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【30秒で読める怪談】通学路の怪

掲載日:2024/12/25





高校生のとき、私は自転車通学でした。


いくら寝ても寝たりない高校時代ですから、毎朝、遅刻ギリギリまで寝て、母にたたきおこされるのがいつものパターン。


ねぼけまなこで朝食をかきこみ、急いで自転車に乗ったものです。


そして学校が終わると、部活をしていなかった私は、沈みかけた夕日に照らされながら、自転車をこいで自宅へ帰りました。


家から学校までは、だいたい30分ほど。


いつも決まった道です。


その道の途中に、あるおうちがありました。


高さ2メートルほどのブロック塀に囲まれた一軒家。


割と古いおうちで、元はクリーム色だったろう壁は、すっかりくすんでいます。


小さな庭もついているようでした。


「ようでした」と言ったのは、塀の高さが2メートルもありましたから、はっきりと中を見たことはないのです。


ただ、玄関前に門があり、その鉄格子の隙間からチラッとお庭が見えたのです。


芝生の敷かれた庭でした。


それだけならどうということもないのですが、気になることが一つ。


その小さな庭には、ベンチがおかれていました。


そのベンチに、いつもおじいさんが座っているのです。


年は80歳くらいでしょうか。


茶色のチョッキを着て、下はグレーのスラックス。


ぼんやりと夕日を見ているような感じでした。


そのおうちの前を自転車で通りすぎる際に、門の隙間からチラッと目に入るだけですから、私もはっきり見たわけではありません。


でも、私の下校時には、いつもそのベンチに座っていらっしゃいました。


おそらくほぼ毎日だったと思います。


当時は、そのおじいさんの日課なんだろうな、と思い、特に深く考えたりはしませんでした。


やがて私は高校を卒業し、東京の大学へ行きます。


さらに十数年がたち、先日の土曜日に高校時代の同窓会がありました。


私も含め東京から参加した者も多く、最終的に100名近くが出席。


思い出話や現在の仕事の話で盛り上がり、本当にいい会だったと思います。


翌日の日曜日。


何人かの同級生と、卒業した高校へ遊びにいくことになっていました。


ちょうどその日が高校の文化祭だったので、日曜日でも恩師の先生方が学校にいらしたのです。


実家に泊まっていた私は約束の15時に合わせ、家を出ました。


移動手段は、あえて当時と同じく自転車。


途中、あのおうちがある道を通りました。


高校時代から数えて、十数年がたっています。


あの家自体がなくなっているかもしれません。


正直にいうと、完全に忘れていました。


でも、あの家の近くに差しかかった途端に、思い出したのです。


あの家はまだあるでしょうか?


ドキドキしながら角を曲がりました。


なんと、あの家はまだありました。


古びた感じも、くすんだ壁も当時のままでした。


あのおじいさんはいるでしょうか?


いるはずがない。


もう十数年たってますから、亡くなっていても不思議はないのです。


自転車で門の前を通りすぎる際に、私は鉄格子の隙間から庭へ目をやりました。


すると……


あのおじいさんはまだいました。


あのときと同じ格好で、あのときと同じ姿勢で、ベンチに座っているのが見えました。


私は30メートルほど進んだところで、引き返しました。


高校生の頃の私なら絶対にできなかったでしょうが、私はあのおうちの前へ戻ったのです。


そして門の隙間から中をのぞきました。


懐かしい思いと同時に、真相を追求したい感情が込み上げてきたのです。


でも、おじいさんはいませんでした。


ベンチは元の場所にありました。


しかし、おじいさんは座っていなかったのです。


芝生の上に、空のベンチが一脚あるだけ。


私は狐につままれたような気持ちでした。


私が高校の3年間、ほぼ毎日見かけていたあのおじいさんはなんだったのか?


見間違いとは思えません。


幻だったのでしょうか。


頭をひねりながら顔を上げた瞬間、私の目の前にあのおじいさんが立っていました。


完全に不審者を見る目で、私をにらんでいました。


急いで逃げ出したのは、言うまでもありません……










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― 新着の感想 ―
古い家、そのワードだけで深く謎に満ちたミステリーが蠢いていますね。 ラストでのおじいさんがまた、謎の存在です……
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