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31. ハロウィン

 いざ迎えしハロウィンの夜。

 アリソンは魔女の正装を身に纏い、門の前に立つ。傍らには、使い魔の黒猫と魔鳥。背後には、掻き集めた三十のお化けたち。既に準備は整った。

 日が沈む。暗闇の季節が始まる。現世と霊界の門が今開かれる。

 アリソンはお化けを引き連れて、現世への侵攻を開始する。

 闇に沈んだ人の世は、各所かがり火が焚かれていた。人々は霊を閉め出さんと、家の戸を閉ざしている。しかし、それが如何なる障害となろうか。このアリソンのお化け一行(パーティ)の前では。

 アリソンが指を一つ鳴らせば、家という家の扉が開かれる。お化けたちがいっせいに雪崩込む。赤く恥じらうお化けも、さめざめとした青いお化けも。飢えた目をした黄色いお化けも、緑に沈み込むお化けも、白い布を被ったお化けも。みんな本領を発揮して、人間たちを脅かす。

 丸く四角く形を変えて、長く短く弄んで、ときに人の姿になりすまして。

 山へ逃げようとも、海へ逃げようとも、お化けは人間を逃がさない。空へ地中へ、ときに宇宙へ引きずり込んでいく。

 学校、アパート、道路、お屋敷も廃墟も、人の暮らすあらゆる場所を暴き。

 喜怒哀楽など意に介さず、無感情に人々を絶望に追い立てる。強きも弱きも関係ない。人ならざるものの恐怖を見せつけ、ときに可愛さで油断させ、見えない地獄に叩き込む。

 魔鳥が切り開き、黒猫が先行く魔女と幽霊の行進。光の季節が訪れるまで、現世は阿鼻叫喚に包まれる。


 昔々。魔女は人間の良き隣人だった。

 だが、いつからか人間は魔女を厭うようになった。ときに迫害し、ときに殺した。

 魔女は、現世を捨てて、霊界に逃げるほかなかった。

 悲しくはあったが、それでも魔女たちは境遇を受け入れ、ひっそりと穏やかに暮らしていた。

 ……それなのに。

 人間たちの業の深い行いは、霊界にまでも強く影響を及ぼした。嘆きと苦しみの集う場所と化してしまった。死してなお嘆く霊たちに、魔女たちは心を痛めた。

 そして、かつての恨みが蘇った。

 だから、アリソンは立ち上がった。愚かな人間に報復するために。蔑ろにされてきた者たちの怒りを見せつけるために。


 ハロウィンの夜。人々は思い知る。人ならざる魔の恐ろしさを。

 決して迷信と侮るなかれ。

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