出すのとはちょっと違うけどね。これは、アンタの術式を自動でやってくれる魔道具って考えてくれればいいわ」


 『俺の術式?』


 「そう。この“疑似迷宮核”で作り出すことが出来る魔物は、ゴーレムとゴーレム・ホムンクルスの二種類だけ。普通の魔物、例えばオークやゴブリンなんかを作り出すことは出来ないの」


 『そうなのか?』


 「さすがに、そこまでは出来ないわよ。そもそも、“迷宮核”がどうやって魔物を生み出しているのかっていうのはいまだに解明できていないの。これは、アンタのゴーレムを作る魔術――“錬金”の術式――をダンジョンそのものに組み込み、自動で発動させる魔道具なのよ」


 エリベルは再びガラス玉に触れる。


 「これには、今までアンタが作ったゴーレムやゴーレム・ホムンクルス達の情報、この迷宮の全情報が入力されているわ。これにアンタが魔力を込めれば、こいつは、ダンジョンの魔力回廊を経由して、至る所にゴーレムを作り出すことが出来る。ただし、ゴーレム・ホムンクルスの場合は、別途に材料が必要になるけどね。アレは、術者の細胞を基盤として作り出されるゴーレムだから」


 成程。

 つまり、これに魔力を込めれば、一気に大量のゴーレムが作り出せると言う訳か。

 それも、デッサン型と違う戦闘用のゴーレム達がダンジョンの至る所に。

 すっげー便利。


 「勿論、アンちゃんや眷属たちは襲わない様に術式に組み込んであるから問題ないわ」


 まあ、確かに、防衛用に配置したゴーレムが、眷属たちを襲ってるんじゃ本末転倒だしな。


 『ところで、その造られるゴーレムって、どんな奴が出来るんだ?』


 「んー…、基本はランダムよ。アンタが今まで作ったゴーレム達の情報が入ってるから、それに似たようなゴーレムが作られる筈よ。回数を重ねるごとに核そのものが学習を繰り返し、より質の良いゴーレムを作り出してくれるようになるわ」


 なにそれすごい。

 俺も大概だけど、この賢者も自重ってものを知らないんじゃないだろうか?


 『わかった。んじゃ、早速魔力を込めるか………』


 俺は球体に触れ、魔力を込める。

 すると、凄まじい勢いで体中の魔力が失われてゆく。

 

 すると、透明なガラス玉の様だった“疑似迷宮核”はどんどんその色を変化させ、どす黒い真っ黒な球体となった。

 すっかり、俺の魔力は空になってしまった。


 『はぁ……はぁ……これで、良いのか?』


 「ええ、十分すぎるわ。」


 エリベルは“疑似迷宮核”を見て満足そうに頷く。


 「それじゃあ、“疑似迷宮核”―――――起動!」


 すると、疑似迷宮核は淡く光り出した。

 更に核から発せられる魔力が、このダンジョンに根付いてゆく。


 「無事に起動した様ね。これで、ダンジョン内の至る所にゴーレムが生み出される筈よ。見て見ましょうか」


 そう言って、エリベルは近くにあった極彩色の球体を寄せる。

 そこにダンジョン内の映像が映し出された。

 

 そこに映し出されたのはただのダンジョンの通路の壁。

 そこから、ぼこぼこぼこと何かが這い出てきた。


 シンプルな形、能面のような顔、必要最低限のパーツのみで構成された体。

 それは俺の造ったゴーレム達の中で、最も数が多く、そして最も弱い個体。


 ―――――――生み出されたのはデッサン型ゴーレムだった。

 

 『おぉ……』


 俺は思わず声が漏れる。

 映し出された画面には、次から次に生み出されるゴーレム達の姿が見える。

 動物の形をしたゴーレムや、魔物の形をしたゴーレムも次々に生み出されている。

 そのどれもが、かつて俺が作ったことのあるゴーレム達だった。

 なんだか、懐かしい気分になってくる。

 でも、心なしか、俺の造ったころよりも洗練されたデザインの様な気がする。

 くそぅ………いい仕事するじゃないか。


 「ふーむ……割合的にはデッサン型が一番多いわね」

 

 『まあ、デッサン型なら戦力としてではなく、作業用に使うことも出来るし、これはこれで良いんじゃないか』


 いざとなったら、武装させればいいし。

 生まれたゴーレム達は、ダンジョン内を徘徊している。


 ん?良く見れば普通のデッサン型とちょっと違うな?

 ダンジョンで生まれたデッサン型の方が少し大きいし、色も僅かに違う。

 これなら、見分けがつきそうだ。


 「うーん、まあ、そうね。まあ、疑似とはいえ“迷宮核”なんて造ったの初めてだし、色々データも取りたいわね。後で、何体か研究所に呼びましょう」


 そこで俺はふと思った。


 『あれ、でもこれって、また魔力を込めなくても大丈夫なのか?』


 ゴーレムを作れば、その分“疑似迷宮核”に込められている魔力は減る筈だ。

 減ればその分、俺がまた魔力を込めなくちゃいけなくなるんじゃないか?


 「ああ、その点は問題ないわ。作られたゴーレム達は、一定周期で再びダンジョンに吸収される仕組みだから。それに、最初にこれだけ魔力を込めて貰えば、後は勝手に増えてくれるわ。…………アンタの血のおかげでね」


 『え?』


 なんか、最後の部分が上手く聞き取れなかったんだが?

 要するに、もう魔力込めなくてもいいって事か?


 「まあ、これで防衛ラインは十分でしょうね。あとは、ダンジョンそのものを完成させればいいだけよ」


 『ああ、そうだな』


 何はともかく、ダンジョンが完成しないことには意味が無い。


 俺は魔石を喰って魔力を回復させた後、エリベルと共に転移門やトラップの設置に勤しんだ。

 あ、ちなみに、疑似迷宮核の配置場所は、勿論最下層フロアだ。

 新たに生まれたゴーレム達の助けもあって、俺達のダンジョンは更に猛スピードで構築されていった。

 





 ―――――そして、一か月後。


 ついに、ダンジョンが完成した。






 ……トラップ満載で一層一層の広さが馬鹿でかい上に、三百も階層がある時点で、防衛としては問題ないんだけどね。

 エリベルさんもどこかズレてます。

 

 次話で、第四章は終わりです。

 


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