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19. カジノinシンガポール

「デカしたぞ! お主ら!」


 レヴィアはログを食い入るようににらみながら、興奮気味に言った。


 そして、アカウントの持ち主を手早く探し出す。


 画面に浮かび上がったのは、豪華なルーレット台。そこにはクリーム色のジャケットを着こんだ痩せた男がチップを張っている。これがどうやらテロリストの幹部、ボスのゲルツらしかった。


「え? ここは……?」


 和真が目を細めながら画面をのぞき込む。


「シンガポールのカジノじゃ。マリーナベイサンズじゃな」


 そう言いながらレヴィアは、屋上がプールになった巨大なビルを映し出した。


「あー、これカジノなんですか?」


「お主行ったことないのか? 片付いたら遊んだらええ。ヨシ、乗り込むぞ!」


 そう言いながらレヴィアは空中にいくつも虹色に輝く不思議な魔方陣を浮かべた。


「乗り込むって、今ですか!?」


 焦る和真をあきれたように眺めながら、


「仇を討つんじゃなかったんか? 幸運の女神には前髪しかない。チャンス活かすなら今じゃ!」


 と怒る。


「わ、分かりました。僕らは何したらいいですか?」


「何もせんでええ。怪しい技を使うふりだけしてろ」


「ふ、ふりだけですか?」


「三人で乗り込めば、あ奴も気軽には動けんじゃろ」


 レヴィアはニヤッと笑うと手を振り上げ、和真は意識を失った。




         ◇




 気が付くと、和真は赤じゅうたんの上に立っていた。見上げると巨大な吹き抜けが広がり、上層階もすべてカジノだった。


「うわぁ……」


 見渡す限り並ぶカジノのテーブル。ディーラーがカードを配り、観光客のプレイヤーと勝負をしている。


 ガンガンに効いたクーラー、そこはかと香る南国のエキゾチックな匂い。いきなりやってきた初めてのシンガポールに、思わずキョロキョロしてしまう。




「何しとる! 行くぞ!」


 レヴィアは一喝すると、人目をはばかることなく魔方陣を引き連れながらすたすたと奥へと歩いて行った。


「あぁ、待って!」


 和真はミィを抱いて急いで追いかける。




 ルーレット台までやってくると、ジャケットの男がルーレットの球の行方をじっと眺めている。


 レヴィアは不敵に笑うと、魔方陣をパンと叩いた。キラキラと光の微粒子を放ちながら崩壊していく魔方陣。


 直後、にぎやかだったフロアは音を失い、ディーラーも観光客もすべて消え去った。


 驚いた男は周りを見回し、レヴィアを見つけると、ピクッと眉を動かした。


「随分好き放題やってくれたのう、ゲルツ」


 レヴィアは楽しそうに切り出した。


「これはこれはドラゴンじゃないか……。好き放題? この世界を生きる者としての当然の権利では?」


 ゲルツは肩をすくめ、悪びれずに言う。


「東京を核兵器で吹き飛ばす権利など誰にもないだろうが!」


「あんたらが人類の生殺与奪の権利を独占的に保持する権利もないぞ?」


 ゲルツは不敵に笑った。


「まぁ、話は牢屋で聞こう」


 レヴィアは紫色に光る鎖を空中にふわっと浮かべるとゲルツに投げ、ぐるぐる巻きに縛り上げる。


 しかし、ゲルツは表情を変えることなく言った。


「私の自由な行動が制限されると自動的に某所が爆破される。一番クリティカルなところがね」


「そんなのは後でじっくりと解析して解除すればいいだけじゃ!」


「コード『AXGF332』」


 ゲルツはそう言うと勝ち誇ったかのようにニヤッと笑った。


「えっ!?」


 真っ青になり凍り付くレヴィア。


「な、なぜそれを……」


「私も元管理者、蛇の道は……蛇、早く解放した方がいいぞ」


 レヴィアはギュッと目をつぶると動かなくなった。


 額には冷汗が浮かんでいる。




「お、お前、六年前巨大タコに乗ってた奴か?」


 横から和真が叫んだ。


「タコ? あぁ、あれは自信作だよ」


「伊豆の入り江で人を突き落としただろ!」


「ん――――? よく覚えてないが……、そういうこともあった……かな?」


「この野郎!」


 和真は心の奥底から爆発的なエネルギーがほとばしり、頭の中が真っ白になった。そして、後先考えることなく男に殴りかかる。


 こぶしを握り締め、渾身の一撃を男の顔面に放つ。


 ガン!


 まるで銅像を殴ったかのように、こぶしは跳ね返される。


 ぐわぁぁぁ!


 こぶしに走る激痛に思わず転げまわる和真。


「何だこの小僧は? 物理攻撃無効に決まってるじゃないか」


 あざけるゲルツにレヴィアは、


「もういい、行け!」


 そう言いながら鎖をほどいた。


「あなたもうちに来ればいい。いい待遇用意するよ? それこそ世界の半分をやろう」


 ゲルツはニヤッと笑い、レヴィアを見つめる。


「我は焼肉とビールがあればそれで十分。お主みたいに肥大した欲望に操られとらん」


「あんな横暴な上司に振り回されても?」


 レヴィアはピタッと止まり、息をつくと、


「彼女はピュアなだけじゃ。お主と違って悪意などみじんもない」


 と言ってゲルツをにらむ。


「いやだな、僕もピュアだよ……って、噂をすればなんとやら。さらば!」


 ゲルツはそう言うと、ニヤけ顔ですうっと消えていった。


 レヴィアは大きく息をつくと、床でうめいている和真のところへ行き、


「手のかかる奴じゃなぁ」


 と言いながら、和真のこぶしに手のひらをかざし、不思議な緑の光を当てた。



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