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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
閑章 アンのダンジョン防衛記! その2

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4.パルディーのドキドキ☆悪夢のダンジョン探索記! その死

 「おいおい、なんだよありゃあ………」


 飽きれと、恐怖が入り混じったような声で、バサックが言った。

そして、それはこの場の誰もが抱いた感想に違いない。


 七メルドを超えるであろう巨体。

 そして、その巨体から生える百を超える無数の腕。

 その手に握られているのは、剣、槍、斧、弓にパルディーが見たこともないような形状の武器まで備わっていた。

 更に驚くべきは、その瞳や装飾につかわれている魔石の量だ。

 ゴーレムは使われる魔石の量でその性能が格段に上がる。

 感覚を研ぎ澄まさずとも感じてしまう圧倒的な魔力の本流。


 まるで、巨大な濁流の中に巻き込まれているかのような感覚だった。


 どう考えても、このゴーレムは上級、いや将級並みの力を持っている。


 一体どんなバカが、これほどの怪物を作り上げたというのだ?

 何の目的があって?


 キラーアント達はこれを守っていたのか?

 いや、もしかしてこれを作ったやつが、ここにいるのか?


 パルディーはそう思ったが、その前に敵が動いた。

 百本以上の腕を持った巨大な人型のゴーレムはその巨体を動かし、こちらに向かってきた。

 早い。

 その巨体に似合わぬスピードでこちらに向かってくる。


 「散開!一か所に固まるな!あの数の腕じゃいい的だ!」


 レイルが即座に指示を出す。

 一瞬、バサックの方を見たが、彼は難なく移動していた。

 あの怪我であそこまで動けるモノなのかと感心させられるほどのスピードだ。

 

 「ぐっ!なんだよ、こりゃ!」


 相手は一体。こちらは五人。

 なのにまるで、大群を相手にしているかのように錯覚するほどの攻撃の嵐。

 剣が、槍が、斧が、弓矢が。

 まるで雨嵐の様にパルディー達に降り注ぐ。

 全員で囲むように攻めているのに、全くダメージを与えられない。

 むしろ、こちらの方が押されているかのような感覚。

 背後からの攻撃も、まるで後ろに目があるかのように、軽くいなされてしまう。

 

 「レレ!強力な奴を頼む!」


 事態を変えるためにレイルはレレに指示を出す。


 「はいよ~」


 間延びした様な声。

 だが、レレの行動は早い。

 すぐさま呪文の詠唱に移る。


 「炎よ!その身に宿りし全ての熱よ!光よ!その全てを持って我が敵を滅ぼさん!」


 レレの詠唱。

 火属性上級魔術『滅却炎』。

 杖の先端から放たれる極太の熱光の矢がゴーレムへ向けられる。

 とてつもない熱量。

 まともに喰らえば、人間なら骨もとかしてしまう程の熱量。

 躱せない!そう思った。


 するとゴーレムは驚くべき行動に出た。

 無数の腕のうち、数本を千切り、目の前に放ったのだ。


 数本の腕に『滅却炎』の光が集中する。

 そして、腕は残らず灰になった。


 だが、ゴーレム本体は無傷だ。

 レレの光線はゴーレムへ届くことなく、前方にある腕を数本燃やし尽くすだけで終わってしまった。


 「なっ……!?」


 しまったと、パルディーは思った。

 『滅却炎』は見た目は極太の光線だが、その実は一つの対象に大量の熱を送り込むという特性を持った魔術だ。

 つまり、射線距離に障害物があると簡単に防御が出来てしまう。


 だが、それはあくまで『滅却炎』の特性を知っていなければできない戦術だ。

 魔物相手に戦うなら全く気にしなくてもいいと言っていい。


 なぜ、ゴーレムがどうしてそんなことを知っている?

 パルディーはそう思った。


 「………え?」


 防御されたことが予想外だったのだろう。

 レレは不意にそんな間抜けな声を上げた。

 そして、


 「―――――あ」


 ずぶり、と。


 彼女の胸を何かが貫いていた。

 それは石で出来た剣だ。

 先ほど、あのゴーレムは腕を千切ると同時に、その手に持っていた剣をレレに投げつけたのだ。


 ごぷっ、とレレの口から大量の血が溢れ、そのまま、どさりと倒れる。


 「なっ!?レレ!?くそっ!ボルドロイ、レレの治療を!」


 「おう!」


 直ぐにボルドロイが、レレのもとへ近づこうとする。

 だがそれを多腕のゴーレムが阻む。


 「邪魔をするなああああああああああああああ!」


 叫んだのはレイルだ。

 彼は手に持った剣を袈裟切りに多腕のゴーレムへ叩き込む。

 ボルドロイに向けた腕が切り裂かれる。


 さらに、レイルは追撃を仕掛ける。

 だが、ゴーレムは二十本以上の腕でこれをガードする。

 そして余った腕で、レイルへの反撃を仕掛ける。


 「ぐっ……!」


 「させない!」


 パルディーが風の術式で援護する。

 風属性上級魔術『爆風』。

 レイルを巻き込まぬように、効果範囲を絞りながら放つ。


 パルディーから放たれる小型の竜巻はレイルの横を通過し、多腕のゴーレムに直撃する。

 そのまま、多腕のゴーレムは吹き飛ばされて壁に激突した。


 「ボルドロイ!今のうちに!」

 

 「ああ!」


 ボルドロイはレレに近づく。

 彼女はまだ息があった。

 だが、ひゅーひゅーとおかしな呼吸音が聞こえる。

 どう見ても良くない状況だ。

 彼は懐から回復薬であるポーションを取り出し、レレの傷口にかける。

 『銀の烏』のメンバーは皆、回復用のポーションを持っている。

 みるみるレレの傷口はふさがっていった。

 ひとまずこれで当面の危機は脱した。


 「よかった。これで――――――」


 ボルドロイの言葉は最後まで続かなかった。

 

 その前に、彼の首が宙を舞った。


 「え?」


 それは誰の声だったのか?

 見ると、壁に叩きつけられた筈の、多腕のゴーレムの腕が一本、異様に伸びていた。

 ごとりと落ちる仲間の首。


 伸びた腕をよく見ればそれは折り畳み式のギミックの様だった。

 その折りたたまれた腕を伸ばし、最も油断しているであろう、ボルドロイを狙ったのだ。

 治療を終えた、その瞬間を。


 更にパルディーは気付いた。

 先ほどのパルディーの放った風属性上級魔術『爆風』。

 それが直撃し、壁に激突したにもかかわらず、ゴーレムは全くと言っていいほど傷ついていなかった。


 つまり、わざと。


 あえて攻撃を喰らい、パルディー達の油断を誘ったのだ。

 

 そして、その狙いは的中した。


 無表情なはずのゴーレムは、その瞬間、確かに言葉を発した様にパルディーには見えた。


 『マズ、一人』と。


 そう言っているようだった。


 「う、うあああああああああああああああああああああ!」


 叫んだのはバサックだ。

 怒りのままに、ゴーレムへ突貫しようとする。


 「やめろ!バサック!」


 だが、レイルが先んじてバサックの前に回り込み、それを抑える。


 「止めんなよ、レイル!俺がボルドロイの仇を!」


 「黙れ!」


 そう怒鳴るレイルの顔はひどい顔をしていた。

 今にも泣き出しそうな、ブチ切れそうな、そんな表情だ。

 その表情を見なければ、バサックは彼の制止を振り切り、ゴーレムへ突撃していただろう。

 だが、次の彼の言葉は、流石に正気を疑った。


 「…………撤退する。パルディー、俺達“三人”にフライの呪文を」


 「…………は?」


 三人?何を言っているんだ、この男は?

 ボルドロイは死んだ。それは分かる。首が飛んだのだ。どう見ても死んでいる。

 でも、レレは?

 彼女はまだ生きているだろ?

 見捨てるのか?


 「………レレは見捨てる。このままだと、全滅する」

 

 「お前……っ!?」

 「レイル!貴方!?」


 流石にパルディーも口を挟まずにはいられなかった。

 

 「……盾役のボルドロイが死んだ。後詰のレレも魔術も使えない瀕死だ。キラーアントの大群がまたいつ現れるともわからない。もしまた、大群が現れたら、彼女を抱えたままじゃ………いや、このままじゃ、遅かれ早かれ全滅する。撤退して、このダンジョンの事をギルドに報告する。………それが、最善だ」


 消え入りそうな声だった。

 歯を食いしばり、血が滲むまで剣を握り、それでも撤退を決断したレイルの決死の形相に、二人は反論できなかった。


 「あとでいくらでも俺を責めろ!ゴーレムが突っ込んでくる!早く!」


 「―――っ。分かったわ!」


 パルディーは素早く、詠唱を終え三人にフライの呪文を掛ける。

 

 だが――――




 『逃がすわけがないでしょう』




 それはどこから響いた声だったのか。

 まるで、頭の中に直接話しかけているような声が聞こえた。

 どこか、女性を思わせるような、気品のある綺麗な声だった。


 じゃり、と音がした。

 ふわりと浮かぶ体。その首だけを動かし、パルディーは音のした方を見る。


 ………アレは、何だ?


 そこにいたのは一体の虫型の魔物だった。


 だが、アレはキラーアントなのか?


 蟻の頭部に、人型のような上半身を蟻の体につけたような姿。

 

 蜘蛛型魔物の上位種族アラクネのような姿だ。

 もっとも、アラクネよりも数段禍々しい姿をしている。


 まさか、あれがダンジョンマスターか?


 あれほどの禍々しい外見と、そこにいる多腕のゴーレムの何倍も濃密な魔力の気配。

 この魔物が、このダンジョンを作ったのだ。


 パルディーはそう直感した。


 その魔物は、その手には二本の剣を、背中には白いマントの様なモノを羽織っている。

 そして、そのマントにパルディーは見覚えがあった。


 「………地龍の、皮?」


 ぽつりと独り言のように呟いた。

 そして、その独り言は驚くべきことに、あの魔物に届いたようだ。


 『………成程、わかるのですか』


 再び、女性の声が響く。


 次の瞬間、魔物は恐るべき速度でパルディー達に肉薄した。

 一瞬の内に間合いを詰め、パルディーへ肉薄する。


 浮遊する躰では、躱せない!

 

 「パルディー!」


 レイルが叫ぶ!

 パルディーはとっさに“切り札”を抜いた。

 ガキィィィィィン!!

 

 剣がぶつかり合い火花が散る。


 “地龍の剣”。


 パルディーの持つ切り札。

 自分が冒険者としてAランクになった時、姉に貰った剣。

 絶対的な切断力、そして最高の硬度を誇り、決して刃こぼれすることのないとすら言われた名剣だ。


 『―――――ッ!』

 

 一瞬だけ、この剣を抜いた瞬間、あの魔物の体が強張ったように感じた。

 ………この剣を警戒しているのか?

 パルディーはそう思った。


 だが、それはパルディーの勘違いだった。


 『貴様―――――ッ!』


 すさまじい怒気。

 剣は魔物の一撃を弾き、その反動でパルディー達は一気に上昇する。


 『貴様、貴様、貴様、貴様、貴様、貴様――――――!!』


 恐ろしいほどの怨嗟の声が響いた。

 そこで、ようやくパルディーは、先ほどから流れてくるこの声が、目の前の魔物から発せられていることに気付いた。

 あり得ない程の殺気が、パルディー達に向けられていた。

 震える体を何とか押さえつけ、パルディー達は上昇する。


 見たところ、あの魔物には飛行手段はなさそうだ。


 とりあえずこのまま上へと戻ろう。

 そう思った直後だ。


 「なっ!?」


 パルディーは目を疑った。

 あの魔物が、ものすごいスピードでこちらへ向かってきている。

 一体どうやって?

 魔術?いや、キラーアントは風属性の魔術は使えないはず!?

 では、まさか跳躍力だけで!?

 

 いや、違う。


 見ればさらに下、そこに多腕型のゴーレムがいた。

 あのゴーレムが、この魔物を投げたのだ。


 そして、向かって来る魔物の声を聴いた。


 『――――死になさい』


 ふ、と魔物が口から何かを出した、様に見えた。

 それが何か、パルディーには見えなかった。


 そして、その何かは、隣にいたバサックを貫いた。

 

 「がっ………」

 

 バサックの胸のあたりから血があふれ出た。

 更に、何か所も穴が開く。

 一瞬の内に、バサックは穴だらけになる。

 それだけではない。

 バサックの体は、溶けているかのようにしゅうしゅうと煙を上げている。


 「なに……が……―――」


 そして、そのままバサックは重力に従い、落ちて行った。

 フライは生きている者にしか作用しない。


 つまり、バサックは………。


 「くそおっ!」


 次に動いたのはレイルだ。

 彼は空中で剣を構え、魔物に切りかかろうとする。


 だが、空中で、それも自分たちの様にフライのような術式が掛かっていないにも関わらず、そいつは避けた。


 「なっ!?」


 馬鹿な!?そう思った。

 またしても、魔物は口から何かを発射した。

 レイルは、避けられなかった。


 「がはっ………」


 レイルも心臓を何かに打ち抜かれ、そのまま落ちて行った。

 

 残ったのはパルディー一人。


 「なによ………これ………」


 頭が真っ白になった。


 化け物はすぐ目の前にいた。

 パルディーは必死に剣を振るう。


 「うあああああああああああああああああああああああああああ!」


 だが、まるでこちらの動きを予期しているかのように、パルディーの攻撃は当たらない。

 いや、それ以前に恐怖で軌道が丸わかりになっていることにすら彼女は気付かない。


 「―――――――ッ!?」

 

 そして、次の瞬間、パルディーはまるで金縛りにあったかのように、体が硬直した。


 剣を振ろうとした腕が反り返り、まるで恋人を抱擁するかのように腕を広げる。

 自分の意志に反して体が動いているかのような感覚。


 握っていた剣が手から滑り落ち、重力に従い下へと落ちてゆく。


 目の前には剣を携えた黒蟻の化け物。


 その剣を振るう動作が、パルディーにはやけにゆっくりに見えた。


 もはや、パルディーには何が何だかわからなかった。

 

 ただ一つ言えることがある。




 これは――――――悪夢だ。



 切り裂かれ、血飛沫が舞い、パルディーの意識はゆっくりと暗闇に沈んでいった。




 そして、パルディーの意識が完全に途切れた瞬間、左腕にはめていた腕輪が静かに砕け散った。





 アン「………このマント、少し派手じゃないですか?」

 ウナ「いいえ!似合ってます!流石アンさんです!」(キラキラ)

 アン「そ、そうですか?………うふふ」





 地龍「………う~ん………アン、お前なんで美少女の姿に………いやその手に持っている焼き串は一体………鯖味噌……網タイツが………うぅぅ………」



次回からアンさん視点のお話です

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[良い点] 通信系の魔道具かな?視覚を共有とか [一言] まさかの全滅!!! さすがですアンさん!!! めちゃむちゃおもしろいです!今後も応援しております!
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