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30. テロリストの抵抗

 廊下を進むと、重厚な木製のドアがある。どうやらゲルツはこの中にいるようだ。


 レヴィアは再度魔方陣を展開し、大きく息をつくと、和真とミィをジロリと見た。


「いよいよご対面じゃ」




 このドアの向こうに奴がいる。和真は手に汗がじわっと湧くのを感じた。とうとう追いつめたのだ。


 もちろんまだあがいてくるに違いない。しかし、想いの強さでは絶対に負けない。最後に勝つのは僕たちだ。和真はこぶしをぎゅっと握る。




「チャージ!」


 レヴィアはドアを体当たりでぶち壊し、突入した。




 吹き飛んだドアの木片がパラパラと散らばる中、和真とミィは後に続く。




 室内に飛び込むと、ソファに座り、ニヤニヤしている男の姿があった。


「そいやー!」


 すかさずレヴィアは青白く光らせた手のひらから捕縛用の鎖を放つ。


 鎖は紫色に輝きながら宙を飛び、ゲルツを目指した。しかし、鎖は途中で何かに当たって跳ね返される。


「む?」


 異常を感じたレヴィアは今度は魔方陣を起動させて青白い衝撃波を放った。


 しかし、それも届かず、途中で散らされた。


「はっはっは!」


 嬉しそうに笑うゲルツ。


 よく見ると、シャボン玉のような薄い膜がドームのようにゲルツの周りを覆っていて、かすかに虹色で輝きながらゆったりと模様を作っていた。


「な、なんじゃこれは!?」


「クフフフ、金星のガジェットだよ。ドラゴン、君のスキルでは突破はできん」


 ゲルツは余裕を見せる。金星というのはこの世界を構成しているコンピューターのさらに根底の世界のこと。この世界のロジックが全く通じない世界の代物だった。


「き、金星……。貴様どうやって……」


「なぁ、ドラゴン。君も今回のことで気づいたんじゃないか? 評議会は横暴だ。星の生殺与奪の権利を一手に握っている。これは人権蹂躙だよ」


「横暴……、それは認めよう。じゃが、お前らテロリストの方がもっとたちが悪い」


 レヴィアは険しい目で返す。


 ふぅ、と大きく息をつき、肩をすくめるゲルツ。そして、和真の方を向いて聞いた。


「少年はおかしいと思うだろ? 君はいきなり地球消されて納得できるか?」


 いきなり振られて焦る和真。もちろんテロリストの言うことなど聞くつもりはない。しかし、同時に評議会が星を次々と処分しているという事実に抵抗があるのも事実だった。


「な、納得なんてできない! でも……」


「なら手を組む余地があるじゃないか」


 ニヤッと笑うゲルツ。


「パパを殺した奴と組めるかよ!」


 和真はビー玉状の簡易攻撃ツールを取り出すとゲルツに投げつけた。


 ツールは薄い膜に当たるとパン! パン! とはじけながら電撃や火炎を発生させたが膜はビクともしなかった。


「はっはっは! そんなオモチャ効くわけがない」


「じゃが、お主だって手詰まりじゃろ。いつまでそこに籠ってるつもりか?」


 レヴィアはゲルツをにらむ。


「ふむ、実はこういうのを用意したんだ」


 そう言うとゲルツは空中を切り裂き、縛られた女の子を引き出した。


 きゃぁ!


 落ちてきてソファに転がった娘はなんと芽依だった。


「め、芽依!」


 あまりのことに和真は息を飲んだ。


「和ちゃーん!」


 目に涙を浮かべながら可愛い顔を歪ませる芽依。


「ふん、人質か。じゃが、そんなの意味ないぞ。彼女に何しようがアカシックレコードで元に戻せばいいだけじゃからな」


 レヴィアは冷たく言い放つ。


「ところがこういうのがあるんだ」


 ゲルツは懐から短剣を取り出す。武骨でずんぐりとしたあまり見ないタイプの短剣はゲルツの手の中で鈍く光る。


「その剣がどうかし……、へっ!?」


 レヴィアの顔色が変わる。


「そう、これも金星の短剣、ファラリスの(くさび)だよ。これで殺されたものは二度と復活できない」


 そう言ってゲルツはいやらしい笑みを浮かべて芽依を見た。


「ひ、ひぃ!」


 芋虫のようにうごめいて必死に逃げようとする芽依だったが、ゲルツは、


「動くな! 動いたら……、刺すよ?」


 そう言って短剣をほほに当てた。


 芽依はぶるぶると震えて動けなくなる。


 和真は真っ青になった。


 小さなころからいつも一緒で、不登校になった自分を支え続けてくれた芽依、それが今、命をもてあそぶゲルツの手中にいる。パパを殺され、そして芽依すらも奪おうとするこの男に頭が真っ白になった。




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