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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
第二章 外界との接触

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3.好きな人の前だと緊張して口調変わるよね



 インペリアル・アント。


 俺がこいつに注目したのは、個体の強さもさることながら、その驚異的な繁殖力の強さだ。

 キラーアントは一匹いれば十匹はいる、というのが通説だ。


 だが、このインペリアル・アントはその比じゃない。

 一匹見れば万を超える大群がいる。

 そう言われるほどに爆発的な繁殖力を持つ蟻なのだ。


 山が真っ黒だなと思ったら、インペリアル・アントの群れだったとか、大陸が丸ごと食い尽くされたなんて逸話すらある。


 インペリアル・アントの女王種は一日で百の卵を産み、その卵は十日で孵り、一月で成体となる。

 爆発的な繁殖力だ。

 しかもその統率と、連携があまりにバカげている。

 まるで、全員で一つの意志を持っているかのような完璧な連携を行うのだ。

 個という概念が薄い蟻ならではの強みと言えるな。

 インペリアル・アントの連携を参考に新たな陣形が作られたといわれるほどの逸話まである程だ。


 さらに、女王蟻から生まれた兵隊アリはそのすべてが中級並みの力を持つ。

 ちなみに中級はトロルや土蟲などだな。

 そんなのと、唯の兵隊蟻が同格って………。



 その余りの繁殖力と群としての強さ故につけられた階級は災害級ディザスタークラス

 十分に数を増やしたこいつらに目をつけられたら、たとえ白飛龍やアクレト・クロウですらも捕食者から哀れな獲物に成り果ててしまうだろう。

 その余りにバカげた数の暴力によって。

 ただ、数が少なくなればなるほど比例して、その脅威も下がってしまう欠点はあるが。


 しかし、その余りの危険性ゆえ、人族の連合軍に一匹残らず根絶やしにされ、四百年以上も昔に、この世界から駆逐された魔物である。


 ちなみに絶滅させるまでにも連合軍は数十年の時間を要したらしい。


 そして、さらなる情報として、インペリアル・アント女王種は“個体でも”将級に匹敵する強さを誇るのだ。

 しかもアンはその高位種。準王級とも呼べる個体になったといえる。

 

 つまり、アン自身個体としての強さは、俺はもちろん、アクレト・クロウや白飛龍すら単独で結構なとこまで戦える力を有したという事だ。

 勝てるかどうかは分からないけど。

 ていうか、実戦経験ゼロの俺よりは多分強いんじゃないかな。


 まあ、アン自身はそのことに気づいていないだろうけどな。



 そんな悪夢の権化ともいえる魔物に進化したアンは


 『はぁわぁ~、私なんだかすごい姿になっちゃいました。なんでしょうか?うん、すんごい力が湧いてくる感じです。こう、ぐわああああああとなってふぉぉぉぉぉって感じです』


 変なポーズをとりながら、あまりに頭の悪いコメントを吐いた。


 俺は思わずこめかみを抑える。

 おかしいな?確か魔物は進化すると高い知能を有するはずなんだけど……。

 ちゃんと進化したよな?


 本当に図鑑に書いてあったのと同じ種族になったのか心配になってくる。

 身体的特徴は同じはず………だよな?


 だよね?うん。


 外見的特徴は一致してる………魔力の波動も同じだ。


 『さて、アン。それじゃあお前は兵隊アリを増やして、頑張ってこの辺りを守護してくれな』


 『了解です地龍様!』


 とりあえず俺はアンに命令を出す。

 インペリアル・アントは今まで同様単一生殖が可能な個体だ。

 雄の個体とにゃんにゃんする必要はない。


 アンの腹部についてるコブ。

 あれが卵なのだ。

 卵の大きさは前とは違いバランスボールくらいか。でかいな。

 アン自身もすでに三メートル近くの大きさに成長しているのだ。


 おかしくはない、か。


 『ふん!』


 アンが腹部に力を込める。あ、腹部が膨らんだ。

 すると次々に卵が落ちてくる。


 『あ、地龍様、その、あ、あんまり見ないで頂けると助かります……』


 ぼとり、ぼとりと、ねっちょりとした粘液を滴らせながら卵がアンの周りに転がる。

 うへぇ、気持ちわり。

 言われなくても目ぇ逸らすわ。


 薄い膜に覆われた卵から魔力の波動を感じる。

 すでに個体として出来上がっているのだろう。

 ………さすがの繁殖力だな。

 生まれたアリたちは本能で自らを生んだ女王種、つまりアンに従う。

 そしてアンは俺の眷属であり、俺に従う。

 つまり、俺は間接的に優秀な手駒(自宅警備兵)を労せずして手に入れられると言う訳だ。


 まあ、進化しなかったら失敗で死んでたけど。


 そうなったら、統率を失った軍隊蟻が暴れたり、囮役がいなくなったりと、結構面倒なことになっていた。

 でも、なんでかな。

 失敗するって思えなかったんだよなー不思議と。

 進化の魔石の説明を読んで、低層に戻ってアンを見た時、なんか失敗しなさそうって思ってしまった。蟻なのに。


 なんでだろうな?

 まあ、いいか。


 『アンよ、ある程度数がそろったら、それぞれに各階層を守らせろ。あと、今はまだ外には出るなよ。外に出るときは俺が指示する。しばらくは、ホーム内に満ちている魔素だけで十分な栄養になるだろうしな』


 『はい!………て、え?あっ……』


 『ん、どうした?』


 『い、いえ。何でもありません。外には出ませんよ!外には!当然です!り、了解しました地龍様』


 『お、おう』

 

 なんだ?

 まあ、いいか。

 入口も塞いであるようだし、しばらくは見つからないだろう。

 それでも魔力の波動は出ているが、それもわずかだ。


 どんな手練れの人族や魔族であっても、情報がゼロの状態から、俺の住処を見つけるのは難しいだろう。

 多分一年以上は見つからない自信がある。

 まあ、エリベルの資料を全て信じるならだけどな。

 いつかは、現代の知識とエリベルの知識を比べる必要はあるけど、それはまだもう少し先のことだ。もうちょっと準備が整ってからな。


 仮に何らかの理由で見つかったとしても、その時にはもう、こっちの守備は万全に成っているだろう。


 それこそ数か月くらいで、見つからなければ問題はない。


 まあ、流石にそんなことは、ならないだろうけどな。ははは。


 あとはアンが勝手にやってくれる。

 資料によれば、過去に大軍勢となったインペリアル・アントは同格の災害級個体ですら数の暴力によって相手にしたと書いてあった。

 味方の損害を考えなければ、だが。

 そして、災害級とは数百年に一度現れるかどうかのイレギュラー中のイレギュラー。


 これならまず安心だろ。


 さーて、安心したら腹がすいたな。


 深層に行って魔石でも食うかな。

 喰った後はいよいよ魔術の練習だ。

 楽しみだな。

 低層を再びアンに任せ、俺はまた深層へと戻っていった。




ちょっとだけ補足

王級、災害級など、魔物のランクは強さの他にも人類への脅威度によっても変化します。インペリアル・アントは過去に人類に与えた被害が甚大すぎたため、過去の人々が戒めとして災害級に認定しました

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[良い点] アンちゃん可愛いなー
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