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透司郎

「だから、一緒に寝れば文句ないでしょう、透司郎さん! そうすればお互い不満もなく万事解決! どうですか!」

「ど、どうって……」

 謎の熱意を持って俺に迫ってくる月沙に、俺は今すっかり混乱しきっていた。

 目の前では依然月沙がものすごい勢いで、俺に謎理論をまくし立ててくる。

「私は透司郎さんがソファで寝てるのにお布団で寝るわけにはいかない。透司郎さんは私にソファを譲るつもりはない。なら、私たち二人で一緒にお布団で寝れば、何も問題はないですよね!?」

「い、いや、別にソファを譲りたくない、ってわけではないんだが……つか、問題はあるだろ。むしろ問題だらけだわ。どこの世界に出会ったその日に一緒のベッドで寝る男女がいるんだよ」

「います! 全然います! それこそ大人な人たちは、たくさん……たぶん!」

「たぶんってなんだよ! つかそんな大人と俺らを一緒にすんなよ。言っとくけどこっちはまだ中学生だぞ! 月沙も見た目だけからしたら、俺とたいして変わんねえだろ! ふざけんな!」

「ふざけてません! 真剣です。真面目です! どうしてわかってくれないんですか。透司郎さん、ちょっと強情ですよ! 頭が固いです。意地っ張りです!」

「なんで俺の方が悪いみたいになってんだよ! 絶対月沙の言ってることの方がおかしいからな! なんかちょっと変だぞ、今のお前」

「へ、変なんかじゃありません! いいから、来てくださいっっ、も〜!」

 ぐぐぐ〜っと、もはや力づくで月沙が俺の腕を引っ張り始める。

 その腕の細さのわりに、やけに力が強くてびっくりする。……いや、単純に力一杯引っ張っているだけなせいか。しかしそんな風に思いのほか強い力で引っ張られたものだから、俺の方も悠長にソファにしがみ続けてはいられない。もともと横になった体勢で力を入れづらかったこともあって、俺はあっさり月沙に引っ張られてソファから立ち上がらせられてしまう。その勢いのまま月沙は俺をリビングから連れ出そうとするのだが、さすがに俺も抵抗をする。

「お、おい、お前……月沙、いい加減にしろよ」

 けれど、効かない。

 月沙はもはや聞く耳持たずといった感じで、ずいずいと俺を二階へ引っ張っていった。

「いい加減にするのは、透司郎さんの方です! なんでそんなに私に優しいんですか。これじゃ、神様の立場、ありません! もう黙ってついてきてください!」

 怒ってるんだか、褒めてんだか……訳がわからん。

 とはいえ俺の方も今日はここまでに色んなことがありすぎたし、夜も遅くてだいぶ疲れていたこともあって、次第に諦めの境地に陥ってくる。

「……はあ、もう勝手にしてくれ」

 そして俺は月沙に引っ張られたまま、俺の部屋へと入っていった。

 部屋に入ると月沙は、もはやよくわからないテンションで俺に告げた。

「はい、では寝てください、透司郎さん!」

「…………」

 俺ももう抵抗するのも面倒くさくなって、仕方なくそっとベッドに横になる。

 すると月沙もすぐにベッドに横になって、一緒の布団をかぶった。

 俺が仰向け、月沙は部屋のドアの方を向いて、一緒のベッドの上で寝る準備をする。

 月沙が言う。

「そ……それではおやすみなさい、透司郎さん!」

 俺も一応、答える。

「……お、おう」

 それっきりさっきまでの争いが嘘だったみたいに会話が途切れて、あたりに静寂が漂った。

 ……真っ暗な部屋。

 ……窓から覗くわずかな光が照らす、天井。

 それはいつも俺がこの部屋で寝る前に見る景色と、全く一緒の景色だ。

 けれど月沙を横にして、このまま素直に寝るってわけにもいかない。俺は一応、月沙に事情を聞いてみることにする。

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