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20. 廃墟のお化け
コンクリートの壁に月明かりが染み込んでいるようだった。ここは冷たい。広々としているのに、埃っぽいし。お掃除したいとアリソンは箒を握りしめた。
伽藍洞の廃墟の中は、半透明のお化けでいっぱいだ。行き場をなくした子たちが身を寄せ合って。
『こっちへ、おいでよぉ』
迷い込んだ者をそちら側へ引きずり込もうとする。今もほら、何処かから引っ張り出した包丁で、アリソンに襲いかかる。
アリソンの前に、ヒヨコが立ちはだかった。いや、もう大きく立派な若鳥だ。嘴から炎を吐くと、廃墟のお化けは散り散りになって逃げ出した。
「残念ね。私はあなたたちの仲間にはならないわ」
アリソンは、お化けを従える者だから。同じものにはならないのだ。