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 腕が白い。厭味な程に綺麗だと、私は思った。

 カッターナイフは、切れない方が良いと誰かが言っていた。切れ味が良すぎると、駄目なのだと。

 他人の視線が痛い。矢や槍や、カッターナイフの様に、鋭く突き刺したり切り刻んだりしてくれたなら、いっそ気持ちが良いかも知れない。けれど彼らの視線は、その刃は、良心の呵責という要らない哀れみの所為で、少し丸まっている。だから尚のこと、この胸を抉る痛みは増している。

 自分の外側にある存在なんてどうでも良い。そう思えたならどんなに素晴らしいだろう? 干渉など関係ないさと笑い飛ばせたなら、世界はどんなに素敵な輝きを持つだろう。

 そういう感傷に浸るのは、インサイドから外を見ている証拠にしかならなくて、私は叫び出したかった。

 愛して欲しい!

 視線の矢面に立っているからこそ、自分という生き物が、他人の中に埋もれたちっぽけな生命体に過ぎないのだと知っている。私は蟻か、蚤か。それでも、

 愛して欲しい!

 たった一人でも、いや、雀の一匹でも、道端に生えた大葉子の一株でも良い。ほんの些細な、僅かな愛情を注いで欲しい。それだけが全ての理由になるはずだから。

 カーテンから差し込んだ朝日を、無傷の左腕が、嘘らしく照り返していた。

 皮肉な程に綺麗だと、私は思った。

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