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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第三章 龍殺しと眷属との絆

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5.これはアンデッドですね

地龍さんのお話に戻ります

 


 『地龍の背骨』の入った宝箱はフロアボスの部屋を出て、すぐ近くにあった。

 さっさと回収してしまおう。

 下手に居座れば、八十八層の魔物たちが押し寄せてくるからな。

 データを改めて見ると、八十八層の魔物たちはヤバい。

 最低でも上級、将級の魔物だってうようよいる。

 そんなのに束になって来られたら、トレスやぷるるでも太刀打ちできないだろう。


 え?俺?


 いやいや、何言ってるんですか?

 さっきの巨人ですらテンパる俺ですよ?

 戦闘なんて出来るはずないじゃないですか。

 ええ、チキンですよ、何か?

 だから、引き籠ってるんじゃないか。

 それに、俺の攻撃手段って基本的にブレスだけだし。

 そんなのダンジョン内で撃てば生き埋め確定だって―の。

 まあ、生き埋めになっても土や岩を食える俺にとっては何の問題もないんだけどね。

 でも、トレスやぷるるも巻き込んじゃうしな。


 俺が宝箱を開けてる最中は、まるで水を打ったような静けさだったので、これ幸いとさっさと中身を回収することが出来た。

 扉を開けるまでは結構な数の魔物の気配がしてたのに、俺が部屋の外に出た途端急に魔物の気配が遠くなっていったのだ。


 いや、ホントラッキーだったわ。


 あれかな?他の獲物でもいたのかな?

 まあ、どうでもいいか。

 結果おーらい。


 ま、何はともあれ無事に“地龍の背骨”を手に入れることが出来た。

 俺達は転移門を潜って、さっさと自分たちのダンジョンへと戻ってきた。


 ………“四人”で。


 そう、あの後、何故かエリベルの眷属である巨人のおっさん、ベルクも一緒に行くと言い出したのだ。

 ダンジョンのフロアボスが勝手に移動していいの?て言ったら、『大丈夫じゃ、問題ない』て、普通に返してきやがった。


 それでいいのか、フロアボス?

 まあ、本人がいいなら別にいいけど。


 ……ベルクには俺が考えてることを素直に話した。

 俺が“地龍の背骨”を手に入れに来たこと。

 そして、エリベルを復活させようとしている事も。

 別に話さなくてもよかったんだけど、なんとなくこのおっさんには話しておくべきだと思ったのだ。

 

 話を聞いた後のベルクは、そりゃあすごい怒り様だった。

 そりゃそうだわな。


 まあ、原因は分かる。


 数か月前、俺は遺跡であの台座を食った時、知識と共に彼女の記憶も流れてきた。

 それはどこまでも続く負の感情だった。


 彼女は今にも死にそうな顔で『殺してやる……絶対に殺してやる……』と言っていた。


 怒りに満ちた形相で『なんなのよ……どうして……どうして私だけが……』と言っていた。


 悲しみに満ちた表情で『私は悪くない……私は悪くないんだ……』とうわごとのように言っていた。


 どの場面でも、彼女は部屋で一人で泣き、部屋は彼女の感情を表すかのように散乱し、あちこちに、おそらくは実験用の瓶や謎の液体が散らばっていた。

 更には、ストレスでやけ食いでもしたかのように、食べ物も散らかっていた。


 あれだけの負の感情だ。

 多分、彼女は誰よりもこの世界を憎んでいたのだろう。


 理由までは分からない。流れてきたのは彼女の感情だけだったから。

 それを分かったうえで、彼女を再びこの世に呼び戻そうとしてるんだ。


 そりゃベルクも怒るわな。


 だけど、御免なベルク。

 エリベルの存在は俺にとっても必要不可欠なんだよ。

 知識は貰ったし、残った研究成果で相当ダンジョンも充実してきた。


 でも、やっぱり最後の詰めに必要なのはやはり彼女自身だ。


 はっきり言ってしまえば、俺には知識はあってもそれを応用することは出来ない。

 ゲームの攻略本を手に入れても、実際にゲームをプレイしたこともない人間がそのゲームを語ることは出来ないのと一緒だ。


 さっきの戦闘がいい例だろう。

 俺はエリベルの知識を鵜呑みにし、目の前に起こっている出来事に冷静に対処することが出来なかった。

 上辺だけはなぞれるかも知れないが、もっと深い、突っ込んだ部分まで語ることが出来るのは、やはり彼女自身だけだろう。


 そう、俺は彼女に、俺のダンジョンのアドバイザーになって貰いたかったのだ。

 八十八層もの巨大なダンジョンを作り上げた、人類史上最高の魔術師に。


 まあ、完全に俺の都合だしな。

 それに彼女が引き受けてくれるかどうかは決まっている訳じゃない。

 断られる可能性だってある。

 でも、なんでだろうな。

 俺にはなぜか、彼女は引き受けてくれるだろうと、確信にも似た思いがあった。

 それは以前アンに進化の魔石を食わせた時に感じていたものと似ている。

 あの時俺は、成功率が一割以下にも拘らず、何故か失敗しないと感じていた。

 まあ、完全に勘なんだけれどさ。


 それをベルクにも説明した。

 ベルクは一通り怒った後、何を思ったのか急に冷静になり、自分も連れて行けと言い出したのだ。


 一体何なのだろうか?


 「…………」


 と言う訳で、なんか妙にギスギスした雰囲気でエリベルの部屋に向かってる。

 視線が痛い。気まずい。

 あの、誰か、なんか喋ってくれませんかね?空気がめっちゃ重いんですけど………。

 

 「…………」

 「…………」

 「………ぷー………」


 ぷるるでさえ、いつもの可愛い声に張りが無い!

 水風船みたく小っちゃくなってるし!

 そっかー、ぷるるって感情によってサイズが変わるんだなー。

 トレスはトレスでどこか上の空だし。


 ヤダもう!なにこれ!?

 俺にコミュニケーションスキルは無いんだよ!

 この気まずい空気を何とかして!



 そして、数分後。

 たどり着いたのは、以前来たことがある小部屋。

 そう、エリベルの遺体が眠っている小部屋だ。

 ボロボロの本棚も、今にも壊れそうな机も、崩れたままの骨も、前に来た時のままだ。

 結局何も会話が弾まないまま、ここまで来た。

 

 改めてエリベルの遺骸を見る。

 うん。やっぱり不死化防止の術式が掛かってるな。


 この世界では本来なら、死体は放っておけば、十日もすればアンデットになってしまう。

 だから、死体は直ぐに火葬するのが常識だ。

 

 でも中には、火葬せず生前のままの姿で埋葬したいと、考える者たちもいたそうだ、

 主に貴族の連中とかが。

 そんな人たちのために考案されたのが、不死化防止の術式だ。

 これはアンデット化することを防ぎ、自然による腐敗を促す術式だ。

 結構な手間のかかる術式だそうで、結局貴族にしか用いられず、一般にはあまり普及しなかった。

 完全に骨になり、風化してしまえば、ゾンビとしてもスケルトンとしても復活する事が出来ない。

 術の効果そのものは単純なのだが、術式自体は結構複雑で、これを解除するのは俺には無理だった。

 骨だけに、骨が折れる……へへっ。


 なので、エリペディアにあった“地龍の背骨”を使おうと思ったのだ。

 通常なら二百年もたっていれば、風化も激しく、スケルトンとしても甦ることは出来ないが、この遺跡には大量の魔素が充満しており、遺骸そのものがかなりの魔力を有しているうえ、一番重要な頭蓋骨の部分がほぼ無傷で保存されていた。

 まあ、無傷って言っても骨なんだけどさ。

 これなら復活する可能性は十分にある。


 

 それじゃあ、賢者の復活といこうか。


 さて、やり方は簡単。

 まずは取り出しますは、土で作ったすり鉢。

 ここに地龍の背骨を少々と砕いた魔石を適量加えます。

 それを、ごりごりごりごりと混ぜ合わせます。

 あ、混ぜる作業はトレスにやってもらってる。

 

 「お父さんー、出来たー」


 トレスが出来上がったすり鉢の中身を見せてくる。

 うん、きれいに混ざりました。

 次にこれをエリベルさん(骸骨)に振りかけます。

 まんべんなく、全体に行き渡るように。

 次に、ゆっくりゆっくり魔力を込めます。

 この位でいいかな。


 あとはそのまま少し待つ。

 一分ほどが経過したころだろうか。

 ズズズズズズと、エリベルの遺骸を中心に魔力が集まり始めた。


 次の瞬間、ゴバッ!と魔力が爆発的にエリベルへと集まってゆく。

 すごい。

 アンデット化する際の魔力量は、生前の魔力量に比例するらしい。

 エリベルはかつて四大属性全てを霊王級まで極めた魔術師だ。

 本来なら最上級の不死王級のアンデットとして甦るだろう。

 だが、二百年も経過してしまった今なら、そこまではいかない。

 多分上級アンデット程度の力を持って甦るだろう。


 小さな小部屋に充満する濃密な魔力の気配。

 そして、しばらくして魔力の奔流が収まる。


 これで、エリベルの、不死化防止の術式が解けた……筈だ。


 カタカタと、風もないのにエリベルの遺骸が揺れる。 

 その中心にある頭蓋骨の目に、小さな光がともった。

 

 ………成功したか?


 じっと骸骨を見つめる。

 他の奴らも固唾をのんで見守っていた。

 そして、骸骨はゆっくりと口を開いた。


 「………ん?ん~……ふぁぁぁぁ~、あーなんかすっごい寝てた気分だわ。体が痛………くはないわね?あれ、どうなってんの?え、なんで私のローブが床に?あれ、ローブに骨が?ていうか視線がなんか妙に低い……て、わーーーーー!!」


 そこでようやく俺の存在に気付いたのだろう。

 エリベル(骨)はこちらを見て、驚くように頭蓋骨をカタカタと鳴らす。

 ていうか、骨なのにどうやって発声してるんだ?

 まあ、今はそんな事どうでもいいか。


 「何、アンタ、龍ッ!?ええええ、もしかして地龍!?なんで、なんで地龍がこんなところにいるの!?あれ?ベルクもいる?あんた、なんで此処に?ここは私のプライベートでスペシャルでゴージャスなお部屋なのよ?それに、その姿……あんた“魔核”はどうしたのよ?」


更にエリベルはきょろきょろと首だけを器用に動かして周りを見る。


 「え?えぇ!?なんで私の部屋がこんなにボロボロに?それにスライムと……ん、何このスライム?あり得ない魔力量ね!?それにそっちは小さな女の子、うぇへへ……じゃないわね、ゴーレム・ホムンクルス?え、なにこれ?どういう事!?え、なんなのこれーーーーッ!?ていうか、私の体どうなってんのーーーーーーーーーッッ!!」


 カタカタカタカタと激しく揺れる頭蓋骨。


 …………相変わらず、残念な喋り方をする人だなぁ。


 それに起きたばかりなのに、まるでマシンガンの様に喋る。

 ぶっちゃけガンガン耳に響く。

 音声拡張の魔術でも使ってんのかって思うくらいにうるさい。


 何はともあれ成功だ。

 エリベルが、復活した。


 『おはよう、賢者さん』


 俺は動揺しているエリベルにとりあえず挨拶をした。




 ようやくエリベル復活。

 ダンジョン側の主要メンバーはこれで大体揃いました。

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