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22/22

20 後日談→おしまい

 蝉が五月蠅い。そして暑い。日差しが大気を焼き、まともに換気の出来ない部室に籠もる。今すぐにでもプールに飛び込んでしまいたい。

「みんなでプール行きたくね?」

 私と同じ事を思ったのか、高橋がそんな事を口走る。「駄目ですよ」と即座に否定したのは尚美だった。石原はケラケラ笑う。

「石原は全然平気ですよ」

 一人だけ体操着姿の石原は、確かに平気そうだ。

「運動部でもないのに体操着ってどうよ? て言うか、カッコ悪くね?」

 石原は「そんな事無いですよ」などと言うが、上着をハーフパンツに入れてる格好は、あまり良いとは言えないと思う。

 苦笑する私の袖を、尚美が引いた。

「……ねえ、来てくれるのかな?」

 耳打ちで訊ねられる。対して私は、来るよ、と迷わず答えた。

 来るさ。約束をしたんだから。

「ところで、夏休み中の部活って、何をやれば良いんですか?」

 石原が実に一年生らしい質問を投げ掛ける。それに答えるべき部長は、「あー」と天を仰いだ。

「何だろうね? グダグダ?」

 実に部長らしからぬ事を言い出す。訊いた石原はあからさまな困り顔。

「どうするよ、次期部長?」

 高橋はいきなり私に投げて来る。私は次期部長候補であってまだ部長じゃないし、そう決まってもいない。何の権限も無いんだ。そう言い返しそうになるが、あろう事か質問者の石原までもが、私に答えを求める目を送っていた。そんな目で見られても、困る。

 知るかと投げ遣りにならない所が、私の良いところかも知れない。一応考えてみた。文芸部なんだから、各勝手に自作品でも進めれば良いんだ、と思ったが、しかしそれでは家でも出来る。授業日でもないのにわざわざ登校して来たのが馬鹿らしくなりそうだ。じゃあ――と考えて、一つ良い事を思い付いた。

 文集のタイトルを考えてみてはどうかと提案してみる。「おお」と石原は手を打った。他の二人もやたら感心した素振りを見せる。いや、それ程の妙案でもないと思うんだが。

「でも、良いんですかね? 佐藤先生も居ないのに、勝手にそんな事しちゃって」

「良いんじゃね? どうせいずれ考えなくちゃいけないんだし」

 けど、作品が全然集まっていない現段階で、どう決めよう? 私が言い出した癖、自分で自分の案を否決しそうになる。

「ううん。先にタイトル決めた方が文集のイメージが強くなるし、投稿してくれる人も出るんじゃないかな?」

 流石尚美。ナイスフォローと言わざるを得ない。それに正鵠を射た意見だ。すっかりやる気にさせられた。

「あ、アタシ一個思い付いた」

 早くも高橋が手を上げる。

「『ハチミツとクローバー』とかどう?」

「パクりじゃないですか」

 石原の素早いツッコミが入る。「ダメ?」「ダメですよ」。そんな遣り取りをして小突き合う。仲の良いコンビだ。

「じゃあこんなのどうです? 『老人と海』」

「パクりじゃん! て言うか、全ッ然中学生っぽくなくね?」

 段々大喜利じみてきた。

 お鉢が回って、尚美は首を捻る。

「そうだなあ……『何々と何々』でしょ?」

 いや、そんなルールは無いんだ。二人に惑わされてはいけないよ、尚美。

 尚美は一頻り考えた挙げ句、

「ね。めぐちゃんは、『何』と『何』が良いと思う?」

 そんな風に、私にパスをする。だからそんな決まりは――と言うのは、野暮だろうか。

 兎に角、私が言い出しっぺだ。何か考えなくちゃなるまい。それも良いアイディアを出さなくては、ここでこの議論は終わってしまいそうだ。顎をさすりながら、思い付くままを口に出してみる。

 原稿用紙と――。

「『原稿用紙』と?」

 石原が期待を孕んだ顔で乗り出して来る。まるで、その後に「掛けまして」とか言い出しそうなノリだ。だから、笑点じゃないんだって。

 他の二人からも熱い視線を注がれる。何だか挫けてしまいそうだ。周囲のプレッシャーに押し潰され、思考停止に陥った私が思い付いたのは、何とも面白味に欠けたものだった。

 ――シャープペンシル。

「普通ッ!」

 高橋が笑いながら机を叩いた。私もそう思う。石原は残念そうな顔をし、尚美までもが、ちょっと苦いものが混じった笑みを浮かべて固まっていた。申し訳無い。

 笑い合っていると、戸口から怖ず怖ずとした声がする。

「あの……大嶋さん、居ますか?」

 振り返って見遣ると、そこには意外な人物、沢村が立っていた。部員達は一様に笑うのをやめる。

 沢村と言えば、私が殴ってしまった相手だ。尚美が心配そうに、小型犬の様な目で私を見詰める。

「ちょっと話したいんだけど……」

 語尾を濁す。沢村は確か、陸上部だったか。砂で汚れた体操着を着ているのを見るに、わざわざ部活を抜け出して来たらしい。

 私も、いずれ向かい合わなければいけない相手だと思っていた所だ。頷いて席を立つ。

 廊下に出ると、みんなの死角に誘われた。対峙すると、背丈は同じくらいのはずなのに、沢村の方が少しだけ小さく見える。

 床に視線を這わせ、言葉を探している様だった。眉間に皺が寄っている。この場に及んでも、未だ言い出すか言い出すまいか、迷っているみたいだ。

 部活は大丈夫なの? 軽い世間話を振ってみる。いきなり本題に入るよりは、そうした方が気が楽になるだろう。

「ああ、うん。今休憩中だから」

 顔を上げた沢村は口元を弛めたが、すぐまた真顔に戻る。脊髄反射的な愛想笑いだった様だ。でもそれは嫌味なものではなくて、習慣から出たものなんだろう。スイッチの切り替えが早いのは、機械的と言うよりも、余程人間らしい事だと思える。感情を相手に合わせてコントロールするのは人間だけの能力だ。その場その場で、相手と一緒になって怒ったり泣いたり笑ったりする事はなかなか難しいし、それが出来るのはかなり凄い事じゃないか。

 沢村は、謝ろうとしているのだろうか。沢村が私に抱いている印象が変わらないのなら、責める言葉は簡単に口に出来るはずだ。こんなに思い悩む必要は無い。それは私にしても同じだ。以前と今とでは、違った気持ちになっている。

 原稿を破り捨てたのは誰だとか、誰が犯人だとかは、もうどうでも良い、過去の事だ。原稿は今や白沢の手によって復活し、私の手元にある。憎むべきは、私が単なる疑いから暴力に訴えてしまった事ただ一つ。これはいくら謝っても謝り切れるものじゃない、思い上がりじゃない真実だ。だから沢村が謝る事なんて何も無いんだよと言って、少しずつでも、私から沢村に歩み寄らなくちゃいけない。

 そんな心構えを作っていると、沢村は意を決して、私の予想とは大きく違った言葉を放った。

「今度カラオケ行かない?」

 カラオケ? 思わず聞き返すと、沢村は大きく頷いた。

「土曜にみんなで行くんだけど。あ、みんなって言うのは……」

 一言目が呼び水になったのか、沢村は前のめりになって、立て板に水を流す様につらつらと何人かの名前を挙げる。どれもよく沢村と一緒に居るのを見る、グループのメンバーだ。

 きっと、これが沢村なりの仲直りの手順なんだろう。なら断る理由は皆無だ。

 しかし、正直戸惑う。歌が下手だとか言う以前に、カラオケに行った事が無い。そう白状すると、沢村はまるで宇宙人でも見たかのごとく盛大な驚き様をしたが、更に食い下がってくれる。

「大丈夫だよ! カラオケなんて、歌いに行くっていうよりも、みんなでワイワイする場所みたいな感じだから!!」

 そういうものなのか。いや、でも、それにしたって、私が盛り上がりに水を差してしまう事になりかねない。

「気にしなくて良いよ! 一応みんなとも話して、大嶋さんも誘おうって決めたんだし」

 フォローは有り難いが、渋ってしまう。最近の曲はあまり知らないんだ。では何なら知っているかと言うと――尾崎豊くらいか。

「良いじゃない、尾崎豊! あたしは好きだよ?!」

 本当か? 近頃の女子中学生然とした沢村が聞く様な音楽とは思えないが。でも、悪い気はしない。私を覗き込む目は熱心そのもので、微塵の悪意も感じないからだ。優しい嘘というものもある。

 うん、解った。行こう。行くしかない。

 正直言って、盛り上がりに貢献する自信は無く、代わりに盛り下げ役になる自負しか無いんだけど、滅多に無い誘いだし、ええい、喜んで受けようじゃないか。

「ホントに? 良かったあ」

 沢村は私の返事を聞き、胸の前で手を合わせる。感情表現の巧みな沢村がする満面の笑みは、きっと本物に違い無い。

 携帯の電話番号とメールアドレスを交換して、「バイバイ」と別れる。まさか、尚美の次に登録するのが沢村になるなんて。でも電話帳のメモリが増えるのは、何となく嬉しい事だった。

 部室では私の居ない間にも議論は進んでいて、いつの間にか書記係になっていた石原のノートには、殆どが高橋の発案だと思われるタイトル候補がずらりと並んでいた。適当なものばかりを挙げて石原や尚美を困らせる高橋の姿が、ありありと目に浮かぶ。

「なかなか決まらないモンですねえ」

 石原が腕組みをすると、高橋は不服そうに口を尖らせる。「セーラー服と機関銃」だの「ぐりとぐら」だの「愛と青春の旅立ち」だの、どこかで聞いた様な、口から出任せの中から選択しろと言う方が無茶だ。

 すっかり暗礁に乗り上げてしまった。それぞれ考え込み、黙り込む。ただ一人、高橋だけは例外で、飽きたのか自分の作品作りに移ってしまった。この際関わってくれない方が良いだろう。

 部室が静寂に包まれる。開け放った窓からブラスバンド部の奏でるクラシックが流れ込む。曲名は何だったか。テレビCMで頻繁に聞くやつだ。

 やがて、軽やかな旋律に合わせるかの様に、足音が聞こえてきた。上履きを引き摺り廊下を歩く、気怠そうな足音だ。尚美も聞こえたのか、私の方を見て慌てた顔をする。

「どうも」

 相変わらずの平坦かつ暗い調子の挨拶。

 酷い遅刻だと振り返って見れば、至って平然と佇む白沢が居た。

 鞄と一緒に大きなビニール袋をぶら下げ、「寝坊した」なんて言い訳にもならない事を言いながら、さも当然と真っ直ぐ席に着く。

 久しぶりに現れた新人に、それぞれから声が上がった。しかし尚美はまともに声を掛けられない様子で、顔を赤らめて俯いてしまう。それは微笑ましいんだけれど、こんな調子で大丈夫なんだろうか。前途多難だ。

「これ、差し入れ」

 と机の上に袋を放り出す。随分と準備の良い寝坊だ。石原が興味津々と袋に手を突っ込むと、出て来たのはまさかのところてん。父親が買い溜めしていたのを冷蔵庫からくすねて来たに違い無い。まあ、美味しいから許してやろう。

 白沢の横顔は、頬にガーゼが貼られている以外いつもと変わらない。いや、以前よりも幾分明るい顔付きに見える。何かが吹っ切れた様だ。

「あ、あと大嶋にお土産。親父から」

 鞄から出した茶封筒を差し出される。何だろうと開けてみると、中にはハードカバーの書籍が一冊。取り出して表紙を見れば、「絆の疼痛」とタイトルが振ってある。「ああ?!」と、俄然大声を上げたのは高橋だった。

「それ雨水葉司の新刊じゃん! 発売は明後日なのに!!」

 言う通り、著者名に「雨水葉司」とある。確か、近頃割と人気のある恋愛小説家だ。読んだ事は無いが。過剰な反応から察するに、高橋はこの作家のファンらしい。

 それはそうと、何で私にこんな本をくれるんだ?

「発売前の本を持ってるって……白沢君のお父さんって、出版関係のお仕事してるの?」

 やっと落ち着いた尚美が訊ねる。白沢は「まあ、そう」とぼかした答え方をした。

 それは変じゃないか? 出版業界と言ったってサラリーマンだ。発売日が二日も後の自社製品を、よその子供にほいほい上げてしまって良いものだろうか。盆でも無いのに平日の昼間に家に居るのも、翌々考えれば凄く妙だし――。

 まさか。いや、まさか。

 恐る恐る表紙を開いてみる。その裏にサインペンで、達筆なんだか下手なんだか解らない、崩した繋げ字が書き付けられていた。辛うじて「雨水葉司」と読める。左下に「めぐるちゃんへ」などと添えられ、しかも、「へ」の尻がハートマークになっている。

 ああ、やっぱり。

 またも高橋が喚く。

「し、白沢の親父って、雨水葉司?!」

 ガタンと立ち上がり、目を丸くする。石原も尚美も同様に驚愕した様だ。

 私はと言えば、何と無しに納得してしまっている。恋愛小説家と言えばキザったらしいイメージがあるが、正にその通りじゃないか。少々変わり者だったが、変人の子が変人であった様に、小説家の父親は小説家だった。それだけの事だと、不思議に合点してしまう。

「ズルい! 抜け駆けして、ズルい!!」

 扱いに困る先輩が子供みたいに駄々をこねだした。別にそんなつもりは無いけれど。

「アタシにもサイン貰って来て! 貰って来いよ白沢!!」

 終いには脅迫に似た命令口調で白沢に迫る有様。対して白沢は「はいはい」と生返事を返す。こういう時はのらりくらりとした態度も役に立つものなのか。今度から参考にしようと思う。

 それから暫く有名作家の息子である白沢と、知らず作家先生と言葉を交わした私は質問攻めに遭う。けれど白沢は面倒臭そうに「親父の事はあんまり知らない」と答えるばかりだったし、私も雨水氏に持った印象と言えば変な人だったという事くらいだから、あまり話にならない。そんな状況を見かねてか、尚美が話題を切り替えた。

「ねえ、白沢君。今、文集のタイトル考えたんだけど、何か良い案無いかな?」

 そう言いながら、とても真面目と思えない議論の産物を白沢に見せる。白沢は思ったまま「これは酷い」と吹き出し笑う。そんな笑い方をしたのは初めてだ。

 ノートを目でなぞり、歌う様な唸り声を洩らす。そしてすぐに何事か思い付いて、「ん」と目を上げた。


「じゃあ『原稿用紙とカッターナイフ』」


 唐突で呆気無い発案。前半は間違い無く私が挙げたのを拾ったんだろう。後半部分を聞いて、石原がぎょっとする。「別にこれは関係無いけど」と、白沢は頬のガーゼをさすりながら苦笑いを浮かべた。

「カッターは色々切るからさ。身体も切るけど、心も切る。どっちも痛くなるよ。中坊なんて痛い思いする事ばっかりだろ。色々なモンに切り刻まれる。そういうのを文章にしてるところあるから、そういう文集だって事にしちまえば、さ」

 短い言葉を切り貼りした様な語り口は、白沢にしては雄弁だ。こんな風に喋るのは意外で、思わず唖然としてしまう。他の三人も同様。

「……良いと思う! すっごく良い!!」

 尚美が腰を浮かして、うんうんと何度も頷いて見せる。強く肯定されて白沢は驚いたが、「ありがとう」と素直に礼を言う。尚美は顔を真っ赤にして、すとんと座った。

 高橋はそんな尚美の態度から早速勘付いた様だが、珍しく追及せず、ニヤニヤと笑いながら賛成する。

「良いんじゃないの。雨水葉司の子供が言うんだから間違い無いし」

「石原も良いと思います。何だか詩的でカッコイイです」

 石原も賛成だ。

 腕組みをして黙っていると、お前はどうなんだという目が、一斉に注がれた。

 確かに、痛い思いを沢山した。胸の奧を握り締められる様な恋もしたし、後悔に切り裂かれる痛みも味わった。今になってみれば遠い昔の様だが、あんなに忌避したリストカットにまで走ってしまった。でも、そういう色んな痛みが、今の私に繋がっている。痛みを重ねたその先で、痛みを知ったからこそ、素晴らしいものを見つけられた。

 白沢の痛みの象徴がカッターナイフなら、私の痛みもまた、カッターナイフが象徴しているんだと思う。

 こいつの意見に従うのは癪だが、まあ、良いんじゃないか。

 わざと小狡くひねくれてみるが、意に反して白沢は「ひひひ」と笑う。

「素直になれよ、キティちゃん」

 そんな風に蒸し返してくる。思わず、今日は違うぞと言い返していた。

 小馬鹿にされたのに、いつも私の代わりに怒ってくれる尚美が笑う。

 何が楽しいのか石原も笑う。デリカシーに敏感な高橋さえ笑う。

 馬鹿みたいに笑う人達に釣られて、恥ずかしいのに、私も笑った。


 小説を書きたくなる。

 ケムシの話だ。馬鹿で愚かでちっぽけなケムシの話。貶され疎まれ拒絶され、それでもケムシは笑っている。悲しかったら泣くし、悔しくなったら怒る。繰り返される苦痛と苦痛の間には、必ず少しむず痒い素敵な時間があるから、その時の為に笑うんだと胸を張る。こんな気持ちを忘れなければ、これからもずっと大丈夫だと、腐ったみかんを囓ってみる。口に入れてみれば、存外に美味いものだと知る。

 何年何ヶ月か時が過ぎて、またいつか辛くなった時、傷付いた心の痛みを身体に刻もうと思った時、また迷ってしまわない様に、心に帳を下ろす前に思い出せる様に、この世界を物語にしよう。

 私と他人のお話。掛け替えのない友人達が作る、この世界のお話。

 そんな小説を書きたくなった。

 読了お疲れ様です。そして有り難う御座います。

 最後までお付き合い下さった方は、僕という人間がいかに卑屈で、いかに理屈屋かお解り頂けたかと思います。

 この作品を書こうと思い至った経緯は、今となっては思い出せないのですが、登場人物や出来事のモチーフは、僕の中学校時代の記憶から取りました。そこへ多分に美化と嘘とを加え、ミキサーに掛けたのが「原稿用紙とカッターナイフ」です。

 当時の事を思い返せば恥じるばかり。腐り切った少年時代を送って来ました。それは例えば前半での「大嶋めぐる」の考え方だったり、「白沢」の人との接し方などに表れている事でしょう。

 こう出来たら、こう思えたら、もっとあの糞の様な思春期を素晴らしいものに変えられたかも知れない。そんな風に考えるのは馬鹿馬鹿しい、実に滑稽な事なのですが、それでもそうやって過去を振り返る事は、決して無意味じゃないのだと思います。今を生きるには過去が必要なのです。そして過去を踏み台にすれば、今目前に迫る高い壁でさえ、乗り越える事が出来るのです。

 子供達の成長過程を描くのはとても楽しいですね。僕の思春期はとっくの昔に終わりましたが、彼らの思春期はまだまだ続きます。色々なものに反抗して、もっと苦しい思いをするでしょう。彼らという人間が構築されていく途中の一場面を切り抜いた本作はここで終わりますが、もう少し描いていたいという気持ちが強く残ります。馬鹿げた青春の続きを描く事が、近いうちにあるかも知れません。

 その時には、また覗いてみて下さい。

 ひとまずは、有り難う御座いました。


――平成21年9月9日 熊と塩 記

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