表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/23

第五話 僕は、決意を固めました。

 

「ちょ、ちょっと、どうしたの? カルマくん?」


 困惑する彼女の手を引っ張って走りながら、

 僕はこれから話すべきことについて考えていた。


 死ぬ間際の、あのとき。

 僕は強く後悔したんだ。

 彼女のことを全く気にかけてやれなかったこと。

 彼女と並びたつほどに、強くなれなかったこと。


 きっとユウキは、僕のことを『守るべき存在』として見ている。

 当然だ。僕が彼女よりも弱いのだから。


「……」


 だから、僕が伝えるべきことは決まっていた。



 ―――



 僕は自室に上がると、内側から鍵を閉めた。

 よし、これで邪魔者が入ることはないな。

 そう思い彼女の方を見ると、何故か顔が真っ赤だった。どうしたのだろう。


「ユウキ、実は話したいことがあって君をここに連れてきたんだ」


「え!? 話したいこと!?」


 顔から湯気が出るほど真っ赤にさせたユウキが「ど、どどどどうして? どうしてこの場所なの!?」と聞いてくる。

 ……何をそんなに慌てる必要があるのだろうか?

 幼い頃はよく隣同士だったからお互いの部屋に入って遊んでいたというのに。


「どうしてって……皆には聞かれたくない話、だからかな?」


「皆には聞かせられないような行為なの!?」


 彼女は恥ずかしがってついには顔を隠した。「きゃああああ!!」だなんて叫んでいる。

 ドキンドキンという心臓の音がうるさいくらいに聞こえてくる。


 ……うん?

 何か凄い思い違いが起きている気がするが……。


 まぁ、いい。

 僕はとりあえず、酒場でアクセルに言われたことについて話した。













 ―――



 僕がアクセルに追放されたことを教えると、

 ユウキは、(おそらくは)さっきとは全く違う理由で顔を真っ赤にさせていた。


 というかぶちギレていた。


「アクセルの奴そんなこと言ってたの!? 許せない!!」


「いや、いいんだ。僕がこのパーティのお荷物だってことは、ちゃんと自覚してるから」


「カルマくんまで何言ってるの!! カルマくんの索敵能力にどれだけ助けられてるか……、カルマくんもアクセルの奴も、全然分かってないよ!」


 ……うーん。何だかユウキは僕のことを過大評価している気がするけど。


 僕の持つ索敵用スキル、ユニークスキル『危機察知』は、その名の通り、あらゆる危機を察知する。

 とはいえ、索敵の範囲は限られている。

 4、5人くらいのパーティで動くときには使えるが、大人数を率いるとなればカバーしきれないだろう。


 ……というか。

 索敵用のスキルなのに元来備わったものだというのだから、生まれつきの自分の臆病さ加減に辟易する。


 だが、そんな自分とも、今日でオサラバだ。


「……ありがとう。でも、さ。僕は聞いてなかったけど、たぶん今の実力なら、もう王都から特別任務の依頼は来てるんだろ? さすがに今の僕じゃ、きっと皆の足を引っ張ると思う」


「そ、そんなこと……」


 僕の自虐を否定してくれる優しい彼女を手で制して、僕は続ける。


「だから、僕は強くなるよ。皆に、アクセルに……、君に認めてもらえるくらい強くなる。だから、そのときまで僕を見限らずに待っててくれないか? 僕は、きっと追いついて見せるから」


 一息で言い切って、僕よりほんの少しだけ背の高い彼女の瞳を見つめながら、


「僕は、君と冒険に行きたいんだ」


 死ぬ間際に言いたかったことを言った。


 幼い頃に話した、夢のような約束。

 もっと早くに告げるべきだったこと。

 弱い自分と別れるための、決定的な言葉。

 それを告げると、


「……うん。それなら、わかった」


 そう言って、彼女は複雑そうに笑った。



少しでも面白い! 続きが読みたい! と思われた方は、

ブクマ、評価をお願いします!


☆☆☆☆☆→★★★★★


作者はこういうキャラクターの心情とかが分かる細々としたシーンが好きなのです……。

こういうシーンが後々の盛り上がりに効いてくるんですよ!!


たぶん!!!!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 続きが気になる [一言] 主人公が自分のことをしっかりと分かってるのがいいね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ