物事の始まりは何時も突然
前略
拝啓 常葉小夜子様
草花は活き活きと緑を茂らせ、日々成長を見るのが楽しく思える季節がやって来ました。小夜ちゃんは夏は嫌いでしたね。虫が大の苦手で蝉を見ただけで気が動転してしまう程でしたね。
この度私にも夢を現実に変えるチャンスが訪れました!次会うときは私もひと皮剥けていると思います。近い内に会いたいですね。お元気で。
中嶋喜美子より
追伸.近いうちにまた引っ越します。新居は懐かしいあの街なんだよ!
ふと目が覚めた、時計の短針はまだ3時を指す前だ。一体いつ頃から眠っていたのだろうか…。なんだか随分と懐かしく怖い夢を見ていた気がする。
「あぁ~ぁ」
ふと声を出したくなった。
自分以外の誰かが居ないことが酷く怖ろしい事に感じ
沈黙と闇が酷く恐ろしく感じられたからだ。
原因はあれだ…昨日の電話。古い友人の葬儀を知らせる電話。
その内容はあまりにも唐突すぎた…
『…もしもし。キミちゃんかい?羽生の小夜子のおばちゃんだよ。覚えてるかい?』
「…はい」
その名前は直ぐに出てきた。
おばさんの声はどこか生気がなかった。
「お久しぶりですおばさま。どうかなさったのですか?」
『いや…ねぇ…一週間前から小夜子が居なくなってねぇ』
「えっ!?小夜ちゃんが!?」
『そうなのよ…そしたら今朝警察から連絡がきてね…うっ…うぅぅ』
そう言い終わるか終わらない内におばさんはいきなり泣き始めてしまった
「も、もしかして…」
私はこの時直感した。小夜ちゃんに不幸があったことを。
『小夜がね…小夜がイタイで発見されたって…』
おばさんはそう言うと携帯のスピーカーが吹っ飛んだかと思うくらいの大声で泣き叫びだした。
「おばさま!落ち着いて!今から私そちらに行きます!」
そう言うと2、3こと会話を交わし受話器を切った
運良く大学はまだ長期休暇中だ。
羽生は山に囲まれた田舎っぽい田舎町だ。羽生まで新幹線を一時間も乗れば行ける。
私は小夜ちゃんの死を聞いたのに自然と落ち着いていた。
これが私の東京での最後の記憶だ。
そして今私は羽生に居る。