1.目が覚めると地龍になってました
暇つぶしにどうぞ
目が覚めた。
ん………う~ん。よく寝た
あーだるい。寝た感じがしない。
残業で疲れてるし、全然疲れがとれない。
もう、三日くらい寝ていたい。
ていうか仕事行きたくない。
転職しようかな、ノルマきついし。
でもこの年で今更職変えるのもめんどーだなぁ。
ダラダラと益体もない事を考えながら体を起こそうとする。
ゴツン。
痛っ。
何かにぶつかった。
なんだ?
そこで俺は気づく。
周りが真っ暗で妙に暗い。
おまけに、なんだろうか、閉塞感?のようなものを感じる。
息苦しい。
なんだこれ?
ぺたぺたぺた。
うん。状況把握。
俺を囲むように周囲に変な壁みたいなものがある。
おまけにこの壁、妙にヌルヌルする。
木箱か何かか?でもなんで濡れてんの?
はて?では俺はどうして箱詰めされているのだ?
え?もしかして誘拐?
拉致監禁?
マジで!?
言っちゃなんだが、平凡な社畜サラリーマンである俺は、拉致監禁といった非日常とは程遠い日常を過ごしていた。
貯金も少ないし、独身で親も田舎でのんびり暮らしている。
彼女だってもちろんいない。
ははっ。
窓際族の俺は、会社で恨みを買われるようなことをした覚えもない。
つまり、何が言いたいかって言うと誘拐される理由はない。
自分で言うのもなんだが、俺はこれでかなり人畜無害なんだ。
もちろん拉致に合うような危ない場所だって行くことはない。
ビビりだし。チキンだし。歌舞伎町とかだっていかないんだぞ。
じゃあ、どうして俺はこんなところに?
訳わかんねーよー!
叫びながら俺は手をぐるぐる振り回した。
ばきん!
箱はあっさりと壊れた。
あれ?
箱が壊れて、光が差し込む。
眩しい。
よく見ると、木箱じゃない。
なんだろうか?
白い、薄い殻?それに表面がヌメヌメしている。
これって………?
何やら見覚えのあるその形。
そう!卵だ。
卵って表現はいちばんしっくりくる!
………ん?卵?
俺は妙な予感がして自分の体を見る。
土色の爬虫類のような腕があった。
指は四本で長い爪が生えている。
え?
足を見た。
同じく土色の、ざらざらとした鱗に覆われた脚があった。
……………ええ?
先ほど砕いた卵に、光が反射して、うっすらと俺の全体像が映し出されている。
そこに映っていたのは、一匹のトカゲ。
いや、この姿はどっちかと言えば………。
―――龍?
こうして俺は、龍に転生した。