10.龍殺しダンジョンへ挑む
祝百話!そして1,000万pv突破!
本当にありがとうございます。
せっかくの百話なのに、ヴァレッド視点……。ごめんね
それを見た時、ヴァレッドを含めた三人は目を疑った。
ユグル大森林に出来た言われる新しいダンジョン。
三人がここを訪れたのは、『ファーブニル』に出現した魔物“道外し”を追っての事だった。
その為、何らかのアクションがあるだろうと警戒していたのだが、その警戒は別の意味で裏切られることになる。
「これはこれは………凄い光景だねぇ」
ヴァレッドは思わず、そう呟いてしまった。
それも無理はないだろう。
なぜなら、それはおおよそダンジョンには似つかわしくない光景が広がっていたからだ。
商人、冒険者、旅人、吟遊詩人。
人や亜人がごった返し、ひっきりなしにダンジョンへと入っては出て行くではないか。
第一層にある転移門は、北と東の国も結んでいると聞いていたが、それにしたって、まさか利用する奴がこれほど大勢いるとは思っていなかったからだ。
見れば、ダンジョンの入口付近には、出店の様なものまで出来ているではないか。
売っているのは、武器に食料、生活用品とその種類は様々だ。
ただ値段が高い。完全に足元を見ている。
おそらく売っているのは同業者だろうが、それでもこの盛況っぷりには驚かされた。
「し、師匠……。ダンジョンの入口って、ここで合ってるんだよねぇ?」
目の前の光景が信じられないのか、ヴァレッドは確認するように隣にいる鬼族の老人に言う。
隣にいたベルディ―も、片方しかない瞳を見開いてぽかんとしている。
強大な魔物を追ってきたというのに、出鼻をくじかれた気分だった。
「まあ、間違いないの。しかし、凄い光景じゃのう。流石に、『ファーブニル』には劣るじゃろうが、ここまで人の出入りが盛んなダンジョンは中々無いのぅ。儂も面食らったわい………」
ほっほっほと、鬼族の老人は愉快下に笑う。
「まあ、何はともあれ入ってみるとしよう。話はそれからじゃ」
「まあ、そうだねぇ」
そう言ってヴァレッドとベルディーはフードを目深に被る。
一応二人は国際手配されているからだ。
もっとも、二人をとらえられる冒険者や騎士などそうそう居ないのだが、無駄な混乱や騒ぎを避けるためには仕方が無かった。
ついでに、鬼族の老人もフードを被る。
二人と違って顔は割れていないが、なんとなくだ。
「しかし、もう少し大きいサイズの服は無かったのか?この服では窮屈だ……」
フードを被ったベルディーが不満げに口を漏らす。
フードつきのマントの下からのぞくベルディーの衣装は、少々窮屈で体のラインがはっきり浮き出てしまっている。おまけに、へそなんて丸出しだ。
頭隠して尻隠さずなんて言葉があるが、これでは頭隠してへそ丸出しだ。
ベルディーは、普段から露出のお高い服装を好んでいるが、それにしたって、これはどうなんだと不満を漏らす。
「仕方ないだろう?近くの店で売ってたのが、それしか無かったんだからねぇ。………もしかして、また大きくなったのかい?」
ヴァレッドはベルディーの体の一部を見ながら言う。
妹とは違う圧倒的な胸囲力。
きっと妹のパルディーが生きていれば、その胸を羨ましがったに違いない。
「ふぅ……もうとっくに成長期など過ぎているのにな。胸など、戦闘じゃ邪魔なだけだ。私もパルディーの様に小さい胸が良かった」
無防備に自分の胸をゆするベルディー。
近くにいた冒険者や商人たちはその光景に目を奪われているが、ヴァレッドは貧乳派だし、師匠は尻派だ。
ついでに、ベルディーもそう言った視線には無関心だったので、三人とも自分たちに向けられる視線の意味に気付かなかった。
敵意や悪意には敏感な三人のSランクはそう言った視線には無関心だった。
なんだかんだ言いつつ、三人はダンジョンへと入って行った。
「いやはや、これは凄いねぇ……。エンデュミオンで噂だけは聞いていたけれど」
ヴァレッド本日二度目の驚きである。
フードの下から見える景色。
そこには、まるで市場の様な光景が広がっていた。
ダンジョンに入り、しばらく歩いた先にある中央の大広間。
マッピングが済んでおり、エンデュミオンの冒険者ギルド支部で師匠が買ってきたそれを見ながら、先へ進もうと思っていたのに、人の波が多すぎて、歩いているうちに自然と中央広間についてしまったのだ。
そして、そこには市場が広がっていた。
人種も国も多種多様だ。
向こうに見える黒鉄鋼を売っているのはハルシャルード聖王国の商人だろうか。
その隣の果物。あれは柿だ。倭の国のモノに違いない。
更に、倭の国にしかないカタナと呼ばれる武器を売っている出店もあった。
奥の方には、宿泊用に使うのであろうテントが張ってある場所まである。
その隙間からは、何やら賭場の様なものをやっているテントも見える。
既にああいうのまであるのか、とヴァレッドは驚いた。
更に先程、説明をしてくれたエンデュミオンの冒険者ギルドの職員。
そこの職員が、何やら下へ向かう階層の近くで受付をやっているではないか。
近くの人に聞くと、転移した先でも各国のギルド職員が、このダンジョンに派遣されているとの事。
「…………ここは、本当にダンジョンなのか?」
ぽつりとベルディーは感想を漏らす。
それはヴァレッドも同意だった。
常識外れのダンジョンと言うのは今までいくつも見てきたが、それにしたってこれは無いだろう。
ここまでくれば、もはやダンジョンではなく、ただの市場だ。
交易都市という言葉が頭に浮かんだ。
都市と言うには程遠いが、その原型の様なものがすでに出来上がっている。
「まあ、ダンジョンには違いないだろうけどねぇ」
ヴァレッドは下に続く階段を見る。
そこには冒険者達が溢れていた。
彼らもダンジョンに挑む者達なのだろう。
「それで、師匠どうするんだい?このままダンジョンに潜るんだよねぇ?」
「ああ。じゃが、それはお前たち二人じゃ。儂は、このまま森の方へ向かう」
「え?」
その返答にヴァレッドは多少面食らった。
てっきり三人で行くものだと思っていたからだ。
「儂の“占い”で分かるのは大まかな位置までじゃ。ユグル大森林とは出たが、それが果たしてダンジョンなのか、それとも森の方を指しているのか。それまでは分からん。じゃから、ここからは二手に分かれて、捜索を行う。良いな?」
「うむ、私は別段構わない。ヴァレッドもそれでいいか?」
師匠の言葉に、ベルディーは頷く。
「うーん………」
だが、何故かヴァレッドは渋い顔だ。
「ん?どうした?」
「いや、そのねぇ。師匠、もしかして、さっき向こう側の方に見えた賭場の方に向かうつもりじゃないだろうねぇ?」
ぎくり、と鬼族の老人の肩が揺れた。
やっぱりかとヴァレッドは思った。
そう、この老人。大の賭場狂いなのだ。
しかも、必ず負ける。鬼なのにカモなのだ。
それも、ネギに鍋とお玉と取り皿までついている極上のカモなのだ。
「ああっ!やっぱりねぇ!ダメだって、師匠がやったら、どうせ負けて身ぐるみ剥がされちゃうんだから止めといたほうが――――」
「ええい!黙らんか、馬鹿弟子が!」
「ぐはぁっ!」
怒鳴り声と同時に拳が飛び、ヴァレッドが吹き飛ぶ。
綺麗に錐揉み回転しながら壁にめり込む。
周りの人たちは特に気にしていない。
そんな事でいちいち騒ぎ立てる様な性格の持ち主が、ダンジョンに挑んだり、内部で商売しようなんて、思う筈が無い。
したがって、スルー。
愉快な現代オブジェ・ヴァレッドverの完成である。
「良いからさっさとダンジョンに潜らんか!ここから先は別行動じゃ!良いな!」
強引にそう言い切り、鬼族の老人はテントの方へ消えて行った。
うっひょーい!という叫び声は聞かなかったことにする。
アレでも、自分たちの師匠で、自分達よりも年上で、自分達よりも遥かに強いのだ。
なにせ、かつて国を相手に一人で戦争を仕掛けた程のなのだから。
「さて、行くか、ヴァレッド」
しれっとした顔で、ベルディーはヴァレッドに手を差し出す。
というか、引っこ抜く。
うん、ヴァレッドは無事だ。
「うぐぅ……君もブレないねぇ……」
やれやれと、頬を擦りながらヴァレッドとベルディーは出したに下りる階段へと向かて行った。
そして、ダンジョン内部――――。
結論から言えば、難易度はそう大したことは無かった。
仮にもSランクの二人だ。
向かって来るゴーレムは数は多いが、そんなもので倒れる二人ではない。
既にマッピングされた道をぐんぐん進み、あっという間に第七階層までやって来てしまった。
「ふぅ、とりあえず、ここまでくればフードをとっても大丈夫かねぇ」
「問題ないだろう。ここから先の階層は、殆ど人の気配が無い。見てる者などいないだろう」
「しかし、外では今何時位なんだろうねぇ?ダンジョンは時間の感覚がなくなっちゃうからねぇ」
「既に、潜って半日は経過している筈だ。おそらくは、明け方頃だろうな」
「そっか。それじゃあ、そろそろ師匠は身ぐるみを剥がされてる頃かねぇ」
「後で戻った時が大変そうだな……」
そう言って二人はフードを取る。
露わになる二人の顔。
だが、ダンジョン内には他に誰もいない。
素顔を見られても、問題は無いのだ。
だが、二人はフードを取るべきではなかった。
一匹の駄龍がまさに、そのフードを取った瞬間を見つめていたのだから。
次回はアースさん側に戻ります




