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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第四章 二度目のダンジョン

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2.甦る我が愛しの手足

 あれから三日。


 俺は特にすることも無く――――というか動く事も出来ないので―――ひたすらエリベルから送られてくる映像を見て暇をつぶしていた。

 深層はとても静かだ。


 アンだけじゃなく、ウナやドス、トレスやぷるるたちも新天地の下見に駆り出されているようで、今このダンジョンには最低限の人数しかいない。

 

 そんな人数で大丈夫かと思うかもしれないが、意外と大丈夫の様だ。


 エリベルが、俺の造った鳥型のゴーレム・ホムンクルス達に監視機能を付けて、エルド荒野内や境界付近に放っているのだ。

 何か異常があれば、鳥たちがすぐにエリベルに信号を送る手筈になっている。

 それに大抵の魔物はアクレト・クロウや白飛龍が恐ろしくてこの荒野には近づかないし、その二種も協定があるから俺達に害は加えない。

人間達も、あれ程の犠牲を出したのだし、しばらくはやって来ないだろうというのが、エリベルの見解だ。


 だから、俺はひたすら送られてくる映像を見ながら、新しいダンジョンのアイディアを考えるだけ。

 でも、暇だー。

 入院患者とかってこういう気持ちなのかな。

 動けないってホント辛い。

 あ、また映像が送られてきた。

 

 『お、この地下空間はいい感じだな。この岩や鍾乳洞の感じ……実に旨そうだな』


 送られてくる映像は、殆どが洞窟や地下空間だ。

 この大陸にあるモノや海を越えた別の大陸にあるものまで、その種類や場所は様々。


 しかし、エリベルのヤツ、どうやってこんなに大量の候補地を見つけ出したんだろう?

 後で聞いてみるかな。



 たまにトレスやぷるるがピースしたり、ポーズを取ったりしている映像も送られてくる。

 らぶりー。

 癒されるわー。

 トレスもぷるるも意外と楽しそうだ。


 なんか、あの戦い以降、トレスが妙に暗い時があるけど、この分だと大丈夫そうだな。


 あー暇だ。

 ………昼寝でもしようかな。

 まだ、昼前だけど。

 そう思ってたら、なんかどたどたと走る音が聞こえてきた。

 それに、この魔力は………。


 「はーい。アース、生きてるかしら?」


 声がした方を見る。

 エリベルだ。

 なんだかすごいドヤ顔をしている。

 これはもしや……。


 「アース、喜びなさい!アンタの“武装化”を解除する方法が完成したわ!」


 どーんという背景文字が見えそうな程に、エリベルは偉そうに言った。

 非常にウザったいが、その発言は素晴らしかった。


 『ま、マジか……っ!?』


 思わず体が動いてしまう。

 ヒュガガガガガガッッ!!

 あ、地面が割れた。

 そのまま、爪撃がエリベルの横をかすめる。


 「ちょっ!?嬉しいからって体動かさないでよ!危うく死ぬところだったわよ!」


 『す、すまん………』


 いかん。あまりの嬉しさについ動揺してしまった。

 慌てて頭と腕を下げるが、その瞬間に――

 ズドドドドドドドッッ!!!!

 再び爪撃発射。

 おぉう……壁の一部が抉れて、深層の端っこまで見えてますわ……。

 我ながら凄い威力。

 あ、エリベルの肩かすってる……。


 えっと、わざとじゃないんですよ?

 ホントです。


 エリベルはにこっと笑う。

 いや、骸骨だから表情無いんだけど、なんか笑ったように見えた。

 滲み出す黒いオーラ。

 怒ってる。めっちゃ怒ってらっしゃる……。

 

 「…………このクソ駄龍、解剖されたいのね?そうなのね?とりあえず、腕斬り落としましょうか?危ないわよね、それ。四肢切り落として達磨龍にしてあげましょうか?」

 

 即行土下座。

 ホントすいません。

 ゆっくりと俺は顔を上げる。


 『で、でも本当なのか?俺の武装化解除できるのか?』


 話題チェンジ。

 話を逸らそう。


 「ええ、マジもマジ。大マジよ。これを見なさい!」


 話題チェンジ成功。

 チョロいわ、賢者。


 そう言ってエリベルが目の前に突き出したのは、謎の液体の入った小さな試験管。

 中に入っている液体は緑色で、小さな気泡が浮き出ている。

 見た目は完全に怪しい薬だ。


 「これが、私が開発した武装化を解除してくれるポーション“戻るぜX”よ!」


 『栄養ドリンクみたいな名前だな』


 非常にダサいネーミングセンスだが、今はどうでもいい。


 「栄養ドリンク……?」


 『あ、すまん。何でもない。それで、その……“戻るぜX”?で、俺のこの体は治るわけか?』


 「ええ、理論上はね。この液体は“錬金”の魔素構成作用を逆算して、変動値と変動後の魔素を弾きだし、それを対象の魔力を媒介に還元させることが出来るんだけど、その為に材料として―――――」


 エリベルの小難しい説明が続くが俺にはさっぱりだ。

 地龍の背骨やら、ドラゴンアップルの種やら、なんか色々混ぜて作ったらしい。

 とりあえず、それを飲めば戻るってことでいいんだよな?


 『何でもいいから、早く飲ませてくれよ?こっちはかゆい時に背中も掻けないし、早く戻りたいんだ』


 「ちっ、これだから魔術と私の偉大さを理解できないバカは……私の説明を最後まで聞かずに遮るなんて……。これは飲むタイプの薬じゃなくて、かけるタイプの薬なのよ?」


 『え?』


 そう言ってエリベルは俺の両手両足に一滴ずつ“戻るぜX”を垂らした。

 そして、効果はてきめんだった。


 淡い光と共に、俺の腕が、足が、少しずつだが武装化する前の状態へと戻ってゆく。

 なんかすごい不思議な感覚だな。

 ぼこぼこぼこぼこと音を立てて、元の体に戻っていくが、全然痛くない。

 

 そしてしばらくして、俺の手足は完全に治った。


 『お……おぉぉ……』


 軽く手を振ってみる。

 衝撃波も斬撃も飛ばない。

 軽くステップを踏んでみる。

 クレーター出来ないし、地震も起きない。

 歩いてみる。

 地割れも起きないし、地面も抉れない。


 完璧だ。

 俺のボディーが戻ってきた。

 背中が掻ける。地面が掘れる。


 あぁ………俺は、自由だ。


 『エリベル………俺は今日、お前のことを初めて本気で凄いと思ったよ』


 「あっそう。今まではどう思ってたのか、知りたいわねぇ。事と次第によっては今すぐここで、アンタを保存液につけて標本にしてあげてもいいんだけど?

ていうか、この私にまず一言、お礼は無いわけ?アンタの武装化を直してやった賢者様に対して、お礼は無いわけ?ねぇ?本来なら腕斬り落として、再生魔術をかけてやってもよかったのよ?そんな方法を取らずに、きちんと治してあげた私に対して、まず一言ないわけ、ねえ?」


 『すいません、私が悪う御座いました。賢者様、貴方様のおかげで私は再び手足を元に戻すことが出来ました。賢者様万歳、賢者様マジ最高』


 即行土下座。

 マジすいませんでした。

 そして有難う御座います。

 

 「うむ、そう言う殊勝な態度は嫌いじゃないわ。私は褒めて伸びるタイプのスケルトンなのよ。もっと私を崇めなさい」


 すぐさま上機嫌になる賢者(骨)。

 賢者チョロいわぁ。

 天才なのに、なんて残念な人なんだ。


 「さて、アース。武装化も無事治ったことだし、眷属の皆を呼び戻すわよ」

 

 『お、治った記念に食事会でもするのか』


 掘るぜぇ、めっちゃ魔石掘るぜぇ。

 今なら、何百個でも魔石が掘れるからな。

 腹減ってるしな。


 「アホか!これからの事について話し合うんでしょうが!あんた今ダンジョンがどういう状況か忘れたわけ!?」


 あ、そうだった。

 いま俺のダンジョンは絶賛崩壊中だったわ。

 もう一度人間達に攻め込まれないうちに、新しいダンジョンを作るんだった。

 腕とか元に戻ってすっかり舞い上がってたわ。


 「送っておいた映像は見たでしょ?さっさと、ダンジョン製作に取り掛かるわよ。眷属たちを呼んで打ち合わせをするわ。私とアンタで全部決めてもいいんだけど、現場の意見も聞いておきたいのよね。実際に働いてもらうのはアンちゃん達なんだし」


 『うーん、確かにそりゃそうか』


 アン達に思念通話を送る。

 どうやら、みんなダンジョンに戻って来てたみたいだ。

 全員からすぐに深層へ向かうと返信があった。


 『多分、数分もあれば、みんなここに来ると思う』


 「うん、おっけー」


 さて、それじゃあ皆が来るまでに魔石でも掘ろうかな。

 リハビリも兼て。

 ざくざくざく………おぉ、出てきた出てきた。

 これだよこれ。これが食べたかったんだよぉ……。

 地面の中から現れた超高純度の魔石。

 さっそく一つ頂こう。


 ばりん、ごりごりごりごり………ごくん。

 あぁ、美味い。

 濃厚な魔力の味が口の中いっぱいに広がる。

 最高だわ。

 

 「あ、アース、私にも一個頂戴。流石に疲れたわ」


 『はいよ』


 俺はエリベルに魔石を渡す。

 まだまだ一杯あるんだ。


 「う~ん、相変わらずの純度ねぇ……本当に不思議な場所ね。こんな純度の魔石がこんな短いサイクルで形成されるなんて……」


 『そういや、前にもそんな事言ってたな』


 「ええ、この荒野の魔石の生成サイクルは異常としか言いようがないのよね。ねえ、アース、アンタ魔石が通常どれくらいの時間で作られるか分かる?」


 なんてことない質問の様に聞いてくる。

 そんなの分かるわけないじゃん。

 んー、でも俺が今まで掘ってきた魔石とかで考えてみると……。


 『二~三日くらいか?』


 「三十年よ。通常この純度の魔石が形成されるには三十年以上の時間が必要だわ」


 ざんじゅ……っ!?


 『魔石って出来るのにそんなに時間かかるのか!?』


 「あくまで通常のサイクルならね。普通の魔石だって、だいたい出来上がるのに一年くらいはかかるんだから。ここはそのサイクルが異常に短いわ。魔素濃度も異常に高いし。私が生きてた頃は、普通だったし二百年の間で何かあったのかもしれないわね……。これもあとで調べておこうかしら」


 ま、今はいいかと、エリベルは再び魔石を食べ始めた。


 『そういや、エリベル。新しいダンジョンなんだけどさ、どんなダンジョンにするとかって考えてるのか?』


 「まあ一応はね。つーか本当はアンタが考えなきゃいけない事でしょうが」


 『いやぁ、まあね。でも、ほらアドバイザーなんだし、どんなふうに考えてるかを聞きたい訳でして』


 エリベルは頭を掻きながらため息をつく。

 ホントすいませんね。ダメな龍で。


 「転移系ダンジョン」

 

 『へ?』


 ぽつりとエリベルが言う。


 「だから転移系ダンジョンよ。もう二度と、ダンジョン壊されたくなんてないでしょう?」


 『あ、ああ』


 「だったら―――あ、アンちゃん達も来たみたいね。続きはみんなと一緒に話しましょうか」


 見れば、アン達が来ていた。


 さて、それじゃあ二度目のダンジョン製作といきますか。


 『戻るぜX』 製作者エリベル


 アースの武装化を治すために、エリベルが三日かけて作った霊薬。

 錬金により構成された物質を還元し、錬金が起きる前の状態へと復元する。ただし、今のところはアース限定。 

 地龍の背骨以外の材料は、ベルクがエリベルのダンジョンより調達。

 価格にすれば、この霊薬一本でこの世界の騎士十人の生涯賃金を軽く上回る金額になる。

 ちなみにエリベルは、この薬をさらに研究して、その効果範囲を広めようと画策中。

 

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