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幼馴染に抱きしめられてあたためられる僕


「ちょっと暗い顔してる? 光」


「いや、そんなことはない」


 とか答えたものの、実は少しした。しかし、それは一瞬のはずだ。


「私が、どこ見てんのって言った時」


 その一瞬を、ピンセットで小さな部品をつまむようにきちんと香恋は当ててきた。


 だから僕は僕の変化にすぐ気づいてくれる幼馴染に正直に話すことにした。


 

 今日の部活の出来事。


 僕はレギュラー1番手の先輩にぼろ負けしそうになっていた。


 それを見ていたのは、僕のダブルスのペアである塚本つかもとだ。


 塚本と僕は、どちらも準レギュラー。しかし、塚本の方がうまい。


 僕と塚本は、息があってるのかどうかよくわからないけど、ダブルスだと、そこそこの強さを見せる。だから、僕と塚本がペアで今度の団体戦に出る可能性が高……かった。


 「かった」と過去形になっているのは、僕のプレーの調子が最近著しく悪いからだ。


 僕が足を引っ張って、僕と塚本のペアが試合に出れなくなることになりそうな状況ってわけだ。


 だから塚本はめちゃめちゃ僕にいらついていた。


 そして、僕が今日の部活で、先輩のショットをまさかの空振りしてしまった時。


「お前どこ見てんの」


 こう言われたのだ。


 それを香恋の台詞をきっかけに思い出し、そして香恋のおっぱいでそれを振り払った。


 そういうことだ。


 

「あはははっ。光そんなことで暗くなってたの?」


 僕の話を聞いた香恋は、お風呂場に軽やかに響く少し高めの声で笑う。


 そして、身体をこちら側に移動させてきた。


 湯船の幅は当然人二人ぶんもない。


 香恋は僕とわずかに接触していた。


「わ、わ、わ、」


 僕が「わ」しか言えないマシンになっていると、香恋は僕の身体を前に押しやって、自分は後ろに回った。


「ねえ、塚本くんが、なんでそう言ったかわかる?」


「……僕が下手すぎていらついてるからだろ」


「そういう捉え方しちゃだめ。塚本くんが光のことを心配してくれてるって思わないと」


「そうか……香恋みたいにポジティブになんないといけないのかもしれないな」


 僕は香恋がさっきまでいた湯船の反対側を見てそう言った。


「むんぎゅっ」


 とその時。身体中をくすぐったさが襲った。後ろから香恋が僕を抱きしめたからだ。


 タオルが当たっているところはくすぐったい。物理的に考えて当たり前。


 香恋の肌が直接当たっているところは超くすぐったい。男子高校生的に考えて当たり前。


 というわけで身体中がくすぐったいんだよ解説おしまい。


「な、な、な、」


 僕が「な」しか言えない生命体になっていると、

 

「ポジティブに、光らしくね、がんばるんだよ」


 耳元でささやく香恋。香恋の濡れた髪の毛が僕の肩にかかり、そこから水分子ガイドの雫ちゃんが続々登場。


 背中はものすごく柔らかくて、自分の背中が、床に対して今何度くらいになっているのかわからない。とにかく柔らかい。


 僕の腕に香恋の腕が重なっていて、香恋の二の腕もやっぱり柔らかい。あと謎の摩擦力。


 

 そして、なによりあったかい。


 お湯はぬるくなっているのに、今はあったかい。香恋はとてもあったかい。


 香恋と僕の体温を比べてどうだとかいう問題ではなく。


 僕は香恋という、優しい幼馴染にあたためられているということだ。


お読みいただきありがとうございます。


初期設定が不真面目すぎて今回の話の一部が真面目度が百倍くらいになった気がしますが、塚本がさらにいらついたりはしないので安心してください。この話のテーマは、シャワーとお風呂です。

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