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月紗、セミ

 突然の物音ですっかり理性を取り戻し、透司郎さんに背を向けた私は、今果てしないほどの後悔に身を焼かれていた。

(あ~もう、最悪だ、わたしっ!!)

 自分がしでかしたことへの恥ずかしさと申し訳なさで、頭の中が軽くトランス状態になる。

 いったい何をやっているんだろうか、私は。

 せっかく自分のことを助けようとしてくれた男の人を、一緒のベッドに誘って、あまつさえ自分から誘惑するようなことをして……これじゃ完全に変態じゃないか。これ以上変なことをしたらいい加減神様の名前も返上しないといけない、そんな気になってくる。

「はぁ……」

 思わず、大きなため息が口をついて出る。

 でもさっきの物音以来透司郎さんも本格的に眠る体勢に入ったらしく、こちらのため息に気づく様子は全くない。これならもう透司郎さんに襲われる心配もないのだろうけど、でも……

 本当は私は、どうしたかったのだろうか?

 その答えはあまりに明白なようで、意外に難しい。

 もしあのまま透司郎さんがその手を伸ばし続けたとしても、果たして私は最後にどうしただろうか……? 本当にそれを受け入れることが、果たして私にできたのだろうか? もう人間とは言えない、この私に……

「ま、いいか……」

 正直いろんな思いはある。

 けれどさすがの私も、今日はすっかり疲れた。もう寝よう。そう思って少し服の状態を整えて、気持ちのいいお布団の中で体を丸める。そのまま透司郎さんの規則的な寝息を聞きながら、ゆっくりと目を閉じる。

 ああ、優しいな……

 耳に届くその音を聞いて、なんとなくそう思ってしまう。

(おやすみなさい、透司郎さん……)

 それから間もなくして、私の意識も深い眠りの底へと落ちていく。

 しかし翌朝起きれば私はセミみたいにピタッと透司郎さんにくっついた状態になっていて、寝起き早々とんでもなくびっくりすることになるのであった。

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