第1話 ミツバチのささやき
(お、これは!)
俺は心の中で呟いて、棚からそのDVDを取り出した。
『ミツバチのささやき』
検索アプリでバーコードをチェックする。
中古でも6000円近く付いている。
DVDの値札をチェックする。3000円。
(いける!)
類似品がないか国内最大手のネットショップAMIZONを調べる。
他になければ買いだ。差額3000円、手数料等引いても1500円位儲けが出る。
「あっ」
思わず声が出る。
スマホの画面には『ミツバチのささやき』DVD 6月中旬発売 2980円と出ている。
駄目だ。再販だ。もはやこの映画に価値はない。終わった。
俺はDVDを棚に戻した。
俺の名前は只野幸作。今年この東北の中堅都市にある、3流大学に入学した大学生だ。
趣味は見ての通り<せどり>。
高校の時に親父のクレカを拝借してAMIZONの出品者登録をしてから珍しい商品を見つけては販売している。一応は事業主。格好付ければ、社長だ。
更に言うと3日前に彼女も出来た。
同じ街にある商業高校に通う女子高生だ。リア充だ。
彼女との話しはまた何処かの話数で話すとしよう。とにかくこの作者は書くのが遅いので、500字で1時間位かかる。3時間で1500字以内これが奴の1話の限界だ。話を早めないと今回の話の終わりまで行かない。
と言う訳で、とにかく俺は今絶好調なのだ!
ぶるぶるぶるぶる
とここでスマホに電話が入る。
名前を見る。佐々木だ。
「何、俺忙しいんだけど。相談?え~そりゃそうだけど。うーん。分った分った。行くよ行くよ」
俺は電話を切り古本屋を後にした。(最近の古本屋はDVD・CD・ゲームソフト等も置いてあるのだ)
はてさて、何の話か分らないと思うので説明すると、佐々木は同じ大学同じ学科の同級生だ。入学したての頃2人で良く、この大学の悪口を言っていた。
“こんな田舎の3流大学じゃ駄目だ”
“1浪してでももうちょっとマシな大学行かないと”
“さっさと辞めようぜ”
こんな感じだ。
そして佐々木の話というのは
「お前も辞めたいって言ってたじゃんか。一緒に辞めようぜ」
と言う話だ。
今やリア充の俺の答えは簡単だ。
(NO-! 辞めたきゃ勝手に辞めろ!)
と、佐々木に言うだけの話。それにしても相談があるとか面倒臭い言い回しをする奴だ。
作者の作業能力の都合上、俺は佐々木との待ち合わせの喫茶店に着いて、奴の愚痴の様な話を聞かされ早1時間程経っていた。
「だからさー、やっぱり辞めてやり直した方がいいのかなー?どう思う?」
「お前も辞めたいって言ってたじゃーん」
「こんな田舎の3流じゃ将来の保証も無いよな?」
佐々木は先程からもう3回以上同じ事を言っていた。
「あのさー、相談って大抵相談じゃないよな。お前俺の意見聞かないだろ?結局自分でもう決めてるくせに相談してるだろ?俺が決めたらそれに従うか?従わないだろ?結局相談って自分の望む答えを俺から引き出そうとしてるだけじゃないのか?お前は辞めたきゃ辞めればいいし。俺は辞めないから」
俺は佐々木にビシッと言ってやった。当たり前だ。女子高生とリア充なんだぞ。それもまだ付き合って3日しか経ってないんだ。死んでもこの土地は動かん。
「でもさーお前も言ってたじゃん。こんな田舎の街つまんない。東京の大学行きてーって」
佐々木はしつこい。そんな昔の事、何で何回も蒸し返すんだ。段々こいつがムカついて来た。
「あのさー今は」
「なに?」
佐々木がきょとんとした顔で聞き返す。
俺はリア充で幸せな4年間を此処で過ごすんだ!
「ここで幸せ!」
俺の唾が佐々木の顔面にかかった。
つづく
予定通り1500字以内でした。
1500字で精一杯。
読んでくださった方は有難うございます。