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10. 人型のお化け
人間だったときが忘れられないと、そのお化けは言った。だからまだ、人の姿をしているらしい。
「そんなに良いものだった?」
アリソンは少し不思議。出逢ったお化けはみんな、死ぬ前のことなんて忘れていた。色も形も自分の好きなようにして、自由気ままに過ごしている。
「どうでしょう」
人型のお化けは視線を遠くへ飛ばす。彼女はメイドだったらしい。ご主人様のために精一杯働いてたとか。
「……良い思い出はありません」
働き過ぎで死んだのだとお化けは言った。死ぬほど働いたから、そうしていないと落ち着かないと。習い性というやつか。魂の形もそれに従った。
「ろくでもないね」
ヒヨコが翼を挙げて応えた。あの翼、だいぶ大きくなってきた。