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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
閑章 アンのダンジョン防衛記! その2

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3.パルディーのドキドキ☆悪夢のダンジョン探索記! その散

タイトルは誤字じゃないよ?

 ダンジョン内は、予想以上に複雑な作りになっていた。

 グニャグニャと道は曲がっており、いくつもの分かれ道にごつごつとしたむき出しの岩が当たる。

 まさしく蟻の巣と言ったところか。

 だが、人が数人並んで歩ける程度の広さがあった。

 余裕をもって歩くことが出来る。


 ダンジョンの中は比較的明るかった。

 見ると所々に光魔石が見る。

 キラーアント達が光源代わりに使用しているのだろう。

 

 「結構入ったが、蟻共は出てこねーな」

 

 一番前にいるバサックが呟く。

 パルディーも同意見だ。

 先ほどからキラーアントの魔力はどこからか感じる。

 おそらくはどこかに潜んでいるのだろうが、こうまで姿を現さないとは。


 「………不気味ね」


 「ああ、そもそも結構奥まで入ったのにキラーアント達の襲撃が全くない。どうなってるんだ?」


 キラーアントは数の魔物だ。

 一体一体の戦闘力ではなく、数の暴力によって戦う魔物。

 通常その巣は、キラーアントであふれかえっている筈だ。

 事実彼らがこれまで討伐してきたキラーアントの巣は、入口から深部の女王種の住処までキラーアントであふれていた。


 にも関わらず、入ってから今まで一体のキラーアントすら出てこない。


 巣にもかかわらず、一匹もキラーアントに遭遇しないという異常事態がかえって彼らの警戒心を刺激していた。


 その後も五人は周囲を警戒しつつ、ダンジョン内を探索した。


 だが、キラーアントは一向に出てこなかった。

 黒い壁だけが光魔石の反射を受けて、怪しく光っている。

  

 そして、しばらくして、五人は広い部屋にたどり着いた。


 「ここは……ずいぶんとでけー部屋だな」


 「ああ、しかも明るさが全然違う。まるで昼みたいだ」


 黒いタイルのような模様が一面に敷かれた十メイル程の部屋。

 その中心には、何かあると言わんばかりに石像が置かれていた。

 獅子を模った石像が黒い台座の上に置かれていた。


 「……パルディー、あれが何かわかるか?」


 広間に入る手前から中をうかがいつつレイルが聞く。


 「多分……だけど、あれはゴーレムじゃないかしら」


 「そうだろーね。あの石像から魔力びしびし感じるしねー」


 レレも同意見の様だ。

 

 「この部屋に入ったら、動き出すんじゃねーか?ダンジョンじゃよくある罠だ」

 

 「だな」


 バサックとボルドロイも頷く。


 「ふーむ、あの石像から感じる魔力じゃあ、せいぜい初級クラスのゴーレムだと思うよー。まあ、私もキラーアントの巣でゴーレム見たのは初めてだけどさー」


 間延びしたようなレレの意見に、レイルも頷く。


 「ああ、それじゃあ入ろう」


 そう言って『銀の烏』のメンバーはフロアに入ろうとする。

 パルディーもそれに続こうとする。


 その瞬間、


 「…………っ!!??」


 ぞわり、と。

 パルディーの全身に何か得体のしれない怖気が走った。

 脂汗が出た。


 ヤバい!何かが来る!


 「風よ!翼となりて、我らを重力の鎖から解き放たん!」


 それはもはや反射に近かった。


 パルディーは自分が感じた怖気の正体を確かめるまでもなく、全員にフライ、すなわち空中浮遊の術式をかけた。


 そして、その予感は正しかったのだと、実感する。


 がりっ、と音がした。


 フライの効果によって、体が浮き上がる直前に、バサックの足元から奇妙な音がした。


 しいて言うなら、それは何かを噛みちぎられたような音だった。


 「―――――――は?」


 バサックは自分の足元を見つめた。


 無かった。


 自分の左の足首から下が、無かったのだ。


 ふわりと、体が浮いた。

 浮かび上がるバサックの体。

 そして足首からぼたぼたと体液が落ちる。


 そこでようやくバサックは、自分の身に起きた出来事を飲み込んだ。


 「う、うああああああああああああああああああああああああ!!」


 絶叫がダンジョン内に木霊した。


 「なんだ!?何が起こった!?」


 レイルは浮かび上がる体を制御しながら、状況の把握に努めようとする。


 そして、その理由が分かった。


 蟻がいた。

 先ほどまで、バサックがいた足もとに、蟻の顔があった。

 その鋭い牙が咥えているのは、バサックの足だったモノ。


 そして、一体、また一体とキラーアントが現れる。

 地面から、壁から、天井から。

 いたるところから蟻が這い出てきた。


 がちっ、がちっ、がちっ、と牙を鳴らす音を響かせながら。

 

 そこでパルディーはようやく気づいた。


 「………まさかこいつら、魔力と気配を消して・・・…っ!?」


 そう、キラーアント達は最初から“居た”のだ。

 ただ、その姿が見えていなかっただけ。

 

 そう、壁も、天井も、床も、すべてが擬態したキラーアント達だったのだ。


 「嘘……だろ……?」


 そう呟いたのはボルドロイだった。


 キラーアント達に流されるようにして入った大広間。

 

 そこの壁も床も天井も、すべてがキラーアント達で埋め尽くされていたのだ。


 もはや、自分たちが歩いてきた通路はキラーアントに変わり、そして大広間はキラーアントに変わり、一気に何百と言うキラーアントに囲まれてしまっていた。

 台座に置かれた獅子のゴーレムも動き出す。


 あり得ない異常事態。


 キラーアントの数やゴーレムが、と言った話ではない。

 その直前、魔物が気配どころか、魔力の波動まで消すなんて聞いたことが無い。

 ましてや、それを最下級であるキラーアントがするなんて。


 「………ちっ!」


 だが、そこはAランクパーティー『銀の烏』だ。

 対応は早かった。

 彼らはフライによって、浮かんだ体を互いに密集させ、広間の中心へ移動する。

 

 「偉大なる炎よ!全てを燃やし尽くせ!」


 レレが詠唱を紡ぎ、上から落ちてくるキラーアントどもを焼き払う。

 中級魔術『豪火炎』。落ちてくるキラーアント達に避けるすべはない。

 一気に十体近いキラーアントが灰になった。


 だが、それよりも落ちてくるキラーアント達の方が多い。


 「風よ!剣となりて、我が敵を切り裂け!」


 次いでパルディーの攻撃。

 広範囲攻撃術式『舞風刃』。

 無数の風の刃を広範囲に発生させる中級術式だ。

 一撃の威力は『豪火炎』に劣るが、その攻撃範囲は『豪火炎』の五倍だ。

 次々にキラーアントが切り裂かれていく。

 数を相手にするなら、パルディーの風の術式の方が向いていた。


 床や壁にいるキラーアント達と獅子のゴーレムは、自分たち自身を足場にレイルたちへ噛みつこうとする。


 が、盾役であるボルドロイはそれを弾く。

 弾いて出来た隙に、レイルが切り込む。


 近づいて来たキラーアント達の体が真っ二つになった。

 そして、レイルは素早く指示を飛ばす。


 「レレは上からくる敵に警戒しつつ、バサックの援護を!」


 「うん!」


 「バサック、止血にはどれくらいかかる?」


 「……一分、いや、三十秒くれ!」

 

 「わかった。パルディー、フライは後どれくらい持つ?」


 「もって三分でしょうね。その後、一分はインターバルを置かないと、次のフライは使えないわ!」


 「わかった。じゃあ何とか三分以内に、足場を確保するぞ!不意は付かれたが、やることは変わらない!行くぞ、みんな!」


 それからしばらくは、キラーアントとの激戦だった。

 パルディーと『銀の烏』のメンバーは、巧みな連係でキラーアントの攻撃をさばき、少しずつ足場となる地面を確保していった。


 そして、三分が経過し、フライの効果が切れた。

 五人は足場に―――今度はキラーアントではない事を確かめて―――着地した。


 そして、自分たちを囲むようににじり寄るキラーアント達を見つめる。


 「やっぱ、数が多いな、どうするよ?」


 聞いたのは止血を済ませ、ダガーを両手に持つバサックだ。

 即効の土魔術“錬金”で義足のようなものを作り出している。

 どうやら、戦闘には問題ないようだ。


 「……レレ、パルディー」


 レイルは二人の方を見る。


 「二人の混合魔術で活路を作るぞ。『風』と『火』は相性がいいからな。出来るな?」


 「ええ、勿論」


 「問題ないよ~」

 

 半年ぶりに行う術式であっても、全く問題ないと二人の表情は語ってる。

 よし、とレイルは剣を握り直す。


 「他のメンバーは二人の詠唱が終わるまでの援護を!」


 そして、レイルは獅子のゴーレムに切りかかる。

 石で出来た獅子はその体を真っ二つに両断された。

 

 「やっぱり、このゴーレム自体はそんなに強くは無い!よし、次だ!」

 

そして、レイルが構えた瞬間、おかしなことが起こった。


 

 キラーアント達が後退を始めたのだ。

 先ほどまで近づいて来たのに、今度は一気に後退を始めた。


 「………なんだ?」


 レイルが呟く。

 

 だが、さらにあり得ない事態が彼らを襲った。


 ガリッ! ガリッ! ガリッ! ガリッ!


 キラーアント達の、何かをかみ砕く音。


 ガリガリガリガリガリガリガリガリ!!


 それは、後退するキラーアント達の音の中で、随分クリアに聞こえた。

 一体何が?

 そう思った次の瞬間だ。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


 轟音が響いた。


 「――――上ッ!?」


 パルディーが気づいた。

 天井だ。

 天井が落ちてきたのだ。

 まるで、バラバラに砕かれた落石の様に。


 「なっ!?」


 そして、さらに驚く。


 床も。


 今自分たちが、経っている床もひびが入り、崩壊しているではないか。

 崩れる、そう直感した。


 「結界を張るわ!みんなこっちへ!」


 パルディーは全員を集め、素早く風の結界を構築。

 風圧により、襲いかかる岩盤はその勢いを無くしてゆく。


 落石による被害はなんとか防げたが、彼らはそのまま重力に従い、落ちて行った。





 「痛つつ………。なんだ、ここ?」


 落ちた先にあったのは、先ほど自分たちがいたフロアよりも、さらに倍以上の大きさがある大広間だった。

 全員居る。無事だ。

 落下の衝撃で、多少の怪我はしているが、それでも動く分には問題ない筈だ。

 パルディーも、みんなの無事を確認してから、自分の確認をした。

 装備品は全て無事だ。まだ十分に使える。


 「………エクレウス様からもらった腕輪と魔石も無事だったわね」


 パルディーは左手に装備した腕輪をさする。


 「そう言えばその腕輪って?」


 レイルが聞いてきた。

 

 「これも、魔石と一緒にエクレウス様に頂いたのよ。“役に立つ”からって」


 「ふーん、見たところ普通の腕輪に見えるけどな」


 「でも魔術は通ってるわ。多分、何らかのマジックアイテムだと思うけど……」


 「え、なんの効果があるか聞いてないのか?」


 「ええ、それに――――」


 「二人とも、イチャつくのはいいが先の状況把握が先だ」


 ボルドロイに言われて二人は、我に返った。

 というか、そもそもイチャついてないし、とパルディーは否定していたが。

 

 改めてフロアを見た。

 光魔石の数が先ほどよりも少ない。

 が、フロア崩壊と同時に一緒に落ちてきた光魔石があちこちを照らしていた。


 「………こ、この部屋も、蟻で出来てんのか……?」


 先ほどの恐怖を思い出したのか、バサックが床を見る。

 

 「……いいえ、この床は本物みたい。でも、どういう事?何が起こったっていうの?」


 先ほどの崩壊はどう考えても偶然とは思えない。

 それに、その直前に聞いた、何かを砕くような音。


 「まさか、キラーアント達が意図的に“フロア崩壊”を仕掛けたっていうのか?」


 レイルが言う。

 あり得ないわ、とパルディーは呟く。


 だが、余りにも、タイミングが良すぎた。

 アレはまるで、パルディー達のフライの効果が切れた時を見計らって仕掛けたような、そんな動きだった。


 「まさか……でも、そんな……」


 そもそも、魔物が侵入者を仕留めるためにダンジョンの一部を意図的に崩すなんて聞いたことが無い。

 そんな知能、最下級のキラーアントにある筈が無い。

 ましてや、気配を消し、あまつさえ床や壁、部屋に擬態するだなんて。

 しかも、上級冒険者である自分たちを欺くほどの精度で。


 だが、それが自分たちに起こっている事実。


 このダンジョンは、何もかもがおかしい。


 異常すぎる。


 ぶつぶつと独り言をつぶやくパルディーにレイルが声を掛ける。


 「パルディー、考え事の最中に悪いが、敵さんが現れたみたいだぜ」


 そう言われてパルディーは現実に引き戻される。


 レイルの指差す方向。

 そこに、キラーアントはいなかった。


 だが、それ以上にあり得ないモノがそこにいた。


 「………なによ、アレ?」


 パルディーは自分の目を疑った。



 そこにいたのは、百本以上の腕を持った巨大な人型のゴーレムだった。





 


 まさかの千手観音ゴーレム再登場。次回で決着です


 アン「地龍様!……地龍様、侵入者です!」

 地龍「……………う~ん…鯖味噌……鯖味噌が……」(ぷっ、ツーツー……)



 アン「……………みんな!地龍様は私たちの為に力を蓄えておられる!そのご恩に報いるため、私達だけで侵入者を殲滅するのです!」

 ウナ・ゴーレム・子蟻達「「「おー!!!」」」


 アン「………これで、いいのですよね、地龍様?」






 地龍「う~ん……うぅ………鯖味噌……鯖味噌味の網タイツが……やめろぉ…被せるなぁ……うぅ~……」

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