地球人
宇宙船の中に五人の人間が並べられ眠っている。
「こいつらが地球人か……」
「はい……」
「それにしても、この星の奴らは見た目が微妙に違うな」
「はい、この星を調べてみました所、数種類いる様ですが今回連れてきたのは、アメリカ人、イタリア人、ドイツ人、イギリス人、日本人で五種類とも男性です」
「だんせい……?」
「はい、地球人には、さらに男性と女性の二種類に分別され、最近のデータでは、男性と女性が合わさった新しい種類も増えてきている様ですが……」
「よくわからないが、早くわしの体に〝臆病ではない部品〟をつけてくれ」
「はい、地球人の部品はとても優秀なのですが、臆病というデータがありますからね」
「どのように説得するのだ?」
「はい、まずはアメリカ人から説得しましょう」
そう言って、宇宙人はアメリカ人男性を起こした。
「あなたの右腕を切り落として下さい」
「い、いやだ!」
アメリカ人は叫んだ。
「右腕を切り落とせば、あなたは英雄になれますよ」
宇宙人が笑顔でそう言うとアメリカ人は勢いよく右腕を切り落とした。
次にイタリア人を揺り起こすと宇宙人はこう言った。
「あなたの左腕を切り落として下さい」
「切り落としたくない、助けてほしい……」
イタリア人がそう言うと、宇宙人は少し笑みを浮かべてこう言った。
「左腕を切り落とせば、あなたは女性にモテますよ」
イタリア人は目を閉じて、一呼吸おいてから左腕を切り落とした。
「次はドイツ人だな、大丈夫か?」
「はい、少々説得しにくいのですが多分大丈夫です」
宇宙人はドイツ人にこう言った。
「あなたの右足を切り落として下さい」
「なぜ、切り落とさなければならないのだ?」
ドイツ人は頑なに拒んでいる。宇宙人は資料を見ながら、少し考えて、こう言った。
「信号機の青色は進めで、赤色は止まれですよね? 別に他の色でも良いのに、なぜこの色なのでしょう?」
「そういう規則だからだ」
ドイツ人が呟くようにそう言うと、宇宙人は真剣な眼差しでこう言った。
「今、右足を切り落とすのは、そういうルールだからですよ」
そう言われるとドイツ人は有無を言わずに右足を切り落とした。イギリス人は今までの経緯を聞いていた。
「私は左足を切り落とすのかね?」
イギリス人がそう尋ねると宇宙人はこう言った。
「あなたは紳士ですから、切れるでしょう」
そう言われるとイギリス人は、ためらいもなく左足を切り落とした。
「最後は日本人だな……切る所が難しそうだが、うまく説得できそうか?」
「はい、日本人男性は、一番最後に説得しやすい種類ですから簡単ですよ」
宇宙人はそう言って、日本人男性を起こした。
「あなたの腹を切って下さい」
日本人男性は小刻みに震えながら、無言のまま顔は青ざめている。
「おいおい、大丈夫なのか?」
「心配は入りません、こう言えば大丈夫です」
宇宙人がそう言うと、日本人男性の耳元でこう囁いた。
「皆さん、切っていますよ」
完
それでも、私は日本人に生まれてきて良かったです。