ネト家番外編 ネト家の兄 ニホン大自粛悲喜劇 申請疑獄
新型肺炎ウィルスの感染拡大防止のため緊急事態宣言がされたニホン国。
書店店主ネルオは自粛休業をしていたが、売り上げゼロがつづき、政府の給付金を申し込むことにしたのだが…
(本編は今週のポンニチ怪談と次週の妄想の帝国と関連した話になっております。合わせてお楽しみいただければ幸いです)
『回線が切断されました、もう一度申請をやり直してください』
「ま、またか、なんでつながらないだ!」
と、ネト・ネルオは叫んだ。
「ウィルス対策の事業者支援のための緊急措置なんだろ!一刻も早くもらいたいのに、なんでこんなに複雑なんだ!先月も今月も売り上げがゼロなんだぞ!」
ニホンで新型肺炎ウィルスの緊急事態宣言が出て二か月弱。休業要請はでていないものの、肺炎ウィルスに罹るのと、店の客が罹患したという風評被害が怖いのをあり、自分の店を休んだネルオ。しかし早くも貯金は底をつきかけ、家賃や水道光熱費といった固定費の支払いが迫っていた。
「ああ、この給付金が受けられなければ、俺の店は、俺の人生は終わりなんだー」
就職氷河期のあおりをくらい、アルバイトなど職を転々としたあげく、ダークな職業にも手を出して、なんとか貯めた金をはたいて書店を開いたネルオ。ネルオという名前にもかかわらず、寝る間も惜しんで店を軌道にのせるために情報を集め、広告を出し、SNSでコメントなど文章を載せまくった。
「時代はソフト右翼。てか隣国とか中国とか台頭してきたアジア諸国だのをたたいてりゃいい、野党を嘲笑して憂さ晴らしとか、そういう本がバカ売れっていうから、それに特化してみたのに」
普通の本屋ではだめだ、何か特徴をと考え、たどり着いたのが政権ヨイショの太鼓持ち、考えなしでもすぐやれるというネトキョクウ路線。自称学者だの有識者だのが政府をもちあげ、野党を誹謗中傷し、ほぼデマ、捏造、眉唾な自説を展開してテレビだので、ウケているのに便乗したわけだが。
「最近はレイワンのヤマダノだの、共産ニッポンのコイケダだのが動画サイトに進出してるし、反ウヨクのブログもパンJ速報だのが人気を博して新たなるフロンティアとして注目されてるし。もうネトキョクウは終わりか」
ため息をつくネト・ネルオ。
「妹とかにも、“そんなバカなことやめて!”と言われて家をでてまでやったのになあ。バカって、まあそうだけど(だいたい我が家の場合、妹のが正しいんだよな、クソッ)だいたいネトキョクウは言ってる、いや書いてることが支離滅裂だしなあ。前の文章で“マスク週に5億生産してるのに週7億買い占められてんだから“とか平気で書くし、あいつら計算もできないのか。まあ担いでる政権のトップがアレだからなあ、知能程度で親近感がわくのかな」
と、ネタにして稼いでいる割には辛辣ネト・ネルオ。それもそのはず
「くう、ビジネスとはいえ、あのアホ政権を間接的に支えてやってたのに、この仕打ちがこれか!せめて支援者だけでも簡単に申請できる抜け道を作ってくれればいいのに。な、なにもないのか」
なにしろ、この給付金の申請は政府寄りとされる商工会議所の面々でさえ匙を投げだしたくなるほどの複雑さ。しかもなんとか申請にたどり着けたとしても、面談までこぎつけるのに数週間かかるという。ウィルス対策緊急融資のほうはまだ早いものの書類などをそろえるのに時間がかかる、しかもそれも複雑で、自分が対象になるのかを調べるのも一苦労だ。
「しかも、この給付金は電子申請のみだからな。対面だとウィルス感染が怖いってのは、わかるけど、せめて郵送にしてくれれば…」
明らかにIT弱者をはじく羽目になるような申請方法に文句をいうネルオ。
「だいたい与党支持者のオヤジどもなんて、メールもロクに送れないんだから、こんな申請できるわけないだろ。ネット会議でもポカやらかしてるらしいし。ちっとは支持者に慮れよ、だいたい与党のIT担当大臣だってUSBが何か知らなかったくせに」
ブツブツ言いながら申請をやり直すも
『入力漏れ、もう一度やり直してください』
「ああ、またか!ちょっと入力遅れただけで、何で駄目なんだ」
と嘆くネルオ。
チャンチャンチャーンチャン。携帯電話が不意に鳴った。
「もしもし」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「なんだ、サヨミか」
「なんだ、じゃないわよ。お店休んでるんだって、お兄ちゃんのことだからきっと貯金もなくて困ってるんじゃないかと思って」
妹の鋭い指摘にグサッとくるネルオ。
「う、うるさいな。なんとかなる。政府の給付金が」
「でも、申請なかなかできないんでしょ、レイワンの動画とか共産ニッポンのツィッターでもいってたわよ」
「うう、い、いつかはできる!」
「そんなこと言ってたら、お金いつもらえるかわからないわよ!お店の支払いもあるんでしょう、お金なくなったらどうするの!」
さらにキツイ突っ込みがきて、のけぞりそうになるネルオ。
「ううう、ウルサイ!なんとか、なんとか」
「お兄ちゃんも、いい加減に目を覚まして!ネトキョクウなんてやめて、レイワンと共産ニッポンの署名の協力しなよ!今、“給付の申請を簡単にし、給付額を大幅増額、対象拡大、国民救済が政府の仕事!”署名やってんだから。SNSでも、緊急事態解除後の旅行券とかどうでもいいから、今すぐ金配れって、よびかけてんの、お兄ちゃんもやってよ!」
「お、俺はこの店の店主として、そ、それだけは!」
「ネトキョクウ路線の専門店で売ってたのは知ってるけど、もうそれじゃやっていけないの!このさい新リベラル路線に転向しなさい!レイワンのヤマダノさんの本とか、コイケダさんのDVDとか扱ってリベラル専門にするの!ブログでも反ウヨ、新リベラルは未開発分野だって言われてんだから」
「し、しかし」
生き残るためにリベラルに転向か、いやそれだと元の客が怒り出す。第一、そんなウヨ路線はやめとけと猛反対されたのに、俺のやり方で成功すると言って実家をでたのだ、今更引っ込みがつかない。しかし店の再開のめどもつかない。それどころか店そのものもなくなり、借金が残るかもしれないのだ。固定費を払ってしまえば来週の食べるものも変えなくなるだろう。いっそ頭を下げて実家に戻り、リベラルに染まったサヨミら家族に嫌味を言われるか、それともリベラル専門店に活路を見出すか。いや、さすがにそれはプライドが…
「ああ、また、サヨミに、妹にバカにされるのか。それなら、いっそ死にたい…」
と、さらにバカなことを考えつつ逡巡するネルオであった。
どこぞの国では、補償万全みたいなことをトップがいってるようですが、申請すらままならないという現状。煩雑な申請もなしに、給与やら雇用の援助やらの金がすぐ振り込まれたという諸外国の皆様のSNSなどから早くも嘘がばれております。失敗を認めず、科学的根拠も不明な外出自粛延長だのクラスターつぶしをやるより、成功した近隣諸国のやり方に謙虚に学んでいただきたいものです