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地龍のダンジョン奮闘記!  作者: よっしゃあっ!
閑章 接続章的なお話

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EX10.鎧武者は強者と戦う夢を見るか?

 活動報告にも書きましたが、第八章への接続的なお話となります。

 全三話予定。

 先ずは先日造られた鎧武者君のお話です。

 アースのダンジョン中層にて―――。


 一体のゴーレムが大広間にたたずんでいた。


 その姿は、日本風の兜と鎧を身に着け腰に刀を差し、戦国時代に出てくる武士を思わせる。

 それは人間ではない。

 魔物だ。


 鎧武者ゴーレム。


 名はラセツ。


 一週間ほど前、アースによって新たに創造されたゴーレムだ。

 アースが全身武装化した際の皮膚や爪から作られたゴーレム・ホムンクルスであり、ウナ、ドス、トレスに続く四体目の人型ゴーレム・ホムンクルスと言える。


 ―――ラセツ。

 その名前を貰ったのは、三日前の事だ。


 偶然仕留めた獲物をアースに持って行った際、「そう言えば名前つけてなかったなー」と言われて、ラセツと言う名を拝命した。

 

 名前を頂いた。

 その事に、ラセツは歓喜で泣きそうになった。

 ゴーレムにとって主に名前を付けてもらうというのは最上級の喜びなのだ。

 ちなみに、頭を撫でてもらうのが次点。

 

 だが、偉大なる創造主の前で泣くなんて醜態見せるわけにはいかない。

 ラセツは強い子。

 じっと我慢して、中層に戻ってから大声で泣いた。


 傍から見れば、鎧武者が怨嗟の声を上げてるようにしか見えなかったが、それはまあ、どうでもいい事だ。

 偶然その姿を目撃したデッサン型が恐怖でガタブルになっていた気がしたが、気のせいだろう。


 つーか、人型四体目ならクアトロとかじゃねーのと思うが、アースが四以降のスペイン数字を知らなかった為、普通に見た目からラセツという名前になった。

 アースは頭の弱い子なのだ。

 二歳だから仕方ない。


 ちなみに、名前を貰い、正式にアースの眷属になったことでラセツは更に強くなった。

 


 そして現在。


 ラセツは暇だった。

 この中層ダンジョンには、侵入者はおろか、魔物も殆どやって来ない。

 この一週間で出会ったのは、名を貰う際に仕留めた土蟲一匹と、泣き叫びながら土下座してアン様に許しを請う白いドレスの少女だけだ。


 「誰も来ない……でござる」


 暇だ。

 敵が来ない。

 平和だ。

 それは素晴らしい事なのだが、同時にラセツは退屈だった。

 

 主の役に立ちたい。

 主から貰ったこの力を存分に使い、主を守る刀となりたい。


 あとついでに、敵を切り裂きたい。


 返り血を存分に浴びて、この渇きを潤したいのだ。

 流石に眷属達を殺すことは出来ない。

 それに、戦闘訓練を行おうとも、武装化したアースの爪や皮膚から作られたラセツとの模擬戦に耐えられるものなど限られてくる。

 サイのゴンゾーや、チュランですら相手にならなかったのだ。

 おそらく、ラセツと互角に模擬戦をこなせるのはアンを始めとした筆頭眷属達だけだろう。

 そして、アン達はみんな忙しい。

 ラセツの我儘に付き合せるわけにもいかない。

 退屈だ。

 斬りたい。

 でも、敵はやって来ない。


 「どうすれば良いのかな……あ、違った。どうすれば良いのでござるか…」


 わざわざ独り言を言い直して、ラセツは考える。

 ちなみにこの口調も主であるアースから教わったものだ。

 「え、お前喋れるのか?それなら、鎧武者だし武士っぽい口調の方がいいんじゃね?」と言われたのだ。

 どういう意味か分からなかったが、とりあえず教えてもらった感じの口調を何とか実践している。

 慣れないけど頑張らなくては。

 ラセツは素直なのだ。

 主のいう事は素直に実践するのだ。


 「平和なのはいい事だけど……ござる。でも、僕……じゃない、某の力を振るう機会が無いのもまた事実でござるです……」


 考えて、考えて、考えて。


 「あ、そうか、でござる」


 そこでラセツは閃いた。


 だったら、こちらから冒険者を狩りに行けばいいではないかと。


 そもそも、ダンジョンに入る冒険者を入ってくる前に全て殺せば主の安寧を妨げる敵はいなくなるんだし、自分も力を振るえて一石二鳥。


 両者ウィンウィンの素晴らしいアイディアだ。


 ちなみにその手段は以前ウナやトレスが考えて怒られたのと全く同じ手段なのだが、ラセツは気付いていない。


 だってラセツはまだ生後一週間。

 新生児だもん。

 仕方ないよね。


 と言う訳で、ちょっと冒険者を狩りにいこう。


 目的と手段が逆転してるような気がしないでもないが、こうしてラセツは中層を出て狩りに出かけた。


 「よし、頑張って冒険者を斬りまくるです、でござる」



 暗転。



 場所は変わって、ここはダンジョン・ファーブニル。

 世界八大ダンジョンの一角。

 ラセツは現在そこの第十層に居た。


 流石に、入口に居る雑魚冒険者や商人を無差別に襲う程ラセツも浅はかではない。

 なので、頻繁に冒険者が出入りしているファーブニルのダンジョンで冒険者を狩ろうと考えたのだ。

 

 現在ファーブニルとアースのダンジョンは融合状態にある。

 その為、転移門を操作すればファーブニルのダンジョンへの移動も可能なのだ。

 十層の階層主に話を通し、一日だけここの階層主をやってみる事にしたのだ。


 ちなみに十層の階層主はジュエル・ゴブリンキングと言う魔物だった。

 宝石があっちこっちについた綺麗なゴブリンさんだ。

 ためしにちょっと宝石を取ろうとしたら、えらい剣幕で怒られた。

 ラセツは素直に謝った。


 「さーて、どんな冒険者が来るかなぁ……あ、来るでござるか……です」


 まだ見ぬ強敵との邂逅に胸躍らせながら、ラセツは冒険者が来るのを待った。


 待ってる間は暇なので、素振りをした。

 アン様から教わった武技も復習した。

 ぽりぽりとおやつの魔石をつまんで、たまに階層主さんとジャンケンやあっち向いてホイとかして遊んで。

 階層主さんにも魔石をおすそ分けして、追いかけっこして遊んで。


 そんな感じで時間を潰していると、ついに大広間の扉が開かれた。


 ―――来た。

 冒険者だ。

 一人か……。

 まあ、初の獲物だ。文句は言うまい。


 「さーて、ようやく来てやったぜ、ファーブニル!今まで散々お預けを喰らったんだ!今日こそは楽しませてもらうぜ!」


 入ってきたのは、金の装飾が施された両手剣を持ったやたらとテンションが高い大柄な男だった。

 男はこちらに気付いたのか、じっと見つめてくる。

 

 「……ん?いつもの階層主ではないな。初めて見る個体だ。……ああ成程、あの女が言っていた『転換期』と言うやつか。魔物の生み出されるサイクルも変わったようだな」


 ぶつぶつと呟くその男をラセツはじっと見つめていた。


 ………強い。


 この冒険者は間違いなく強い。

 ラッキーだ。

 まさか、初日からこのような大物に出会えるなんて。


 ラセツは無言で刀を抜く。

 

 「お、やる気満々だな。いいぜ、余としても散々遠征を先延ばしにされてストレスが溜まってたんだ」


 男も剣を構え向き合う。

 ピリピリとした緊張感の中、最初に動いたのはラセツだ。

 風を撒くような速度で、床を蹴り冒険者との距離を詰める。

 

 「ぬおっ!速ぇなっ!」


 だが、男はこれに即座に反応し、剣で応戦する。

 剣がぶつかり合った瞬間、男は刃を滑らせラセツの斬撃を受け流す。

さらに流れる様な動きで男はラセツの足を払い、態勢を崩した。


 「―――っ」

 「はっ!」


 体がよろめいた瞬間、男は唐竹に剣を振るう。

 だが、ラセツは不利な体勢から無理やり体を捻りこれを躱す。

 更に雑巾のように捻じれたままの態勢で、刀を穿つ。


 「おいおい、その態勢から反撃できるのかよ!?」


 足首や腰が完全におかしい方向に曲がっているが問題ない。

 ゴーレム・ホムンクルスであるラセツだからこそ出来る体術だ。

 刀が男の頬と耳をかすめた。

 だが、相手もさるもの。

 振りぬいた剣の柄をそのままラセツのわき腹に叩き込んだ。


 「ぐっ」


 叩き込まれた反動を使い、ラセツは男から距離を取る。


 「…………ふぅ、でござる」


 ラセツは今の交錯で自分の見立ては正しかった事を確信した。

 間違いなくこの男、凄まじい遣い手だ。

 剣の腕だけじゃない。身体能力も優れている。


 剣の腕前ならアン様と、身体能力ならばドスさんに匹敵するかもしれない。


 ははっ。

 楽しい。

 楽しい、愉しい、悦しい!

 これだ。自分が求めていたのはこの感覚だ。

 殺したい。

 この男を殺し、その首を主の元へと届けたい。


 「うぉ……ウォォォオオオオオオッッ、ござる!」


 ラセツは歓喜の叫び声をあげた。

 ちゃんと、語尾を武士っぽくするのも忘れない。

 ラセツは素直なのだ。


 そして、それは相手も同じだった。

 冒険者の男は深い笑みを浮かべる。


 「ははっ、最っ高だな!これだからダンジョンは止められねぇ。こんなのが、潜るたびに現れるんだからゾッとするぜ。余だって何か月もお預け喰らったんだ!楽しませてもらうか!」


 強敵と戦う昂揚感。

 それは何物にも代えがたい最高の快楽だ。

 戦いこそ最高の酒だ。

 これ以上に酔える酒を男は知らない。


 「さあ、もっと闘ろうぜ、階層主。まだまだ、こんなもんじゃねーだろ?」


 ラセツは答えない。

 無言で刀を構えるだけだ。

 小手調べは今ので十分。


 今度は魔力も使った本当の死合だ。


 鎧に、刀に魔力をめぐらせる。

 

 一瞬の視線の交錯。


 次の攻防が始まろうとした―――その瞬間だった。


 ジリリリリリリリリリリ!!!!


 男の左手にはめた指輪がけたたましい音を発した。


 「あぁ?なんだこの楽しい時に――」


 『おいこら!このクソ皇帝!あんた仕事ほっ放りだしてどこに居るんですか!』


 指輪から、男の怒鳴り声が響き渡る。

 通信指輪。

 ウナやドスが持つ通信魔石。

 その技術を応用して作られた魔道具だ。

 その声を聴いて、男の顔に冷や汗が浮かぶ。


 「なっ、ケ、ケルビン!?どうしてもう目を覚まして……?あれだけ大量に睡眠薬をお茶に入れておいたのに……」

 『やっぱりアレはテメェの仕業か!一国の皇帝が大臣にクスリ盛るなんて何考えてるんですか!危うく死ぬところでしたよ!』

 「だ、だってダンジョンに潜りたくて……」

 『だっても案山子もありません!今すぐ、城に戻ってきてください!つーか、あんた今どこに居るんですか?』

 「えっと……ファーブニル……」

 『なっ…!?ちょ、おまっ、あれだけダンジョンに潜るなって言っておいたでしょうが!何を考えてるんですか!大陸会議控えたこの大事な時期に!』

 「で、でも―――」


 ラセツはその光景を呆然と見ていた。

 なにやら、男は指輪から発せられる声と言い争いをしているが、その顔がみるみる悪くなってゆく。

 どうしたのだろうか。


 隙だらけだ。


 斬っていいのだろうか?

 

 でも、こういう状況で斬るのはなんか違う気がする。

 ラセツは誰もかれも斬りたい訳じゃない。

 あくまで、激しい戦いの中で敵を斬るのが好きなのだ。


 なので、ラセツは男が会話を終えるまできちんと待った。

 ラセツは我慢のできる子なのだ。


 そして、会話を終えた男がこちらへ向き直る。

 その顔にはひきつった笑みが浮かんで居た。


 「すまない。急用が出来たので帰る!続きはまた今度だ!またな、階層主!」


 え?

 そう言って男はダッシュで来た道を引き返していった。

 あっという間にその姿が見えなくなる。


 ちょっ、えー…。

 

 その行動にラセツは茫然として、男を追いかける事すら忘れてしまった。

 せっかくの高揚感が台無しだ。

 行き場の無い火照りを鎮める様に、ラセツは近くの小石を蹴る。

 

 「…………ん、これは?」

 

 ラセツは地面に落ちている何かを見つける。

 ピアスだ。

 階層主さんの方を見たが、首を振る。

 どうやら彼の持ち物ではないらしい。

 

 すると、これは先ほどの冒険者の物だろうか?

 もしかしたら先ほどの攻防の際に落ちたのかもしれない。

 せっかくなので、貰っておこう。

 何らかの魔道具っぽいし、エリベルさん辺りに渡せばいいだろう。

 約束の時間も終了したので、ラセツは階層主さんにお礼を言い、中層ダンジョンへと戻る準備をする。


 「次こそは、見事強敵を切り伏せその首級を主の元に届けて見せるです……あ、ござる」


 まだ見ぬ強敵との死合を夢想し、ラセツはその体を震わせた。

 斬って、斬って、斬りまくって。

 その首級を主の元に届けるのだ。

 そして、並べた首を背景に、主に頭をなでなでしてもらうのだ。


 「頑張るです、あ、ござる。僕、じゃなかった某は主の為に頑張るでござるよー!」


 意気込み新たに、ラセツは自分のダンジョンへと戻って行った。



 ちなみにその後、勝手に中層を離れたことがアンにバレて、しこたま怒られた挙句、お尻ぺんぺんされる事になるのだが、それはまた別のお話。




 

 次話はファーブニル眷属筆頭ロブンが主役のお話です。


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