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テレビ

 ご飯を食べ終えた後、透司郎さんは私に、

「じゃあ、今度は俺がちょっとシャワー入ってくるから、月沙はそこらへんでゆっくりしてて」

 とだけ言い置いて、リビングを出て行った。

「はい、わかりました。待ってます」

 バタンと、透司郎さんがリビングのドアを閉めると、さっきまでの賑やかさがウソのように、部屋はしんと静まり返った。その中で私は、最初はソファの上にちょこんと座って、透司郎さんの帰りを待った。けれど次第に、透司郎さんのシャワーが思ったより長かったこともあって(後から知った話では、むしろ透司郎さんのシャワーの時間は短い方だったらしいが)私は我慢できずに、リビングの色んな物に、興味を移し始めた。なにせ、数百年ぶりの人の家だ。久しぶりに見る様々な物たちは、そのどれもが私が初めて見る目新しい物ばかりで、興味を持たないということの方が無理な話だった。そんなわけで私は、透司郎さんの戻りを待っている間、良くないとは思いつつも、リビングにあるいろんな物に手を伸ばし始めた。

 最初に最も私の興味を引いたのは、当然のことながら透司郎さんがさっきまで料理を作っていた、台所だった。私はそっとソファから立ち上がると、少しだけ周囲の目を気にしながら(いや、誰もいないんだけど)台所の方へと歩いていった。

「入っても、大丈夫だよね……?」

 私が恐る恐るながら、台所のスペースへと足を踏み入れていく。

 すると当然特に何かあるはずはないのだけれど、そこには私にとっては不思議な空間が広がっていた。

「わあ……」

 一畳少しのスペースに所狭しと並ぶ、いろんな機械……多くのものは四角形の形をしているけれど、たまに丸っこい形だったり、鍛冶屋っぽい形をしているものもある。特に透司郎さんが食材を取り出していた大きな箱は、近くに来てみるととんでもなくでかいサイズをしていて、思わず息を飲んでしまう。

「す、すごいなぁ、今って。……これ、もしかしてさっきのお水が出るやつと一緒かな? って、きゃっ!?」

 ジャーと、何かの拍子に蛇口からものすごい勢いで水が出てしまい、焦る。

 焦りつつも、すぐに取手みたいなものをカクンと元に戻したら水も止まってくれて、「ふう……」と安心する。

「やっぱりこれは水が出るものなのかな? すごいなぁ、どんな仕組みになってるんだろ?」

 それから私は、一旦ソファの方へと戻った。

 これ以上台所にいたら、またなんかやらかしてしまいそうで怖くなったからだ。

 けれどソファの方に戻っても、また別の物が私の興味を引いてやまない。それは視線の少し先にある、長方形の真っ黒い板。一体あれはなんなのだろう。そう思って私はじーっと少しの間、その板を見つめ続けた。そして体勢を軽く変えたその時だった。私の右手が何か硬い物に触れ、それと同時に突如、黒い板から盛大な笑い声が響き渡ってきたのだった。しかも同時にいつの間にか真っ黒だったはずの板の中にたくさんの人の姿が現れ、私はたまらず混乱した。

「――――っ!?」

 さっきの台所での焦りなど比べ物にならないほど、巨大な焦りが私の頭の中をぐるぐる回る。

 けれどこの事態の原因が、私の右手に触れた何かのせいだということはわかったので、私はすぐさまその四角い何かのボタンを一心不乱に押し始めた。

 ――あはは、どないでっか!

 ――明日の天気は、

 ――あんたのことなんか、大嫌いよっ!

 しかしボタンを押すたび、なぜか板の中の景色が違う物に変わってしまって、余計焦る。そこで全速力で回転した私の頭は、(そうだ……テレビだ!)と、人づてに得た知識の中から辛くも正解を引き当てて、プラス偶然にも電源ボタンを押すことができて、事なきを得る。

 ――シーン

 数秒前まで大音量で流れていた人々の声が、一瞬で鳴り止む。

 それを確認してようやく私は、

「ふう……よかった」

 と肩の力を抜ける。

 しかしそんなことがあっても、なお私の好奇心はとどまることを知らなかった。(むしろ先刻の経験こそが、私の好奇心を余計駆り立てたかもしれない)

 私は、透司郎さんがまだ全然戻ってきそうにないのを確認すると、今度はとうとう、リビングの外に足を伸ばし始めた。キー……とゆっくりリビングのドアを開けて、部屋の外に出る。

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