4.資源の有効リサイクル
とりあえずその日は、魔石をみんなで食べて寝た。
他の奴らもダンジョン候補地の調査で疲れていたんだろう。
意見を言うやつはいなかった。
そして、次の日。
本格的なダンジョン製作の為の下準備に取り掛かった。
新しい居住地の視察だ。
アン達からすでに映像が送られてきているが、きちんとこの目で見たい。
住み心地は大事だ。
前回は穴掘って適当に作っただけだし、今回はきちんと下調べをしてから作る事にしよう。
エリベル達と共に中層へ向かった。
久々にやってきたエリベルの遺跡。
と言っても壁や天井もボロボロだ。
まあ、あのブレス喰らって原型が残ってるほうが凄いのか。
ところどころに修繕の跡がみられる。
「儂が不眠不休で直したんじゃよ……。ふぅ~~~……」
どこか疲れた感じで、ベルクが言った。
あれ、そう言えばこいつだけ、寝ないでどっかに移動してた記憶があるな。
もしかして徹夜で修理してたのか?
「ふふ……この感じも久しぶりじゃなぁ。………生前のエリベル様の人使いはもっと凄まじかったぞ。……儂は何度過労死するかと思ったことか……ふふ………ふふふ」
徹夜明けの様だ。
……お疲れ様です。
そりゃテンションもおかしくなるわ。
目の下にクマも出来ている。
ゴーレムなのにクマが出来るって……。
あ、そっか。ベルクはどっちかと言えば、ウナ達と同じゴーレム・ホムンクルスに近いんだっけか?
相当こき使われたらしいな。
もろブラック企業ですね。
話し合いの時も眠そうだったし。
『というか……?』
俺は周囲を見渡す。
………何だろうか、この気配?
何やら不思議な魔力の気配があちらこちらからする。
ゴーレム達の気配じゃないな。
敵意は感じないけど……。
エリベルが転移門の方へと誘導する。
「あ、そうだわアース。とりあえず、これ、新しい労働力ね」
そう言ってエリベルはぱちんと骨の指を鳴らす。
次の瞬間、ぼこぼこぼこぼこぼこと地面から大量のスケルトンたちが現れた。
!?
次いで、壁から出てきたのは大量の青い火の玉。
おばけぇっ!!。
『うわぉっ!!!』
思わず後ろに下がってしまう俺。
それをエリベルは呆れたような目で見てた。
「………なんで地龍が、レイス如きに驚いてるのよ……?」
『え……?』
そう言われて青い火の玉を見る。
あ、ホントだ。
これ、エリベルの資料にあったレイスって魔物だ。
アンデッド系で階級は最下級。
はっきり言って、弱い。
ちなみにスケルトンはその一つ上で下級だ。
こちらも弱い。
エリベルもそうだけど、なんでリアルな骸骨ってこんな気持ち悪いんだろう。
ていうか、レイスが怖い。青い火の玉の中にうっすら顔の様なものが見える。
怖っ。
『な、何だこいつら?』
次々に現れるスケルトンとレイス。
スケルトンの数は、ざっと見積もって百体近く居るんじゃないだろうか?
でも、レイスに至っては百できかない。
千体以上いるんじゃないか?
天井を埋め尽くさんばかりの青い火の玉。
その怪しい光が一斉に俺達を照らしている。
「この間の戦いでの戦死者たちよ。ボルヘリック王国のね。ブレスで殆どの死体は消滅しちゃったけど、それでも全部が消滅したわけじゃないわ。残った死体をスケルトンとして加工したわけ。ベルクが頑張って肉を剥いでくれたわ」
なんてことの無い様にエリベルは言う。
ちらっとベルクを見ると「頑張ったんじゃよ~ふぉふぉふぉ」とおかしな笑い声をあげていた。
お疲れ様です。
「あと、死体は無いけど、魂は残ってたみたいだからね。レイスの数は相当なものになったわ。多分六千はいるわね。このダンジョンは壊れていても魔素濃度が高いから、魔物化するのが随分と早かったみたいね。一体の死体でスケルトンとレイスの二体が造れるなんてお得よねー」
『………………』
おい、それでいいのか、元人間?
人間としての倫理観とかはないのだろうか?
まあ、ブレスぶっ放した俺が言うのもなんだけどさ。
そんな俺の視線を察したのか、エリベルは言う。
「言っとくけど、私に善悪や倫理観説いても意味ないわよ?研究にはそんなの邪魔なだけだしね。私は使えるものは何でも使う主義。人だろうと魔物だろうと関係なし」
『別にどうこういうつもりはねえよ』
俺は改めてスケルトンとレイスの群れを見る。
エリベルの催眠治療が無ければ、今頃俺は発狂してただろうな。
これだけの数の人間を殺したんだから。
薬の後遺症もあってか、気分は滅入るが、罪悪感などで押しつぶされるという感じはしない。
正直助かった。
「こいつらはみんな、アーク・スケルトンである私の命令に従うわ。これからのダンジョンの労働力として役立つでしょうね」
『そうか。でも戦力としてはそんなにあてにはならないか』
レイスもスケルトンも共に弱い魔物だ。
通常のキラーアントやスライムよりもちょっと強い程度。
戦力としては期待できない。
「その点は問題ないわよ。………後でアンタに頑張って貰うから」
『え、なんか言った?』
なんか語尾が聞き取りづらかったんだけど?
「何でもないわよ。まあ、今は先に、新しいダンジョン候補地の視察に行きましょうか」
『そうだな』
俺はもう一度スケルトンとレイスの大軍を見る。
これが後に、不死の大軍勢として、ダンジョン内でもアンの子蟻達に並ぶ一大勢力になるのだが、それはもう少し先の話だ。
そして、俺達は転移門に到着した。
『とりあえず、最初の候補地はここかな』
記憶送信でエリベルに行きたい場所の映像を送る。
トレスとぷるるが送ってきた鍾乳洞の遺跡。
まずは、ここを見て見たい。
他にも何箇所もあるけど、とりあえずここかな。
「おっけー、それじゃあ行きましょうか。ここは確かトレスちゃんとぷるるんが先行してるわね。二人はもういってるはずよ。アース、転移門に魔力を込めて」
『はいよ』
転移門に魔力を込める。
直ぐに転移門は輝き始めた。
よし、それじゃあ視察に行くか、新たなるマイホーム候補地へ。
転移門の光が俺達を包み込み、俺達は新天地へと転移した。
………ところで、エリベルはぷるるの事を、ぷるるんって呼んでるのか。
……可愛い呼び方じゃねぇか。
転移の中俺はそんなどうでもいいことを考えていた。
転移が完了した。
光が収まり、周囲の景色が見えるようになる。
へぇ、意外と明るいな。
光魔石が照らす鍾乳洞はエルド荒野に劣らずの圧巻の景色だった。
すげー、これも世界文化遺産とかに登録されてもおかしくないわ。
あ、ちょっと離れたところにトレスとぷるるが居た。
相変わらず可愛い。
らぶりー。
「あ、お父―さん」
「ぷるー」
二人もこちらに気付いたようだ。
近づいてくる。
「ここ、すっごく広いよ!でも静かで、魔物とかはいないみたい」
「ぷるー」
へぇ、そうなのか。
確かに魔力感知を発動させるが、魔力の波動も、魂の波動も感じない。
『なあ、エリベル、そう言えば、ここってどこなんだ?』
今更ながら場所を聞いていないことに気付いた。
「ここはファウード大陸の北に位置するアッド山脈の地下よ。元々は洞窟だったんだけど、私がダンジョンに利用しようと思って、出口をふさいだのよ」
ああ、成程。だから他の生き物がいないのか。
候補としては悪くないな。
とりあえず、掘ってみる。
あ、魔石発見。
ぼりぼりぼり………ごくん。
………………うーん、微妙。
不味くは無いんだけど、美味くもない。普通の魔石だ。
他にもいくつか魔石の気配はするけど、多分どれも似たり寄ったりだな。
エルド荒野産に比べると、かなり劣る。
やっぱあの土地が特別だって事か。
「とりあえずは悪くは無いでしょう?それじゃあ、次に行きましょうか」
『ん、ああ、そうだな』
まだまだ候補地はあるんだ。
とりあえず一通り見てからでもいいだろう。
「それじゃあ、トレスちゃん、私たちは行かなきゃいけないから、お別れのハグしましょう!さあ、お姉さんの胸に飛び込んでおいで!骨だから胸ないけど!さあっ!」
両手を広げるエリベル。
「や!」
「ぷ!」
「そんなっ!?」
だが、トレスとぷるるはこれを拒否。
さっさと二人で、奥へと行ってしまった。
拒否する姿も癒されるわー。
エリベルは四つん這いで落ち込んでる。
「どうして……?」
いや、こうなる事は目に見えてただろ?
学習しろよ?
何回拒否られてると思ってんだよ?
とりあえず、落ち込んでるエリベルはスルーして、次の候補地に向かうため、俺は再び転移門に魔力を込めた。
おーいエリベル、早く来てくんない?
エリベルは四つん這いのままぽつりと独り言を呟く。
「…………すげないトレスちゃんも可愛いわねぇ」
ぐふふ、と言う非常に気持ち悪い声が聞こえてきた。
訂正、全然落ち込んでなかった。
こいつもブレねぇな。
とりあえず、エリベルを引きずって、俺達は次の場所へ視察に向かった。
次はアンの居る大森林だ。
エリベルさんはアンデッドなので睡眠は不要です。
なので、それに付き合わされているベルクさんは、あの戦いの後からずっと寝ておりません。メンテナンスも無しです。
ブラック企業も真っ青のオーバーワークです。
そりゃテンションおかしくなるわ。




