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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第四章 二度目のダンジョン

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EX5.ユグル大森林の悪夢

 森の魔物たちのお話


 ユグル大森林。


 ファウード大陸の西側に位置する大陸最大の森である。


 広大な森の中には多種多様な植物が生い茂っており、魔物の数も種類も、大陸随一と言っていいだろう。

 また森には様々な霊薬やポーションの素材となる植物や、武器の素材となる魔物が数多く存在するため、冒険者もこぞってこの森を訪れる。

 森にすむ魔物の殆どは、最下級、下級、中級の魔物で、大きなへまさえやらかさなければ、中々良い狩場になる。


 この森で気を付けなければいけない魔物は四種類。

 

 デッド・スネイク

 レッド・モンキー

 レッサー・フェンリル

 グラトニー・スパイダー

 

 この四種だ。


 この四種はいずれもが上級、将級の魔物であり、熟練の冒険者であってもうかつに手を出すことは出来ない。

 レッド・モンキーとレッサー・フェンリルは群れで行動する魔物で、一匹見つければ、即座に撤退せよ、というのが冒険者の間の常識だ。

 無論、単独で行動するデッド・スネイクやグラトニー・スパイダーも甘く見てはいけない。

 デッド・スネイクはその巨体を保護色の様に背景と同化させ、音もなく忍び寄ることが出来る狡猾な魔物だし、グラトニー・スパイダーも、その猛毒を喰らえば、まず助かることは出来ないと言われる程の危険な魔物だ。


 ただ、何れの魔物もユグル大森林の奥地を生息区域としているため、深入りさえしなければ先ず出会う事の無い魔物だ。

 この四種を生態系の頂点として、ユグル大森林の食物連鎖は成り立っている。

 というのが、これまでの通説だ。



 だが、その通説は覆されることになる。


 

 最初にその異変に気付いたのはデッド・スネイクだ。

 その蛇はいつも通り、獲物を求めて、森の中を彷徨っていた。


 そして、一匹のキラーアントを見つけた。


 ―――――旨そうだ。

 

 蛇はそう思った。

 何せ目の前のキラーアントは、通常のキラーアントよりも一回り以上も大きい上に、魔力の密度も違う。

 実に食いがいがありそうだ。

 普段の蛇ならば、キラーアントの様な雑魚中の雑魚など放っておくが、これ程大きな個体ならば、餌として文句は無い。


 ―――――頂きます。


 そう心の中で言い、背景に同化しながら静かに、だが凄まじい速さで獲物へ喰らいつく。

 だが、大きく開けたその口は何も飲み込まなかった。

 ガチン!と音を立てて、その口は空を切る。


 ――――?


 蛇は不思議に思い、周囲を確かめる。

 するとすぐ近くに、先ほどのキラーアントがいた。

 

 ――――避けた?


 最下級であるキラーアントが自分の攻撃を?

 

 「キシャアアアアッ!!」


 しかもあろうことか、目の前のキラーアントは逃げることも無く、自分に向かって威嚇をしてくるではないか。

 強者として蛇のプライドは大きく傷つけられた。

 たっぷり弄った後で、喰ってやる。

 そう思った直後だった。

 

 周囲にキラーアントの気配が増えていた。


 デッド・スネイクは通常の蛇同様ピット器官と呼ばれる熱感知によって周囲を識別するのだが、デッド・スネイクの場合は更に魔力感知も加わっており、その感知能力はユグル大森林でもトップクラスだ。


 その感知能力が、次々にキラーアントの個体を識別する。

 

 どういう事だ?

 なぜ急に気配が増えた?

 相手はキラーアントだ。土の中に潜んでいたのか?

 だが、それで熱感知は防げても、魔力感知は防げないはず。

 

 だが、現に地中から次々とキラーアントの気配が増えてゆく。

 

 ―――――気配と共に魔力の波動すらも消せるのか?


 蛇が気づいた時には遅かった。

 蛇は何十と言うキラーアントの個体に囲まれていた。

 先ほどの個体と同じ、一体一体が濃密な魔力を持つ個体達に。


 だが、それだけでは終わらなかった。


 『――――これが、この森の頂点の一角、“デッド・スネイク”ですか。確かに、素晴らしい魔力の持ち主ですね』


 ぞわりと寒気がした。

 その方角を見る。

 その姿が見えた。

 

 ――――――アレは何だ?


 キラーアントではない。

 その姿形も異様だが、それ以上に、なんだ、この膨大な魔力は?

 その魔物は両手に二本の剣を持っている。

 その剣からも、凄まじい魔力を感じた。


 あり得ない。

 自分は、この森の頂点だ。

 一対一ならば他の三種族にも決して負けない自信がある。

 

 「シャアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」


 気づけば蛇は目の前の魔物に襲いかかっていた。


 ―――――殺らなければ殺られる!


 そう思った。

 魔力を滾らせ、肉体をバネの様にしならせ、猛スピードで蛇はその魔物に襲いかかる。

 

 『説得は………難しいようですね……よっと』


 ひょいっと体を捻り、黒蟻の魔物は、あっさりと自分の突撃を躱した。


 ―――――!?


 信じられなかった。

 蛇の全力の突進をあっさりと躱す魔物がいるだなんて。


 『――――あの女冒険者の槍の突きに比べれば、全然遅いです』


 レッド・モンキーもレッサーフェンリルも、グラトニー・スパイダーも自分の全力の突進をかわす事など出来なかったというのに。


 『しばらく大人しくしてもらいましょうか』


 そして、黒蟻の魔物はその牙を自分の体に食い込ませた。

 

 「ギッ………ッ!?」

 

 その激痛に蛇は気を失ってしまった。

 その時、蛇はようやく理解した。

 この黒蟻は捕食者だ。

 自分たちを喰らうモノなのだと。

 蛇は死を覚悟した。



 だが、蛇は生きていた。

 

 目を覚ますと、洞窟の前の広場に寝かされていた。

 更に驚くべきことに、その隣にはレッサーフェンリルや、グラトニー・スパイダーの姿もあるではないか。

 連中も大人しくしている。

 だが、レッド・モンキーだけは唯一ギャーギャーと騒いでいた。

 どうやら、奴らは群れごとやられたらしい。

 ひときわ大きな猿が喚き散らしている。

 ああ、アレは群れの長のバカ猿ではないか。

 知能が足りない、力だけで群れを従えている愚かな猿だ。


 『目が覚めましたか?』


 思念通話がした。

 見ると、先ほどの黒蟻の魔物が立っていた。

 

 蛇は疑問に思った。

 

 ―――なぜ殺さなかったのかと?


 黒蟻の魔物は答えた。


 『私たちは貴方方と争うつもりも、滅ぼすつもりもありません。ただ、出来る事なら、その力を貸してもらいたいと思ったのです』


 蛇は質問する。


 ――――何のために?


 黒蟻の魔物は答える。


 『私の主の為に。あの方をお守りするために』


 主を守る?

 これほどの強さを持つ魔物が従う程の魔物がいるというのか?


 蛇は興味がわいた。

 この黒蟻の魔物に、そしてその主に。


 ――――その主に会えるのか?


 蛇は訊ねた。

 黒蟻の魔物は答えた。


 『ええ、もう直ぐこちらに来ますよ。レッサーフェンリル達は協力を約束してくれたのですが、レッド・モンキーやグラトニー・スパイダーは服従なんて出来るか、その主に会わせろとの一点張りでして』


 成程と蛇は思った。


 レッサーフェンリルは犬の特性を強く引き継いでいる。

 強いものに従うのは彼らの習性だ。

 これほどの強さを持ったこの黒蟻の魔物や、その主であれば喜んで従うだろう。


 レッド・モンキーは………見れば、騒いでいるのは、あの長一匹だけだ。

 群れの連中は怯えを隠さず震えている。

 あのバカ猿は自分より強い存在と言うのが信じられないのだろう。

 この状況でも、喚き散らせるその胆力はある意味凄いが。

 

 グラトニー・スパイダーも我の強い魔物だ。

 今この場にいること自体が、奇跡と言えるほどの獰猛さを持っている。

 彼らにあるのは食うか食われるかの食物連鎖だけ。

 そんな彼らが従うとしたら、余程の化け物だけだろう。

 きっとこの場にいるのも、隙あらば喰ってやろうと考えているからに違いない。


 何はともあれ、蛇は静観することにした。

 どうやら、もうすぐその主とやらが来るらしい。

 

 はたしてどんな魔物なのか、蛇は大人しく洞窟を見ながら待っていた。



 それからしばらくして―――


 洞窟の奥が光った気がした。

 どうやら、向こうの主とやらが到着したらしい。

 そして、その瞬間だった。


 ――――――――っ!!!!????


 蛇は戦慄した。

 あり得ない程の莫大な魔力。

 尋常じゃない程の重圧。

 

 ――――――なんだ、これはっ!?


 その魔力は余りに異常だった。

 まるで巨大な濁流の中に居るかのような感覚。

 身動きもとれず、ただ圧倒的な恐怖だけが湧き上がる程の濃密な魔力。


 一瞬で死を覚悟する程の、圧倒的な力の差。


 悟ってしまった。

 その余りの格の違いに。

 見れば、他の魔物達も大人しくなっていた。

 あれ程喚き散らしていた猿すらも、口をふさぎ恐怖に震えている。

 その表情にはありありと恐怖と後悔が浮かんでいた。


 蛇も洞窟から目を離すことが出来なかった。

 みな恐怖に震えながら、自然と茂みの中へと体を隠した。

 隠れるので精一杯だった。“逃げる”という選択肢すら思い浮かばなかった。



 そして、圧倒的な恐怖の権化が、ゆっくりと洞窟の中から現れた。

 



 


 

 当の本人は、慣れない土地で知らない魔物に会うのでドキドキしてた。

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