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番外編「ルルと楽しくないかんせん3」


番外編「ルルと楽しくないかんせん3」


病院の帰りにコーンに乗った特別な二段アイスを食べて気持ちだけ元気になったルルは解熱剤で一時的に熱が下がったことで更に病気が治ったと勘違いして無理にはしゃぎ、案の定次の日興奮のし過ぎで再び熱を出した。


「はふ、はふ…あれママほいくじょは……?ほいくじょ行こうよー…」

「ルルはこれから一週間はおやすみ!病気がうつっちゃうからお兄ちゃんたちとも遊んじゃダメよ」


処方された薬を飲ませて自室のベッドに寝かせ面倒をみるルーニャはその日から一週間在宅勤務を選択し、自社や取引先とのオンライン会議の合間合間で手が空く度にルルの様子を見に行っていた。


「そんなーそんなぁー…マドルクだっこ」

「はいお嬢様。あとちゃんと靴下履いてください体を冷やさないようにしないと」


熱で寝込んだ娘は基本自分の部屋だけで過ごし食事をとり、専属のボディガードとは多少触れ合っていたが一応隔離はしていたのだ。だが時すでに遅しだったらしい。数日後には兄のディアロとポアロにも似たような症状が現れ始めた。

そもそも保育所の方にはまだ水ぼうそうになった子供がおらず双子の通う幼稚園ではもう何人も休んでいることから考えると、潜伏期間に違いがあっただけで先に感染していたのは兄の方だったのかもしれない。

こうなってしまうと片手間の世話だけでは間に合わず仕方がないので社長業をしている母親は仕事を諦めて一週間休みを取り子供たちの看病に専念することにした。


「ルルはどこ…ルルがいないとボクしんじゃうよ……」

「大袈裟なんだからもう。大人しく寝てなさいあっ、こらどこ行くの今歩いちゃダメよ熱あるんだから」

「ルルのへやでねるぅ…うぐっえぐっ」


まず熱を出したディアロが妹を求めて意識が朦朧とした状態でふらふらと家中を彷徨い始め、おぼつかない足取りでは階段を上がれずルルの部屋に辿り着けないと分かると寂しがってその場にしゃがみ込み。母親がいくらあやしても慰めても泣きやまなくなったため急遽リビングに布団を敷いて二人を寝かせた。


「はーいねんねよねんね~♪ポアロは良い子ねーその年でもう一人で眠れて」

「え、ディアロはちがうの……?」

「あははあの子はルルと一緒に寝てるのよまだまだ子供ねぇまあディアロの場合おっきくなってもルル大好きだろうけど」


それを聞いたポアロの瞳が潤む。涙目が発熱によるものかと思った母は気にせず布団をぽんぽんと叩いて子守歌を歌うが彼はもうそんな歌は耳に入ってこないようでぷるぷる震え。


「……。オ…」

「お?」

「オ゛レもルルといっしょにねるぅう゛ぅぅ!!!」


――で、現在リビングには兄妹三人を布団に寝かせて転がしてあるのだった。

兄たちは間にルルが挟まっていると不思議と静かに眠るのだ。普段はイタズラと喧嘩ばかりするポアロまでぴっとりと妹にくっ付いて寝息を立てている。お子様体温には同じくらいの温度が落ち着くのだろう。

なお真ん中に寝転がるルルは熱もだいぶ下がってお昼寝タイムはまだまだ先で暇なので、うつ伏せ寝で絵本を読んだり空中の楽器に指を乗せエアギターとエアピアノで脳内にある曲を演奏して遊んでいる。


そうしてこまめな検温に面会を予定していた取引先への詫びの電話にと、結局休んでも普段より忙しい朝のドタバタを乗り越えて今はぐったりとソファに横になっている母親にルルは話しかけた。


「ママすごくつかれてる、ママもおふとん来る?」

「ふー…私は大丈夫よ少し休めば元気になるから。にしても今回はおたふく風邪の時みたいに園内総感染にならなくて良かったわね、我が家だけで済んで」

「おたふく……それいつのびょうきだっけ、ルルがたくさんゲーゲーしたやつ?」

「ルルが庭のパラソルを使って家から脱走した日辺りの話よギターを楽器屋さんに持ち出したあと熱出してたでしょ。あと吐いたやつの原因は道端に捨てられていた食べかけのお菓子を口に入れたことによる食中毒よ二度としないで」

「あうぅ…しない」


誤食の件はルルが2歳の頃に起きた。二度目のサッカー観戦に今度はマスコミにバレないようにとこっそり連れて行かれた時にスタジアムの床に落ちているいつのものか分からないスナックを拾い食いした彼女は当然のように腹を壊し吐いたのだ。

当時は大変だ大変だと父親のダンパーロがサッカーの試合どころではなくなるほど騒ぎ救急車を呼びそれはもう目立ちまくりで大変だったが、子供にとっては大昔の話をされている気分でしかなく。ちゃんと反省して今はもう拾い食いだってしていないのにその話題を再び持ち出されて叱られてしょんぼりするのだった。


ここはなるべく早めに話題を変えた方がいいなと思ったルルはもう片方の病気に話を移す。


「おたふくはー顔がいたかったやつ?」

「そうそれ。もーあの時はお母さん本当にびっくりしちゃった。朝起こしに行ったら可愛い可愛い愛しのルルの真っ白なほっぺが真っ赤っかになってハムスターみたいにパンパンだったんだもの!」

「アハハママおおげさだよぉ」

「いやほんとよほんとよ」


ケラケラ笑う元気が出てきた娘の頭をホッとした様子で撫でるルーニャ。未だ苦しそうな息子二人にも布団の上から優しく手を当てさするのだった――



『オウノウ!ワッツハプン?!』

「ディスイズ 水ぼうそう」


そうこうするうちに熱も痒みも減ってきたルルは、現在オンラインで習っているピアノの先生に少しカサブタも増えてきた自分の水ぼうそうを見せつけていた。袖をまくり見せてズボンをめくり見せてお腹まで服をたくし上げてはこんなにカサブタになったよと自慢するが言葉の通じないアメリ人の先生は痛々しい赤い発疹の患部を見る度発狂している。

母からは無理そうなら休みの電話を入れるわよと言われたが後はただ水ぶくれが痒いだけだしピアノを弾きたかったルルはその提案を断ったルルはうきうきでノートパソコンの前に座り、お気に入りの水色の折りたたみピアノを開く。


『ワッツ?!オゥヴェリチャラ?!"休みなさいルルちゃん今は無理にピアノ弾かなくていいから"』

「もう痒いだけだよー」

『"こら掻かない!レッスンはやめ"「ふんふん今日はきょうかしょここからだよね~ド、ラ、ソ~♪」


二児の母でもある講師のメアリーから何度も休みなさいとアメリ語で言われるがルルは気にせずというか言葉が伝わらずピアノを弾いて。自主練のようなピアノレッスンを一時間終えそれでもまだ弾きたい気持ちが止まらず弾いて。

そしてピアノのやり過ぎでまた熱を出したので今週のギターレッスンはお休みになり……


「すみません今週は水ぼうそうで熱を出したのでお休みに」

「あああああやだぁあああ゛ッ!!」

『なんか耳元でものすごく泣いてますが……大丈夫ですか』

「あははあらまあ聞こえちゃってるかしら。気にしないでーそもそも大人も感染したことがないとうつったりする病気だから対面での授業は避けようと思っていたのよ」

『はいわかりましたじゃあ今週はレッスンなしということで。ルルちゃんー安静にね』

「あああ゛ー!あ゛ああ゛ーッ!げほげほ」


授業も忘れてひたすらルルの病気を心配していたピアノ講師とは違い、泣くほど自分の授業を楽しみにしてくれていることを電話越しに聞いたギター講師は実はちょっぴり喜んだ。



ルルの水ぼうそう発覚から一週間後――


「なおった!わたしちゅうしゃしません!」

「全部カサブタになっているし熱もない。うん、これなら登園しても大丈夫そうだね」


こぐまさんこどもクリニックの主治医から出た登園許可証を賞状のように深々とお辞儀をして両手で受け取るルル。彼女は正式に友達のいる保育所に行ってもいいとのお達しが出たので喜びの舞を踊っている。

だがしかしその横には一緒に診察にきた兄たちがちょこんと椅子に座っていた。熱もひいてぱっと見では元気だがお腹の方にはまだカサブタになっていない水ぶくれが少し残っている状態だ。


「そうですかそれは良かったわ!それで…あの、ディアロとポアロは」

「この子たちはあと3日くらい様子をみましょう」

「……。」


無情にも先生の口から出たその言葉を聞いた瞬間ルーニャはどっと一週間分の疲れが出た。そして彼女は無言で夫に電話をかける。

仕事という名の癒しが足りなくなった女社長が育児に専念するのは流石に限界が来ていたので、妻のヘルプコールを受けたダンパーロが次の試合としばらくチームの練習を休んで子供たちの面倒を交代したのだった。


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