番外編『地龍が見た夢の内容を色々改竄しつつ文章化してみた件』
ご注意
これは以前閑章にて、地龍が見ていた夢の内容を第三章までの登場人物を加えてアレンジしつつ文章化したものです。
そのため、擬人化、キャラ崩壊、世界観崩壊、テンプレ、パロディー等の要素を多分に含んでおります。
その事をよく念頭に置いてお読みください
時は戦国乱世の時代。
世界最高の履物と食べ物組み合わせとは何か?
その答えを巡り、エルド下町では様々な勢力が台頭しては衰退を繰り返し、血で血を洗う泥沼の戦場と化していた。
現在台頭している勢力は二つ。
鯖味噌網タイツ派のゴブリンとカニミソニーソックス派のオーク達だ。
既に両軍ともその数は膨れ上がっており、いつ抗争が起こっておかしくはない。
そうなったならば、きっとご近所のスーパーから鯖味噌とカニミソの缶詰は消えてなくなるだろう。網タイツとニーソックスも。
物騒な世の中になったものだ。
そもそも、なんで鯖味噌網タイツやカニミソニーソックス?という、野暮な疑問は置いておこう。
なぜなら、ここは異世界なのだ。
地球の常識とは違うのだ。
だったら、何があっても不思議じゃない。
これは、そんな戦場と化した下町を舞台にした愛と友情と殺戮の物語………。
「へっへっへ……ありがとよぉ、地龍の兄ちゃん……コイツは頂いていくぜぇ」
「俺達で美味しく頂いてやるぜぇ、ヒャハハハ!」
「まぁた来るぜぇ……首ぃ洗ってまってなぁ……ククク……ッ!」
『まいどありー』
両手いっぱいに、つくねのパックを入れた袋を持って、男たちは満足そうに店を出て行った。
俺は、地龍のアース。
下町の焼き鳥屋のせがれだ。
といっても、俺はつくねしか焼けない。
だってこの爪じゃあ、どうやっても肉がミンチになってしまう。
そもそも地龍の俺が、まともに焼き鳥なんて焼ける筈が無い。
と言う訳で、俺の店で出している焼き鳥はもっぱらつくねだけだ。
両親は俺を生んですぐに失踪しており、知り合いの白飛龍であるグウィブさんに後見人になって貰いながら、のんびり店を切り盛りしている。
と言っても繁盛はしていない。
まあ、つくねしかないしね。
当たり前だ。
さっき大量に買っていったのは『黒ハイエナ老人ホーム』という介護老人施設の職員さん達だ。
なんでも、俺の作るつくねが施設の利用者たちに好評らしく、ひいきにしてもらっている。
常連なんて、あの人達くらいのもんだ。
まあ、他にもスケルトンなのに焼き鳥好きの研究者とか、スライムなのに なぜかフリフリの幼女とかが買いに来るけど。まあ、それは置いておこう。
あ、ちなみにさっきの来てたモヒカンさんは施設の園長さんだ。
この間、二人目が生まれたらしい。
『はぁ~……眠い……』
店は赤字でも問題ない。
俺は趣味でフィギュア作りをしているのだが、そのフィギュアがネットで良く売れるのだ。
え?焼き鳥は出来ないのに、なんでフィギュアは作れるのかって?
それとこれとは別。やる気スイッチ。
正直コッチの方が本業じゃないかって思うくらいによく売れる。
特に最近は、『動く千手観音人形1/100スケール』が人気だ。
魔石をふんだんにあしらった自信作で、飛ぶように売れている。
あ、魔石は庭から掘れば、いくらでも出てくるので、経費はほぼタダだ。
楽してお金稼ぐって最高。
あー……このまま、店畳んじゃおうかな……。
そろそろ“アイツら”も鬱陶しくなってきたし……。
そう思いながら、だらだら某週刊少年誌を読んでいると、勢いよく店のドアが開かれた。
あれ?
お客さんかしら?
そう思い、ドアの方を見る。
するとそこには、黒髪の美少女が立っていた。
十人が十人振り返るであろう美少女。
その真っ黒な、それでいてどこまでも深く澄んでいる瞳は真っ直ぐに俺を見ている。
その右手に求人雑誌が、そして左手にはなぜか鯖味噌塗れの網タイツが握られている。
生臭い。
ボタボタと味噌が床に垂れてる。
汚ね。
…………なに、この人?
彼女の薄桃色の唇がゆっくりと開く。
「――――――問おう、貴方が私の店長か?」
左手に持った鯖味噌塗れの網タイツを俺に差し出しながら、少女は言った。
『……………………は?』
フリーズ。
時間が止まったかのような静寂。
結論。
頭のおかしい人だ。
『あ、不審者ですか、通報しますよ?』
思念通話を警察へ発信。
「あ、ちょっと待って下さい!あの、私アンって言います!バイトを、このお店でバイトを探してるって求人誌で見て……それで……」
黒髪の美少女、えーっとアンさん?は突然必死になって弁明してくる。
一気に口調が変わった。
『バイト?』
そんなの募集してないよ?する必要ないし。
だってバイト雇ったら、俺が人と会話しなきゃいけないじゃん。
やだよ、面倒くさい。
俺が普通に会話できるのなんて、さっきの人達位だぞ。
「ほら、ここです!ここにこのお店でアルバイト募集中って書いてあるんです!」
そう言いながら俺は彼女が持ってきた、求人雑誌を見る。
『マジか……?』
確かに、俺の店が載ってた。
…………ん?雑誌に載ってる、この思念通話番号………見覚えがあるな。
『………グウィブさんか』
あの人、何勝手なことしてんだ。
すぐさま思念通話を送る。
すると一言。
――――もっと他人と会話をしなさい。
とだけ、返ってきた。
ちくしょう。
「というわけで、私を雇って頂けないでしょうか?」
『えー……』
面倒くさい。
だるい。
眠い。
俺は必死に頭をめぐらせ何とかこの美少女に帰って貰えないかと考える。
『えーっと、そもそも、アンさん……?は、こんな店にバイトしに来ようなんて思ったの?』
「それは………」
もじもじと黒髪の少女は言いよどむ。
何か言いにくい理由でもあるのか?
しかし、もじもじする姿も可愛い。
鯖味噌の網タイツさえ持っていなければ。
「私は………かつて、貴方に命を救われたのです」
『………………は?』
「あれは、数日前の事でした。私はとある理由から、家を追い出され、空腹でこの町を彷徨っていました……。そして、この店の裏路地で倒れて、あぁ…もうこのまま死ぬのかなと思った、その時でした。
貴方が、私に食べ物を恵んでくれたのです。あの時のつくねの味……。私は忘れることが出来ませんでした。だから、求人雑誌を見た時、運命を感じました。そうか………私はこの店で働くために生まれてきたんだって……!」
恍惚とした表情でアンさんは語る。
そして、予想以上に理由が重たい。
でも……。
『………そんな事、あったっけ?』
全然身に覚えがない。
そもそも、こんな美少女、出会ったらまず忘れる筈が無い。
作り話か?
でも、彼女を見ているととてもそうは思えない。
『な、なぁ……?それっていつの話?』
「三日ほど前ですね」
『そんな最近っ!?』
えっと……三日前か……。
その日は、確か燃えるごみの日だったな。
廃棄するはずだったつくねを、ゴミ袋にくるんで、裏路地に捨てに行って…………。
あ、そういえば、あの時裏路地で動く、黒い影を見たんだ。
シルエットが虫っぽかったから、俺はてっきりゴキブリだと思って、その黒い影目がけてゴミ袋を放って、さっさと帰ってきて………。
それくらいしか思い出せない。
どう、記憶をたどっても目の前の美少女にたどり着かない。
『………………………ん?』
その時、俺はある事に気が付いた。
彼女の頭に何かついてる。
なんか………こう……“触覚”の様なものがついてる。
『なぁ、頭についてるそれ何?』
「へ?これですか?触覚に決まってるじゃないですか。私はインペリアル・アントですし」
『あー、成程触覚か。確かに蟻なら触覚が付いていてもおかしくはって……ええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?』
インペリアル・アントっ!?
えっ!?ええええっ!?
『……えっと、人間……だよね?』
「いいえ、違います。これは、今流行のギジンカと言うやつらしいです。なんでも、“バンガイヘン”ならこういうのもありかなと、変な豚がぶつぶつ言ってました」
『変な豚?』
「はい。変な豚です。そして、その豚が私に、『あの地龍に恩返しがしたいのなら、この魔石を食べなさい。そうすればきっといいことが起こります』と言って、私に魔石を差し出したんです。それを食べたら、この姿になってました」
『へ……へぇー……』
い、いいんだ…。そういう事はっきり言っていいんだ……。
俺だってこの世界観、まだ馴染んでないのに。
ていうか、その豚って……。
「というわけで、私を雇って頂けませんか?」
『今の流れで!?』
「私は必ずやお役にたちます!見て下さい!私には最強の調理器具があるんです!」
そう言って彼女は一本の焼き串を取り出した。
調理器具って、普通“最強”じゃなくて、“最高”って言うんじゃないの?
『それは?』
「聖串エクシカリバーです!」
『エクシカリバー!?』
噛みそうな名前だな!?
「どんな食材でも、この串を使えば型崩れせずに美味しく焼き上げることが出来ます!例えば鯖味噌網タイツだって、この串を使えば、えも言えぬ美味さの一品に仕上がります」
『なんだかすごいねー』
まず、食材に網タイツをチョイスしてる辺りが特に。
異次元過ぎる。
「どうです、ためしにアース様も、お一つ被ってみては如何ですか?」
『なんで!?』
そこは、普通召し上がれじゃないの?
なんで被るの!?
いや、召し上がれでも、十分おかしいんだけどさ!?
そう言ってアンさん―――面倒臭せぇな、アンでいいか―――は俺に焼けた網タイツ(鯖味噌まみれ)を差し出してくる。
焼けたナイロンと鯖味噌の臭みが絶妙に合わさった匂いがした。
吐くわ。
『いや、いい!いらない!考えてみるから!バイトも考えてみるから、それをしまってくれ!』
「そ、そうですか……。残念です。ゴブリンさん達には喜んで頂けたんですが……」
そう言って、しゅんと落ち込むアン。
べちゃりと鯖の身が床に落ちる。ばっちい。
………マズい。普段は蟻だから罪悪感が全く湧かないが、この美少女姿のアンだと、罪悪感が半端ない。
俺は一切悪い事はしていないのに、なぜか物凄く悪い事をした気になってくる。
恐るべし……ギジンカ……っ!!
「鯖味噌網タイツ派のゴブリンさん達は私の作った料理をいつも、美味しい美味しいって言って食べてくれてたんです。だから私、アース様にも喜んで頂けたらって……」
多分そのゴブリンさん達、頭狂ってますね。間違いなく。
『えっと……その……』
俺がしどろもどろになっていると、店のドアが勢いよく開かれた。
「……ふっ、相変わらずさびれた店だな」
ガラガラと扉を開けて男が入ってくる。
銀髪で紅い眼、そして常に男の尻を眺めていそうな目つきの苦労性な感じがする男。
それに続いて数匹のニーソックスを履いたオークたちが入ってくる。
全員もれなくカニミソ塗れだ。生臭い。
鯖味噌の匂いも混ざって、マジで吐きそうだ。うぇっぷ……。
ずかずかと先頭を歩く男は、両手を隣にいるオーク達の後ろにやっている。
そして、男の腕が動くたびに、オーク共が顔を赤くしながら、もじもじしている。
止めてください、目の毒なんですけど?
新手のバイオテロかなにかですか?
「む、誰だ、貴様らは?」
アンは入ってきた男たちを訝しげに見つめる。
「……ほう、珍しいな。客がいたのか」
「誰だ貴様はと聞いている!?」
「ふっ……教えてやろう、私は――――」
男はバサッと銀髪を掻き上げ自己紹介をしようとする。
『アン、そいつはエクレウス・レーベンヘルツっていう、カニミソニーソックス派の参謀だ。その知略を駆使して、カニミソニーソックス派を一大勢力にのし上げた張本人で、この辺り一帯を買占め、一大グルメリゾート“カニミソニーソックスアイランド”を建設する予定らしい。
すでに、エルド下町の土地の殆どはコイツに買い上げられて、もう残るのは俺の店だけと言う状況……。そんな中、俺は正直引越しなんて面倒くさいから、だらりだらりと、こいつの嫌がらせを躱している………と言うのが、今の現状だ。ふぅ……長く喋ると疲れるな』
俺はアンにこいつの正体と俺の店の現状を伝える。
エクレウスはこめかみをひくつかせている。
なに、どうしたん?
「……清々しいまでの説明口調をアリガトウ。ま、まあ、つまりはそういう事だ、お嬢さん。さあ、アース、大人しく、この店を我々に渡したまえ。無論、相応の報酬は支払おう。君にも、不自由はさせないよ?」
そう言ってエクレウスは一枚の用紙を差し出す。
そこには、この店を買い取るための様々な条件が書かれていた。
高額の買い取り価格、高級マンションへの引っ越しの手配、更にここに立つレジャー施設での出店許可に、その際の格安のテナント料、その他もろもろ。
かなりの好条件が書かれていた。
多分これ以上ないと言っていい程の好条件。
『うーん………』
引っ越しは面倒くさいけど、荷造りから手続すべて向こうで、やってくれるなら、別にいいかなって、最近思うようになってきた。
俺の家って最近、ネットの接続も遅いし、店はあちこちガタがきてる。
はっきり言って住み心地は悪い。
もっと動作環境のいいところに引っ越して、ダラダラしながらフィギュア作りするのも、悪くないかもしれない。
売りに出してもいいかなって思い始めてたところだし、丁度いいかな。
『わかっ――――』
「何をバカなことを!アース様にこの店を離れるという選択肢なんてありません!」
ちょっと、君、何言ってるの?
俺の言葉を遮って、アンが抗議の声を上げる。
「だれだ、君は?」
「私の名はアン。アース様の第一の眷属です」
あの……まだ、雇ってませんけど?
あと、お前が動くたびに、俺に味噌が飛びつくんだよ。
やめて。
「大体、貴方達はなぜこんなことをするのです!?リゾート施設の建設!?こんなの、性質の悪い地上げ屋と何も変わらないではないですか!?恥を知りなさい、恥を!」
いえ、結構向こうは紳士的に対応してましたよ?
面倒くさいと思って、相手にしてなかったのは、むしろ俺の方だし。
そんなアンの抗議の声に、エクレウスはただ微笑を浮かべるだけだ。
心なしかその笑顔にどこか陰りが見える。
「ふっ、理由だと?そんなの、決まっている。私がやりたいから……そうしたいと思ったから!ただ、それだけだ!」
「なっ……!?」
鬼気迫る表情でエクレウスは語る。
「いいか貴様ら!良く聞けよ!私が………この私が、本編で一体どれだけ不遇な扱いを受けてきたと思っているのだ!?」
『……………はい?』
「私がやってたことと言えば、ひたすら財務整理に事務処理に、戦争や軍備調整!何かと頭ばかり抱えて、セリフと言えば大抵『なんだ、これは?』や『一体どういう事だ』等の驚いているセリフばかり!ホモと言う設定も生かされず、第三章では、キーマンのくせに殆ど出番なし!」
いや、それは単に作者の力量不足なだけで……。
目に涙すら浮かべて拳を握りながら、エクレウスは語る。
「挙句の果てに、大した活躍もないまま死亡だぞっ!?多分、この作者の事だ!回想とかで使おうにも、私の名前がパソコンで打ち難いとかそういう理由で、カットするに決まってる!つまり、私はこの先ずっと出番なしという事だ!!!」
『お、おう……』
「だから、私は誓ったのだ!本編では良い思いが出来なかった分、番外編では、己の欲望のまま好きに生きようと!カニミソニーソックスアイランドを足掛かりに、この大陸に私の楽園を築き上げる!美少年も美丈夫も、オークもゴブリンもドラゴンも!全ての尻は、私のものだああああああああッ!」
カッ!とエクレウスの背後に稲妻が走ったような気がした。
声高に叫ぶその姿は、まるで狂信者のそれだ。
つーかキャラ変わりすぎだろ……。
もう登場しないという怨念もあってか、エクレウスの眼には妄執じみた迫力があった。
オーク共も恐れおののいて……
「ふごっ、ふごっ。エクレウス様カッコいいだぁ……」
「んだんだ。あの快楽を知っちまっだら、もうこの人がら離れられねぇだぁ」
「初めはすっごく痛がっただぁ。でもだんだんと……」
調教済みかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!
オーク全員眼ぇハートマークだし!
人でも魔物でもオッケーってこいつ節操なさすぎだろ!
「……ふごっ、あの龍、いい尻のカホリがするだぁ」
あ、おいエクレウス、部下の管理しっかりしろよ。
そいつ、浮気しようとしてんぞ。
オークとエクレウス達はじりじりと俺に近寄ってくる。
気のせいか息が荒い。………気のせいだよね?
「さあ、わかったら、さっさと権利書と尻を私に差し出しだせ、アース。そうすれば痛い目を見ずに済むぞ?」
「くっ………!」
正直権利書はどうでもいいけど、後半は絶対に差し出したくない。
さりげなく要求が増えてやがる。
龍でもお構いなしかよ。上級者過ぎるだろ……。
本編では、全然目立たなかったくせに……っ!
これが番外編……!
本編で死亡し、出番のないキャラにのみ与えられる、はっちゃけ特典。
……正直、尻さえ除けば、条件は悪くない。
でも尻がなー。
尻は差し出さないって、条件で飲もうかな……。
「ふざけるなっ!」
「へ?」
アンが叫んだ。
「貴様ら先ほどから聞いていれば、好き勝手言いおって!もう我慢の限界です!」
おお、流石アン!
本編トップクラスの人気は伊達じゃない。
そのままどこぞの説教主人公みたいに、論破してしまえ!
俺が尻を差し出さなくて済むように。
「アース様は、私の主です!断じて貴様ら下郎どもが触れていい御方(尻)ではないのです!」
いや、お前のモノでもねーよ。
あと、ルビ間違ってる。
「それに、カニミソニーソックスだと!?何をバカなことを。アース様は鯖味噌網タイツ派だ!」
違う。断じて、違う。
おい、オーク共恐れおののくな。
泣くぞ。
「その証拠に、先ほど私が焼き上げた鯖味噌網タイツを美味しそうに頭から被っておられた!」
捏造すんなや。
その発言にエクレウスは驚いていた。
「鯖味噌まみれの網タイツを頭から被る……だと…・・?アース、まさか貴様は、変態なのか……っ!?」
お前にだけは言われたくねーよ!
あと、捏造だっていってんだろ!
睨み合う二人。
一触即発の空気の中、エクレウスが口を開いた。
「ふっ、埒があきませんね。では、ここは一つ、料理で勝負をして決着をつけるというのはどうだ?」
『料理勝負?』
「そう。料理で勝負し、勝った方が相手のいう事を聞くのだ。シンプルで分かりやすいだろう?お題は………そうだな、君たちへのハンデとして“焼き鳥”でどうかな?」
『なんだと……!?』
こいつ、俺がつくねしか焼けない事を知ってるくせに!
何がハンデだ。こんな勝負受けるわけ―――
「良いでしょう!その勝負受けて立ちます!」
あの、アンさん?なんで先ほどから、アナタが仕切ってるんですか?
俺の意志は無視ですか?虫だけに。
「大丈夫ですアース様!私にはこの聖串エクシカリバーがあります!敗北などあり得ません!」
「良い表情だ!では、見るがいい!お題となる食材はこれだ!」
そして、なんでお前は平然と進行してんだよ!?
なんで俺の意志は無視なの!?
エクレウスはどこからともなく取り出した、食材を俺達の前に突き出した。
綺麗にラッピングが施されたお肉にはこう書かれていた。
特選素材 アクレト・クロウ ヘレブ の肉盛り合わせ
ヘレブウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッ!!
ちょっと待て!
流石にこれはちょっと待て!特選素材!?
何それ!?え、ていうか食材なの!?
アクレト・クロウって食えるの!?
ヘレブ狩られたの!?
「見事なお肉です……では勝負といきましょう」
「ふっ、完膚なきまでに負かしてやろう。アースの尻は私のものだ」
「そんな事はさせません!アース様の純潔は私が守ってみせます!」
轟々と燃え上がる二人。
なんか、もう置いてけぼり感半端ない。
…………もう、帰っていいかな。
あ、家ココだったわ。
「さあ、アース様!行きましょう!私たちの戦いは始まったばかりです」
何その打ち切りみたいなセリフ!?
「ふはははは!かかってくるがいい!言っておくが、私を倒しても、まだ第二、第三の―――」
だから、何なの、その打ち切りみたいなセリフ!?
つーかアンタら、ノリ良いな!
「この聖串エクシカリバーの真の力を見せて差し上げましょう!」
アンの聖串エクシカリバーが光る。
凄まじい光。
ビームか?ビームが出るのか?
「ふっ!ならば、私も真の姿を解放しよう!」
ニーソックス以外、着ている衣類を全てを脱ぎ、エクレウスの股間も光る。ところどころにかかったカニミソがまた気持ち悪い。
今すぐ帰れ。ていうか警察に出頭しろ。
だが、その圧倒的な変態力の前に、アンがひざを折ろうとする。
「くっ………なんという性気…っ!?このままでは……負けてしまいます!」
つーか料理しろよ。
ほら、肉あんだろ。
ヘレブ出落ちじゃねーか。
「まだよ、アンちゃん!諦めちゃダメ!」
「その声……まさかエリベルさんですか!?」
そこにはなぜか、フル装備のエリベル(骨)がいた。
「ぷるー!」
「ぷるるまで!」
更にぷるる(ふりふり幼女)まで出てきた。
「儂もお――「へへへ……俺達を忘れて貰っちゃあ、困るぜぇ……!?」
「この店が潰れちゃあ、クソ婆どもがうるせーんだよ、くひひ」
「このクソオーク共が……煮込んでトン汁にしちまおうぜぇ、ひゃははは!」
黒ハイエナ老人ホームの皆さんまで……。
あと、その後ろに六本腕のおっさんもいる。
「「「「ギギィー!(俺達鯖味噌網タイツ派のゴブリンもいるぞー)!!!!」」」」
鯖味噌網タイツ派のゴブリン達まで出てきた。
こ、これが友情パワー……。
俺の店のピンチにみんなが駆けつけてくれたみたいだ。
ん?俺じゃなくて、アンのピンチか?
「馬鹿な……こんなさびれた焼き鳥屋の為に……そんなバカな!」
エクレウスは信じられないモノを見る様に俺達を見る………全裸で。
「だが、まだだ!まだ負けたわけじゃない!行くぞ、オーク共!我らの最後の力をみせてやる!」
「「「「ブフォオオオオオオオオオオオオオッッ!!」」」」
全裸のエクレウスを先頭にニーソックス派のオーク達が突撃を仕掛ける。
「行きましょう皆!勝って、勝利をアース様に捧げるのです!」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」
やめてええええええええええええええ!
店が壊れるうううううううううううううううう!
つーか料理しろよ!!!!
そして、アン達とエクレウス達の激闘が始まろうとして―――――――
『――――――はッ!?』
はっ、と俺は目を開く。
素早く起き上り辺りを見渡す。
そこは見慣れた、ダンジョンの景色だ。
『………………ハァ………ハァ………夢か………?』
………ひどい夢(番外編)を見た。
後半にヴァレッドやベルディーとの料理対決も考えていたんですが、二話かける内容じゃないなぁと思いカット。
エクレウスが全部持って行った様な気がする……
今回の閑章は全3話を予定してます。
次回は『ゴーレム達の日常』です。
第二章で、外に出るまでのウナやトレス達のお話になります。




