番外編「ペリドス親子と遊びに行こう3」
番外編「ペリドス親子と遊びに行こう3」
ひとしきり滑って満足したのか、もしくは楽しくても座っているだけなのは退屈だったのか。ペリカがスケートリンクから出たがってぐずり始めたので一行はスケートをやめて今度は雪で遊べるコーナーにやってきていた。
現在、もこもこのスキーウェア上下と手袋を借りて防寒した子供たちは地べたに座って楽しそうに人工雪をかき集めている。
屋内施設の雪なのもありそこまで積もってはないものの小さな子供には十分すぎる量で、遊びに夢中なペリカの右足が雪に埋まる度にルルが引っ張り出してあげていた。
発泡スチロールでできた偽物のかまくらの中でまったり休憩している大人組はそれを眺めたり写真におさめながら見守る。
「雪だるまつくる~♪」
「つくぅー」
薄い雪の上でコロコロと小さな雪玉を転がして大きな綺麗な丸にしていくルル。対するペリカは這って移動ができないのでその場で取れる範囲の雪を掴んで手で握り歪な三角を作った。
何個作れるか競争しようとどちらかが言い出したのを皮切りに作成スピードが上がり、みるみるうちにトッピングのない二段のバニラアイスクリームがかまくらの周りを囲っていく。
自分の娘を喜ばせようと父親たちも小さな雪だるまを作った。胴体が車とケーキとそれぞれ娘の好みに合わせた形をしており、きちんと顔には真っ赤な木の実の目が付き木の枝の手も生えていて子供が作ったものより遥かに出来がいい。
「いいんじゃないかなかなか。オレ、実はこれでも学生の頃の美術の点数いつも良かったんだぜ」
「フッそれを言うなら俺も成績表で5だった。写真も撮ったしルーニャに送ろうかなー」
「これなげよう!」
「うんっ!!」
「「?!?!」」
―突然、少女たちは綺麗な方のだるまの頭をもいで雪玉を投げ合い始めた。かまくらの壁に当たって飛び散る彼らの目だったモノがルルに踏まれて汁を出し、真っ白な雪の上に鮮血が散る。
唖然とする大人の目の前できゃいきゃい歓声を上げながら頬を染め雪の冷たさを堪能する子供たちは、手元に雪玉がなくなると次はあれだけ楽しそうにたくさん作っていた自分たちの雪だるまにも手を出してぶちぶちと解体し雪合戦を再開。
子供は創造と破壊をいとも容易く行うものだ……。なんだかんだで雪遊びを楽しんでいた男たちは悟りを開きそうになった。
「えーいっ」
「きゃははあたぁなーい、ないない」
「んえーい!」
「おーいルル、そもそも狙えてないぞまずは目を開けるんだ。そして赤い目の方を閉じてよく狙う」
「…うん。せいっ」
「んー?狙う以前になんかルルちゃんの投げるフォームが全体的におかしいな」
首を傾げながら零した彼の発言にビクッと体を揺らす他二人。特に専属ボディガードであるマドルクが反応しており、お嬢様は出来る事は凄くできるのにとでも言いたげな悔しそうな顔をしている。
彼らの不審な挙動には気付かずに立ち上がったペリドスは、玉を投げる時に右腕を振り上げるのと同時に右足も一緒に上げてしまっているルルに近寄ると指導を開始した。
「ルルちゃんボールを投げる時は手と足を逆にするんだ」
「ぎゃく???」
「違う真後ろに下げるんじゃない」
右手を上げたなら左足を上げる。左手を上げたなら右足を。
そう指南してまず投球フォームが改善し、そのことを当事者のルルよりも喜んだダンパーロから拍手が飛ぶ。
次に、振った腕が完全に下がった後に手を開いても地面に雪玉を叩きつけるだけなので途中でちょうどいい感じに指を開いて玉を飛ばすように指示。しかし途中で開いた結果真横に吹っ飛んでいく雪玉。
1個目も2個目も3個目も全て同じ方向同じ位置へと当たり逆にすごいとボディガードが苦し紛れに褒めた。
それを見て何故なのかと首を捻る天性の才能を持つスポーツガチ勢二人は原理が理解できず頭を抱え。違和感が最も強い弾道の初動をじっくりと観察し考察に考察を重ねた結果、小指に異常に力を入れすぎて玉が曲がり変化球になっていると分かったので指摘すると次は親指に力を入れすぎて再び真横に飛ぶのだ。
その後も野球観戦が趣味のペリドスがああしてこうしてとルルのフォーム改善に手を尽くした結果、少女の投球はひとまず斜め下に雪玉を叩きつけるよりはマシな真横の特定の位置に当たるかすっぽ抜けて天井に当たるかに変化することができたため、指導していたサッカー選手二人はほっと息をつく。
「ぬうぅ…えーいっあいたっ」
べちゃっ――
そんな中、手足の上下が正しいか確認しながらもたもた投げるルルよりも先に、父親の投げ方を見ていただけのペリカが当てた。髪の毛を雪まみれにしながら倒れた敗者はそのまま起き上がらずにケラケラ笑う。
「負けたー!ペリカちゃんつよいねー」
「わたちつよつよおー!」
友達より早く雪玉を命中させて渾身のドヤ顔と両手ガッツポーズを披露するペリカに対して、ルルはこんなに冷たくて難しいのに凄いねーと手を叩いて幼女の健闘を称えている。それを眺める大人たちの表情と感情はそれぞれが大きく異なっていた。
「ルルちゃんは優しいなぁあんな露骨な時間稼ぎまでして年下に手加減してくれるなんてさ」
「そッ、そうだろ?!」「お嬢様は本当にお優しいですよねぇ!?」
「どうしたんだよお前たちそんな震えて。だから素手で雪はきついと言ったのに手袋しないからだ」
「…ははは」
荷物を背負って木を登り塀へと飛び降りるあの超人的な身体能力を持つ女の子がまさか本気で投げてあのレベルだとは夢にも思わず、子供の素の優しさに感動しているペリドスを前にドギマギする他二人。特に父親のダンパーロは雪合戦もダメだったという衝撃の事実にビビり寒いのに汗をかいていた。
ひと通り遊び終えて満足した子供たちが眠たそうに親の腕の中に収まり。さてそろそろ帰ろうかと外に出たところ、自分たちが出てきた親子連れ限定ブースの前には現在貸し切り中という表示の看板が立っていて。思わず変な声が出る親たち。
「「あれ?!?!」」
一瞬案内された場所を間違えたかと思い焦ったがどうやら入場時にスタッフに気を遣われてしまったらしい。
しかしそのせいで次の日『父親二人と娘二人のスケート豪遊』『ダンパーロ、一般客の迷惑を顧みない貸し切り』などと記事を書かれてしまい、何とか弁解しようとしたダンパーロが無料だったと発言し更に燃えたが炎上に慣れた彼らはもうそんな記事では潰れなかった。
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