コント漫才「文化系女子の告白」
ツッコミ = A = 図書室を訪れた男子。
ボケ = B = 文化系女子。
二人「はい、どうも~」
B「突然ですが、Aさん、あなたは文科系女子と体育会系女子の、どちらがお好み?」
A「好みのタイプ? 俺は絶対体育会系女子」
B「ほお、それは何故?」
A「実は俺、学生時代に文化系女子に告白されて、散々な目に遭ったの」
(以下、コントイン)
※ ※ ※ ※ ※
A「さぁ~て、授業も終わったし、今日も図書室で読書でもするか~」
(A=図書室の扉をあけ、本棚を眺め、おもむろに本にてを伸ばす)
(B=同じタイミングで、Aが取ろうとした本に、わざと手を伸ばす)
B「いやーーん、触れ合う手と手! 恋のはじまり!」
A「うわああ。気持ちわりー。だ、だ、誰だよ」
B「初めまして、私、三組のBと言います」
A「知らねーな。で、君、ここで何をしているの」
B「放課後に一人で図書室にいる、そう、つまり私は典型的な文化系女子。そんな文化系女子が図書室ですることといえば、言わずとも知れたこと。この場の本を読んだり、読まなかったり」
A「どっちだよ」
B「この場の空気を、読んだり、読まなかったり」
A「それは、読もう。全力で読破しよう」
B「消火栓始動ボタンを、押したり、押さなかったり」
A「それは駄目。絶対やっては駄目なやつ」
B「あの~、突然ですが、私、A君のことが好きです。どうか私とお付き合いして下さい」
A「え? いやいや、初対面でいきなり告白かよ。てゆーか、俺たちお互いのこと何も知らないし」
B「私は、あなたのことをよく存じています。私は、毎日あなたがここで読書をしているのを、本棚の影からこっそり見ていた」
A「気持ち悪りーやつだな」
B「あなたは毎日、顔がアンパンで出来たの勇者の群像小悦や、顔がお尻のかたちをした探偵の推理小説を、それはそれは楽しそうに読んでいた」
A「それ絵本じゃねーか! 俺、高校生にもなって絵本なんか読まねーよ!」
B「赤ちゃんとお花とチョウチョさんが、めくれども、めくれども、ページいっぱいに描かれた本を、難しい顔をして読みふけっていた」
A「字のない絵本! 俺、どんだけ馬鹿なんだ!」
B「A君、実は私、あなたへの想いをラブレターにしたためたの。今ここで、喉が枯れんばかりに読み上げるから、耳の穴かっぽじって、よく聞いてね」
A「おいおい、ここ図書室だせ」
(おもむろに、ポケットからラブレターを出し、読み始める)
B「愛する、愛する、A君」
A「……ベタな書き出しだな」
B「あなたは私の……そう、あなたは私の……」
A「ふん、どーせ『白馬に乗った王子様』とかぬかすんだろ?」
B「あなたは私の……王子が乗った白馬様!」
A「馬かよ!」
B「どうか、私の耳元で、優しく、愛を、いなないて」
A「ひひーん。って、おい! それを言うなら、ささやいて!」
B「この、愛を、あなたに賭けたい。 ……単勝、千円、大穴狙い」
A「だから、馬あつかいすんなって! もおおお、いい加減にしろ! 悪いけど、俺、君と付き合う気なんて、これっぽちもねーから!」
B「ふ、ふられた。失恋した。私、もう生きては行けない」
A「……あの、君、そんなに思い詰めないで」
B「死んでやる。今ここで、盛大に遺書を読み上げてから死んでやる」
(今度は、ポケットから遺書を取り出し、読み始める)
A「いや、準備がよすぎるだろ!」
B「失恋しました。もう生きて行く自信がありません。お父さん、母さん、先立つ現金お譲り下さい」
A「先立つ不孝をお許し下さい! 小遣いもらってどーすんだ」
B「A君、さようなら、私は死にます。あなたとの今日までのたくさんの思い出を……」
A「いや、思い出なんてねーし」
B「彫刻刀であなたの机に刻みます」
A「やめろよ!」
B「あなたとのたくさんの思い出の写真……」
A「写真なんて撮ってねーし」
B「あなたの家と一緒に燃やします」
A「やめろってば!」
B「あなたがくれた真珠のネックレス……」
A「さっきから妄想が過ぎる」
B「バラバラにして、おっぱいに埋めます」
A「どれが乳首か分かんない!」
B「A君、恨みます! 私は死ぬ! 死んでやる!」
A「おいおい、命を粗末にしてはいけないよ」
B「あなたよりもっと素敵な人に出逢って、さっさと結婚して、5LDK・庭付き・ウィズ大型犬のマイホームで専業主婦を続けて、90歳を過ぎた頃に、子や孫やひ孫に見守られながら死んでやる!」
A「大往生おおお! そこそこ幸せな人生えええ! もおお、訳がわかんねー! せっかくの放課後が台無しだ! 迷惑なんだよ! お願いだから、俺の前から消えてくれ!」
B「……分かったわ。じゃあ、最後に願い。あなたに一冊の本をプレゼントさせて。この本、あなたにピッタリ。ぜひ読んで」
(B=本を差し出す)
(A=本を受け取って、表紙を見る)
A「俺にピッタリの本? えーっと、なになに、ジュール・ルナール作『にんじん』……って、また馬かい!」
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二人「どーも、あざっしたー」