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第6話 暗くなるまで待って

予告通り飛んで第6話になります。大筋に於いて内容は分るかと思います。

 「へー空ガのライブDVDじゃん」

 そう言うと国見はDVDを棚から取り出しジャケットを眺めた。

 「空ガ?」

 俺が聞く。

 「そう。ここの地元アイドル、空色ガールズ。去年リーダーのかりんが卒業した時の卒業公演のだな。500円だって」

 国見は地元の奴で同じ大学の同級生だ。入学して直ぐに友達になった5~6人の内の1人で、実家から車で通っていて何故か俺のせどりにも興味があるらしいので良く俺の足になってくれる。と言う訳で今日もこいつの車でブックドムに来ている。

 「ちょっと見せてよ」

 そう言うと俺は国見からDVDを受け取りジャケットを眺めた。検索してみる。AMIZONには販売されてない。

 「国見これ売れるよ。AMIZONでは出てないけど、多分ヤブオクみたいなオークションなら高値で売れる。こういうのって会場限定販売だったりして一般では手に入らないから。多分ここで500円なのはAMIZONに載ってないからだ」

 「まじか。オークションのやり方教えろよ。俺も自分でやってみるから」

 国見はニコニコしながら俺にやり方を聞いて来た。こういう奴は1人でどんどんやり方を覚えて行き、伸びる。逆にマイナス思考の奴は駄目だ。失敗する事を恐れる奴には何も教えたくなくなる。

 「いいよ。教えてやるよ」

  

 その後10分程して、国見と俺はそれぞれの買い物を済ませ、ブックドムを後にした。

 外はじめじめの雨。今は6月の後半、時間は夕方の5時半位。

 カナブンから今日は1度も連絡が無い。カナブンとは佐藤可那。地元の商業高校2年生で、俺の彼女だった。昨日までは。やっぱり怒ってるのかな?

 俺がそんな事を思い、ボーっとしてるうちに駐車場から国見が店の前に立つ俺の前に車を着けた。

 国見の中古のワゴンRのドアを開け俺は乗り込む。

 車は駅前のアーケードを横目にこの街の中心街を走る。

 俺と国見がタバコを吸いながらたわいもない話をしている時だった。

 「あれ、可那ちゃんじゃね?」

 「え?」

 「あそこ男と歩いてる。制服着てるな。同じ高校の男か?どうする?止まって声かける?」

 俺は何故か心臓がドキドキした。なんでカナブンが男と歩いている?なんで国見が気付く?俺はどうすれば良い?国見は昨日の俺とカナブンの事知らないし。そもそもカナブンの方を良く見る事が出来ない。

 「どうした?」

 何も言わない俺を見て、国見が車を脇に寄せて止まり、言った。

 「ああ、友達だろ?いいよ。声かけなくて。行こう」

 まだ心臓がドキドキしている。それだけ言うのが精一杯だった。

 「そうか」

 そう言うと国見は車を出した。

 多分国見はこのまま引き下がらない。今日はこれから根掘り葉掘り聞かれ、カナブンと別れたみたいになってる事も話さなくちゃならないだろう。あー面倒臭い。

 それにしてもチラッと見たカナブンの横にいたの、晃じゃないか?

 思い出すと頭に来る。騙された自分にも、騙した晃にも。

 そういう事か。


 5月の中頃、俺はある事をきっかけにカナブンこと佐藤可那と付き合う事になった。そして程なく大学の仲間数人とカナブンが俺のアパートで鉢合わせになった。基本的に大学の仲間はいい奴だったので、直ぐにカナブンも混ぜて遊ぶようになり、いつの間にか奴らのマスコット的存在になっていた。あ、しかし以前出て来た佐々木は別だ。あいつは今も学校にいるが、あの後俺とは疎遠になっている。

 

 だいぶ空も暗くなって来て、国見の車は俺のアパートに着いた。

 この辺は大学の近くで俺の住むアパート以外にも周辺に2桁程アパートが立ち並ぶ。俺の友達も結構いたりする。

「お前は馬鹿か?言ったよね?言ったよね?って詰め寄られて、言いました。って言う奴あるか?それも可那ちゃんの目の前で。普通は言わないって通すんだよ。信じられないよ。馬鹿すぎて」

 俺の話を聞いた国見は熱くなって車の中からずっとこんな感じだった。

 言われなくても今となっては俺だって分ってる。つーかこいつ、部屋の鍵を開ける俺の横に並んで、まさか帰らずこのまま俺に説教続ける気か?


 「あ、只野帰ってきた」

 俺が丁度ドアを開けたとき、隣の部屋の白石がドアを開け声をかけて来た。

 「なんか用?白石」

 「よ」

 国見も知り合いなので声をかける。

 「さっき友達とお城山公園から帰って来たんだけどさ」

 お城山公園とはこの街東側にある城跡のある小高い山の公園の事だ。

「6時半位かな?俺たち車で山下りてく時歩いて上がってくカップルいてさー。女の子可那ちゃんだったんだけど?」

 隣の部屋の白石も当然カナブンの事を知っていた。

 「友達だろ?相談事とかじゃないのかな」

 それだけ言うのが精一杯だった。

 「でもあそこ夜はデートスポットだろ?大丈夫か?」

 「そうなの?」

 知らなかった。不安でまたまた心臓がドキドキしてきた。晃の野郎!あーカナブン。

 「でも可那ならきっと大丈

 「大丈夫じゃない!やばいぞ!只野」

 俺の言葉を遮り、国見が叫ぶ。

 「お前ら地元じゃないから知らないけど、あそこ夜はヤバイ連中もたまに来るんだぞ。暴行事件とかあったんだから。車ならともかく歩きで夜行くのは女の子は危ないよ」

 「そうなの」

 あまりの展開に俺は呆然と言う。

 「いいから只野、俺の車で行くぞ。白石どーする?」

 「可那ちゃん心配だからなー。岩沼に連絡して皆で車で後からすぐ行くわ」

 「了解」

 そう言うと国見は呆然としている俺を助手席に乗せ、急いで自分も運転席に乗り、中古ワゴンRをお城山公園に向け走り出した。

 「只野、可那ちゃん初めて出来た彼女なんだろ?簡単に別れるなよ」

 運転しながら国見が言う。

 なんだこいつ、カッコ良くて、スゲーいい奴じゃんか。

 俺は幸せ?

      

                  つづく


 


読んで頂き有難うございます。次回掲載は第4話になります。

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