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21. 漆黒のアカシックレコード

 翌日、和真とミィがゲルツのデータを分析していると、パリパリっと音がして空中に空間の切れ目が浮かび上がった。レヴィアだ。


「お主ら……、何か成果はあるか?」


 出てきたレヴィアは目の下にクマを作り、げっそりとしながらポスっとベッドに座る。


「拠点へのアクセス方法は確保しましたが……それ以外は……」


 和真は恐る恐る答える。


「アカシックレコードへのルートは見つからんか?」


「巧妙に隠してあるみたいにゃ」


 ミィもちょっと疲れ気味で首を振った。


「カ――――ッ! あと二日しかない!」


 頭を抱えるレヴィア。




 と、その時、ドタドタドタっと足音が響き、バーン! とドアが開いた。


「四億円まだ――――!?」


 上機嫌に叫んだ芽依だったが、レヴィアと目が合い凍り付く。


 レヴィアはふぅと大きく息をついてバタリとベッドに倒れ込んだ。


 芽依は和真にそっと近づいて、


「彼女……誰?」


 と、耳元で聞いた。


「あれ? 覚えてないんだっけ? 僕らの上司だよ。ドラゴンのレヴィア様」


「ドラゴン……?」


 芽依は怪訝そうな顔でレヴィアを見つめる。


「本当だったらドラゴンになって脅かしてやるんじゃが、世界滅亡まであと二日、そんな元気ないわい」


 そう言ってレヴィアは毛布にくるまった。


「滅亡って……、どういうこと?」


 和真は昨日の出来事を説明する。


「要するにテロリストがアカシックレコードという、世界を丸っと記憶するところに侵入してて、それを見つけないと地球滅亡……って事?」


「その通りじゃ! 奴らは巧妙に痕跡を隠しておって見つからんのじゃ……」


「見つからないんだったら……、丸っとサーバーぶっ壊しちゃえばいいんじゃない?」


「何言ってるんだよ、そんなことやったらヤバいって」


 和真は渋い顔をしたが、レヴィアは固まっている。


「壊す……」


「サーバーの構成によるにゃ。管理部分だけ別のハードなら切り離して再インストールすれば確かにクリーンにはなるにゃ」


「それじゃ!!」


 レヴィアは飛び起き、芽依の手を取り、


「お主、なかなか冴えとるのう!」


 と、手をぶんぶんと振った。


「ふふん、それほどでもぉ……。で、サーバーってどこにあるんですか?」


「金星じゃ、金星の衛星軌道上を回っておる」


「き、金星!? それって二日で行けるところなんですか!?」


「この世界は情報の世界、距離なんて関係ない。じゃが……再インストールとなると、最悪一万個の地球全部に影響が出る……。どう許可を取るか……」


「え? 一万個?」


 和真は初めて聞くとんでもない数字に眉をひそめる。


「そうじゃ、地球型の星は全部で一万個。神様たちが気軽に『地球を廃棄』とか言ってるのは他にたくさんあるからなんじゃ」


「ほへ――――」


 和真は絶句した。


 この地球がコンピューター上にあるというのは理解していたが、似たような星が一万個もあったとは想定外だったのだ。


「こんなことしちゃいられん! 今すぐ申請に行かねば!」


 レヴィアはそう叫ぶと指先で空間をパリパリと切り裂き、その中へ飛び込んでいった。




      ◇




 結局許可が下りたのは地球廃棄処理の三時間前だった。


「ギリギリセーフじゃ! 行くぞ!」


 レヴィアは真紅の瞳をキラリと光らせて空間の裂け目に和真とミィを放り込んだ。


 うわぁぁぁ!


 和真が目を開けると、満点の星々が広がっていた。そして、それを覆うかのような巨大な構造物がゆっくりと視界に入ってくる。それは関東平野位のサイズがある漆黒の構造物で、まるで夜景のようにあちこちでチラチラと青白い光が瞬いている。


 そして、振り向くと金色に輝く惑星が浮かんでいた。


「え? あれは……」


 と、言いかけて、声が出ていないことに気が付く。


 そう、ここは宇宙空間。空気がないのだ。


 さらに、生まれて初めての無重力。身体が勝手に回ってしまってうまく操れない。


 ワタワタとしていると、脳内に言葉が飛んでくる。


『何やっとる! 空飛ぶ時と同じじゃ』


 見るとレヴィアが金髪をふわふわと広げながら、逆さまに浮かんであきれている。


『こ、こうですか?』


 和真は試しにくるりと回り、研修で習った時のように言葉を飛ばした。


 レヴィアはサムアップすると、


『さて、行くぞ! 時間がない』


 と、言ってツーっと構造物の方へと飛んでいく。


『あー! 待ってください!』


 和真は急いで追いかける。


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